カテゴリー: 自律神経(パニック障害・うつ傾向、めまい、耳鳴りなど)のこと

発達障害がある人・発達に課題がある人への鍼灸治療に関して

鍼灸治療が発達障害そのものを緩和するというエビデンスはありませんがストレスを和らげ、緊張を緩和する可能性があるため症状改善のお役に立てます。以下に情報をまとめておきますが発達障害をお持ち、またはその疑いがあり体調不良でお困りの方は一度お気軽に相談ください。専門的に診断してくれる医療機関を紹介したりしながら併用して鍼灸施術を受けることもできます。*似たような事例では、子供の起立性調整障害疑いを鍼灸施術を行いながら専門病院におつなぎした事例があります。

発達障害の定義とは?

発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。(厚生労働省

脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態をいいます。 最新のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)では、神経発達障害/神経発達症とも表記されます。(eヘルスネット・厚生労働省

DSM-5に基づいて診断基準や分類がなされます。

発達障害と「発達に課題がある」という状態の違いをとは?

「発達障害でなく発達に課題がある」という表現には、いくつかのニュアンスが含まれています。以下、それぞれの状態に関連する特徴や違いを説明します。

(1)発達障害

・明確な症状と診断:発達障害は、特定の症状や特徴が明確に現れ、これに基づいて診断が行われます。
・DSM-5(精神障害の診断および統計マニュアル)などの基準に適合:発達障害の診断は、一般的に国際的に受け入れられた診断基準に基づいています。
・症状が生涯にわたり持続:発達障害は、生涯にわたって続く可能性が高い慢性の状態であることが多いです。

(2)発達に課題がある

・特定の状況や期間に関連:発達に課題がある場合、それが特定の状況や期間に関連している可能性があります。例えば、一時的な学習の課題やストレスによる影響が考えられます。
・明確な症状がない場合も:発達に課題がある場合、明確な症状がないか、症状が一時的であることがあります。
・他の要因による可能性:発達に課題がある場合、環境の変化、一時的なストレス、他の健康状態などが原因となっている可能性があります。

簡潔に言えば、発達障害は比較的に持続的で明確な症状を伴う一般的な診断であるのに対して、発達に課題がある場合は一時的で特定の状況や期間に関連している可能性があります。ただし、具体的な状態や症状は個人によって異なり、専門家の評価が必要です。

発達障害の分類は?

eヘルスネット・厚生労働省の解説ページを参考にDSM-5の分類を紹介します。

発達障害は、いくつかの主要なカテゴリーに分類されます。以下に、主な発達障害の分類を示します。なお、これらのカテゴリーはあくまで広い範囲であり、個々の人が抱える症状や特徴は非常に多岐にわたります。

・注意欠陥多動性障害 (ADHD):短縮してADHDとも呼ばれます。注意の欠如、過動、衝動性が特徴で、学業や社会的な機能に影響を与えることがあります。

・自閉スペクトラム障害 (ASD):自閉症スペクトラム障害は、コミュニケーションの障害や社会的な相互作用の難しさ、独特な興味や行動の繰り返しといった特徴を持つ総称です。高機能自閉症から、深刻な発達障害まで幅広い症状があります。

・学習障害:読み書きや計算などの学習に関連する領域で困難を経験する総称です。ディスレクシア(読字障害)、ディスカルキュリア(計算障害)などが含まれます。

・知的障害:一般的な知的機能の発達が遅れるか、制限される状態を指します。IQが一定の基準以下であることが一般的な特徴です。

・発話・言語障害:発音、語彙、文法などの言語に関する困難が含まれます。言語発達障害や発声障害などが該当します。

これらの障害は、個々の人の特性や症状によって様々な程度で現れ、また同時に複数の発達障害を抱えることもあります。診断やサポートのためには、適切な専門家や医療プロフェッショナルに相談することが重要です。

大人になるまで発達障害が放置されてしまうケースがあるのはなぜ?

発達障害は子供だけというイメージがあるかもしれませんが大人もあり得ますし、また大人になるまで放置されるケースがあります。その理由は複雑であり、さまざまな要因が関与しています。以下はその主な理由です。

・軽度であるため気付かれにくい:発達障害が軽度である場合、症状が他の一般的な行動の範囲内に収まることがあります。そのため、問題があると気付かれにくいことがあります。

・社会的な期待の変化:子供時代から大人にかけて、発達障害の特徴は変化することがあります。また、社会の期待も変わり、大人になると共に異なる対応が求められることがあるため、発達障害が見過ごされることがあります。

・マスキングやコンピェンセーション: 発達障害を持つ人は、自身の困難に対処するために異なる戦略を学びます。これにより、一時的には症状が緩和されたり、他者に隠されることがあります。

