関節痛について

関節痛について

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人の体は、200本を超える骨によって形づくられています。

骨と骨の連結部分を関節といい、骨と関節、それを動かす筋肉や腱、

さらに運動神経や知覚神経により、

私たちの体は自由に動くことができるようになっています。

したがって、それらのどれかひとつにでも障害が起こると、さまざまな痛みが生じます。

 

関節の構造はどうなっているか説明します。

骨と骨の「ジョイント」の役目をしているのが関節です。

そのすり合わせ部分にあるのが関節軟骨で、骨と骨がぶつからないようにしています。

関節をすっぽり包んでいるのが関節包(かんせつほう)で、

滑液(かつえき)という潤滑油を分泌する滑膜(かつまく)と、

繊維膜という2枚の膜でできています。

 

関節はその他に靭帯(じんたい)や筋肉、神経、血管などで構成されます。

関節の痛みはなぜ起こるのかというと、関節軟骨には神経が通っていないので、

関節自体は直接痛みませんが、関節の周囲にはたくさんの神経が通っていて、

少しの異常でも敏感に痛みとして感じるのです。

関節が痛む場合、次のケースがあります。

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■関節軟骨がすり減ったり消失したりし、骨どうしがこすれ合う。

■軟骨のすぐ下にある骨で異常が起こる。

■関節包(かんせつほう)が引っ張られる。

■滑膜(かつまく)が炎症を起こして腫れる。

■靭帯(じんたい)が引き伸ばされて切れる。

 

これらがいくつも重なって痛みを起こす場合も多くあります。

関節に異常が起こると、痛みをはじめ、はれや運動制限、強直(きょうちょく)

(関節が固まり動かなくなること)、変形などが生じます。

 

関節の痛みには、とくに刺激を加えないのに痛む自発痛、押すと痛む圧痛、

動かすと痛む運動痛があります。

痛みはさらに、1カ所の関節が痛む単発性と複数が痛む多発性、

片側の関節が痛む場合と左右対称に痛む場合に分けられ、

これらは病気を診断するうえで重要なポイントになります。

 

【関節痛を起こす病気】

関節痛といえば、膠原病(こうげんびょう)があげられます。

全身に分布する膠原線維が何らかの原因で変化して起こる病気です。

症状は病気により差がありますが、

発熱、体重減少、関節や皮膚・循環器・肺・腎臓の症状、貧血など、

かなり共通した症状を示します。

 

関節痛から考えられる膠原病の病気として挙げられるのは、以下の通りです。

○全身性エリテマトーデス

両頬の蝶形紅斑、中心部が脱色して萎縮した発疹、寒冷時の手指の蒼白~紫色

○多発性筋炎・皮膚筋炎

ゆっくりと進行する筋力の低下、筋肉痛、眼瞼部のはれた紫赤色の皮疹

○強皮症

手指から体の中心に向かって広がる皮膚の硬化、寒冷時の手指の蒼白~紫色

○結節性多発動脈炎・顕微鏡的多発血管炎

発熱、体重減少、紫斑、皮膚の潰瘍、貧血、胸痛、腹痛、血痰、高血圧

○アレルギー性肉芽腫性血管炎

発熱、全身倦怠感、体重減少、筋肉痛、紫斑、手や足のしびれ

○混合性結合組織病

全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症の症状をあわせもつ

○関節リウマチ

手指などの朝のこわばりが特徴、左右対称性の関節の痛み、はれ、発赤、熱感

○シェーグレン症候群

口や眼の乾き、耳下腺のはれ、味覚異常、疲れ眼、関節の朝のこわばり

そのほか、足の親指が突然激しく痛みだす痛風や骨の腫瘍など、

さまざまな病気が関節痛を起こします。

骨肉腫は代表的な骨の悪性腫瘍で、若い人に多く発生します。

腫瘍の増殖が旺盛で、肺を中心としたほかの部位へ転移しやすい性質をもっているため、

何よりも早期発見が望まれます。

 

○リウマチ熱

発熱、関節の痛みとはれ、皮膚に輪の形をした赤い発疹、心不全症状

○痛風

急に足の親指のつけ根などに激痛、発作は1~2週間ほどで自然に治まる

○偽痛風

関節(半数以上が膝関節)のはれ・痛み・熱感・発赤、発熱、体重減少

○骨肉腫

手足の骨の関節に近いところから発症、骨の関節の痛み・はれ、筋肉痛

○化膿性関節炎

発熱、寒気、ふるえ、膝・太もも・肩などの関節の痛みとはれ ―などです。

 

鍼灸・整骨院にお見えになる患者さんでは、

ひじ、膝、手首、足首、指、肩、あご、腰(股関節)などの関節に痛みを訴えられる方が多いようです。

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■変形性関節症

関節の軟骨がすり減ったために、痛みが生じる病気。

もっとも多いのが変形性膝(しつ)関節症。

老化によってクッションの役目をする軟骨がもろくなってすり減り、

さらに筋肉の衰えによって軟骨に負担が増し、痛みが強くなります。

 