・診断の難しさ: 発達障害の診断は複雑であり、専門的な知識と時間を要します。一般的な診断は子供時代に行われやすいため、大人になると診断が難しくなることがあります。

・周囲の理解の不足:発達障害についての理解が不足している場合、症状が異常であることに気付かないか、適切なサポートが得られないことがあります。

・自覚の不足:発達障害を持つ人自身が、自分の特徴が他と異なることに気付かない場合があります。また、気付いてもそれを受け入れるのが難しい場合もあります。

これらの要因が複合的に絡み合って、発達障害が大人になるまで放置されることがあります。早期の診断と適切なサポートが重要であり、理解ある環境でのサポートが提供されることで、大人になってからの生活の質が向上することが期待されます。

発達障害の人がストレスに弱いのはなぜですか?またできるセルフケアや対策はありますか?

発達障害を持つ人がストレスに弱いと感じる理由は、いくつかの特性や課題が絡み合っている可能性があります。一般的な特徴として以下の点が挙げられます。

・感覚過敏:発達障害を持つ人々は、外部の刺激(音、光、触覚など)に対して過敏であることがあります。過度な刺激がストレスを引き起こす可能性が高まります。

・社会的な適応困難:コミュニケーションや社会的な相互作用において適応が難しいことがあり、これが社会的なストレスや孤立感を引き起こすことがあります。

・予測困難性:変化への適応が難しいことがあり、予測可能でない出来事がストレスとなることがあります。

・コミュニケーションの困難:意思疎通が難しい場合、自分の感情やニーズを適切に伝えることが難しく、これがストレスの原因となります。

これらの理由から、発達障害を持つ人がストレスに敏感であると感じることがあります。しかし、適切なセルフケアや対策を取ることで、ストレスへの対処が改善される可能性があります。以下はその一例です。

・ストレス管理技術の学習: リラクセーション法、深呼吸、瞑想などのストレス管理技術を学ぶことで、ストレスに対処する能力が向上します。

・コミュニケーションスキルの向上:コミュニケーションスキルのトレーニングや、感情やニーズを適切に伝える方法を学ぶことが、ストレスの軽減に寄与します。

・予測可能な環境の構築:予測可能な環境を作り出すことで、変化に対処しやすくなり、ストレスを軽減できます。

・適切なサポートの確保:必要なサポートや理解ある環境を確保することが重要です。家族や友人、教育機関、職場などからのサポートが役立ちます。

個々のケースによって適したアプローチが異なりますので、専門家と相談し、個別のサポートプランを立てることが重要です。

鍼灸治療は発達障害の症状を緩和しますか?

以下は、鍼灸治療がストレスに対してどのように影響を与えるかに関する一般的なポイントです。

・リラックス効果:鍼灸治療は、鍼や灸を用いて特定の経絡やツボに刺激を与えることで、筋肉の緊張を緩和し、リラックス効果をもたらすことがあります。これにより、身体的なストレスや緊張が和らぐ可能性があります。

・自律神経の調整:鍼灸治療は、自律神経系を調整する助けとなることが報告されています。具体的には、交感神経(ストレス応答を活発化する)と副交感神経(リラックスを促進する)のバランスを整える働きが期待されます。

・ホルモンの調整:鍼灸治療がストレスホルモンや神経伝達物質のバランスを調整する可能性があります。これにより、ストレス応答が緩和されることが期待されます。

・睡眠の改善:ストレスが原因で睡眠障害が生じることがありますが、鍼灸治療が睡眠の質を向上させ、ストレスの軽減に寄与するとされることがあります。

男女の更年期障害と鍼灸治療ついて(男性:LOH症候群)

更年期障害(Menopause, climacteric)

性腺ホルモンの低下に関連した症状の総称で、主に女性の場合は卵巣機能の低下によるエストロゲン欠乏が原因です。男性の場合も性ホルモンの減少が関与することがあり、これはLOH症候群として知られていますが、一般的には女性の更年期障害がより注目されています。

■ 症状

器質的な原因に関係ない多様な症状が生活に支障をきたす程度に発症するものと定義され、日本では閉経前後の10年間を指すことが一般的です。この症状の原因は、加齢に伴う卵巣の内分泌機能低下によるエストロゲン濃度低下と、更年期における生活環境の変化との相互作用が考えられています。

「血管運動神経症状」「精神神経症状」および「その他の症状」に分類されます。例として、ホットフラッシュ、不安、抑うつ、腰痛、食欲不振、皮膚の変化、泌尿器症状などが挙げられます。これらの症状は個人によって異なり、自然に緩和することもあります。