■慢性関節リウマチ

全身の免疫異常により、滑膜(かつまく)に炎症が起こり、

そこから出る化学物質によって関節軟骨が破壊される。

まず手や指など比較的小さな関節に起こることが多く、

進行すると全身の関節が破壊されて機能障害が起こります。

 

■変形性脊椎(せきつい)症

背骨の老化によって起こる病気で、腰がもっとも多い。

まず、腰の重圧感を感じ、中腰を長く続けたり、

長時間あぐらをかいたりすると痛みが生じる。

進行すると腰を曲げられなくなる。

 

■肩関節周囲炎

一般的な呼び名は「五十肩」で、

肩の関節やまわりの組織の炎症。

肩を長年酷使したために起こる腱の老化などにより、

肩関節の機能のバランスが崩れ、痛みが生じる。

腕を上げたり、背中に手を回したりするなどの動作で痛みを感じる。

 

■足関節滑液包炎

正座や足首の前の部分をこする動作により足首の前に起こる痛み・はれ。

 

■ペルテス病

股関節・膝関節の痛み、歩く様子がおかしい、3歳~10代前半の男子に多い。

 

―などが知られています。
【関節痛が多いのは、お年寄りや肥満の人】

膝の関節痛の誘因となるものは次の通りです。

■老化

年をとって筋肉が衰えると膝に負担がかかるとともに、軟骨も老化するため。

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■肥満

歩くときは、体重の3~5倍の重さが膝にかかるため。

■姿勢の悪さ

姿勢が悪いと膝に部分的にストレスがかかり、ゆがみやずれが生じる。

その結果、股関節や背骨がゆがんで全身に悪影響を及ぼす。

■成長期の過度なスポーツ

骨が弱い成長期に膝に負担のかかる運動を続けると、関節に負担がかかり、軟骨が弱くなる。

 

 

【スポーツによる関節痛】

もっとも多いのが膝関節で、関節の強さを超えた動作をするために起こります。

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■半月板(はんげつばん)損傷

半月板は膝の2つの骨の間に挟まっている繊維質の軟骨。

ひざをねじったり、ジャンプして着地したときなど、大きな衝撃がかかって裂けることがある。

 

■膝の靭帯(じんたい)損傷

膝には前後の動きの安定性を保つ前十字靭帯と後十字靭帯、

横の動きの安定性を保つ内側側副(そくふく)靭帯と外側側副靭帯などがあり、

必要以上に伸ばされると断裂する。

このほか、スポーツによる関節痛は足首の捻挫や、ひじの脱臼、突き指などで現れます。

 

【関節痛の予防】

関節痛の原因は、日常の動作や生活法が大きな関わりを持っていますから、

次のことを心がけるのが大事です。

 

■肥満の解消

食事と運動(ウォーキングなど)を組み合わせてダイエットを。

■イスの生活

正座は膝に大きな負担をかける。できればトイレも洋式トイレに。

■膝を強化する体操

膝の関節の周囲にある筋肉を強化することで、膝の機能の衰えを予防する。

■風呂で正座

1日1回、1分間、正座をすることは膝の関節を動かす運動になる。

水圧で関節の負担が少なくなる入浴時に行う。

■適度な運動を習慣に

膝の痛みがある人は原因を確かめた上で行うこと。

軽い運動は血行をよくし、関節の曲げ伸ばしを楽にする。

■体を冷やさない

関節痛は冬に強まることから分かるように体を冷やさない。

■長時間、立ち続けない。

関節軟骨に大きな負担がかかる。重い荷物も持たない。

 

【膝の関節を強化する体操】

■セッティング法

膝の下に2つに折ったタオルを置く。

ゆっくりひざを伸ばす気持ちで太ももを10秒間収縮させる。

30回×3セット以上。足首に力を入れないこと。

■足上げ法

あお向けに寝て膝を伸ばしたまま、片足ずつ床から45度の角度に持ち上げて

10秒静止。20~100回。膝が伸びきらない人には効果が望めない。

■イスにすわって行う運動

片方の足をピンと伸ばし、太ももを収縮させながら10秒間静止させる。20~100回。

*膝のおさらに問題のある人は行わないこと。

 

【関節痛に効く薬】

関節の痛みや腫れをやわらげる市販薬として消炎鎮痛剤があります。

消炎鎮痛剤には次のような種類があります。

■内服薬

痛みや炎症に有効。

■湿布薬

冷やしたり温めたりすることが目的でなく、皮膚を経由して薬を患部に送り込む。

■塗り薬

クリーム剤、軟膏(なんこう)、液剤がある。成分は湿布薬とほぼ同じ。

膝やひじなど、湿布薬が貼りにくい部位には塗り薬を使用し、

その上をサポーターで保護するとよいといわれています。