■ 診断

Kupperman更年期指数や血液検査(FSH濃度、エストラジオール濃度)が使用されます。閉経は通常、無月経が12か月以上続いた場合に診断されます。

■ 治療

治療のアプローチには、ホルモン補充療法(HRT)が含まれます。HRTはエストロゲンの不足を補うために使用され、特に血管運動神経症状に有効です。しかし、精神症状には効果が限定的なこともあります。その他の治療法には、向精神薬、漢方薬、プラセンタ療法、心理療法が含まれます。治療方法は症状や患者の個別のニーズに応じて選択されます。

■ 注意点

うつ病や甲状腺機能障害、精神疾患などの他の疾患との鑑別診断が必要であり、これらの病状は更年期障害と類似の症状を引き起こすことがあります。したがって、適切な診断と治療のためには症状の詳細な評価が不可欠です。

LOH症候群(Late-onset hypogonadism)

男性ホルモンであるテストステロンの部分的欠乏によって引き起こされる症候群です。この症候群は加齢男性性腺機能低下症候群(PADAM)とも呼ばれ、一般的には男性の更年期障害とも称されます。以下はLOH症候群に関する情報の要点です。

■症状

LOH症候群の発症時期は一定しないが、概ね40代後半から50代前半以降にテストステロンの低下により発症します。主な症状には性欲の低下、勃起障害、精神的な変化、疲労感、抑うつ、体力の低下、内臓脂肪の増加、骨密度の低下などが含まれます。 LOH症候群は生殖能力の低下だけでなく、精神的な症状や全身的な変化も伴います。また、2型糖尿病、メタボリック症候群、心血管疾患、内臓脂肪の増加、骨粗鬆症などの健康リスクが増加することが知られています。

■ 診断

LOH症候群の診断は、性腺機能の評価から始まります。テストステロンの血中濃度やさまざまな症状を考慮して行われます。診断には「Aging Males’ Symptoms(AMS)スコア」が使用され、一定のスコアで症状の程度を評価します。

■ 治療

LOH症候群の治療法として、アンドロゲン補充療法(ART)が行われます。これはテストステロンの補充療法で、注射、軟膏、あるいはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などが使用されます。治療には患者の年齢や健康状態に応じて適切な選択肢が提供されます。

■ 注意点

アンドロゲン補充療法は適切な患者にのみ推奨されており、前立腺癌患者や特定の健康問題を抱える患者には推奨されません。治療により勃起不全が改善されることがあり、精神的な症状にも対処されることがあります。LOH症候群は、男性のテストステロンの低下による症状と健康リスクが関連しており、適切な治療法によって改善できる可能性があります。しかし、治療の選択と管理は医師によって行われるべきであり、患者は専門家の指導を受けるべきです。

まとめ・更年期障害を疑ったら・・・?鍼灸は有効。

男女ともに更年期障害を疑ったらまずは専門の医師の診断を仰ぐとよいでしょう。血液検査などで更年期障害かどうかが分かります。更年期障害に似ていても違う病気はたくさんあります。原因を確認することが肝要です。そのうえで「今は特に投薬の必要性がない。」と医師にいわれたが症状が改善しない方、更年期障害の症状緩和・補助療法として鍼灸や漢方をお勧めします。どのように治療を勧めればよいのか?についてもお気軽にご相談ください。

「ストレートネックが原因ですか?」というご質問に対して。と、その対策。

ここ最近、弊所のクライアントさんから「整形外科でストレートネックだと指摘された。首や肩が痛い、自律神経の不調などはそれが原因ですか?」と質問されることが多いです。結論から言いますと答えは「よくわからない。ただストレートネックは不調の原因になりうる。」とお答えすることが多いです。ストレートネックについてまとめていきます。

ストレートネックとは何か?

まずは定義を探すことが重要です。日本整形外科学会のページを検索してもストレートネックという言葉は見つかりませんでした。アメリカ医師会の権威ある雑誌JAMA(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション)の論文を参照します。(参考1)そこでは以下のように表現されていました。

生理的な頸部の前彎曲線の喪失による、異常な脊椎アライメントに関連する一般的な変性疾患。

→病名というよりは概念・状態を表す言葉だと思うといいかもしれません。湾曲がまっすぐだとストレートネックだと呼ばれ、逆に湾曲がきつすぎるとスワンネックと呼ばれます。どちらもあまりよい状態ではないとされています。

なぜ整形外科医の先生は「ストレートネック」という言葉をよく使うのか?

整形外科学会のHPにはストレートネックという言葉は定義されていないのですが、整形外科医の先生はよくストレートネックだという説明をする印象があります。(統計ではなくあくまでも私の印象論です。)なぜそう説明するか?以下考察してみたいと思います。

・医師は「骨盤矯正」や「免疫力」という言葉は医学用語でないため使うのを嫌がる。しかしストレートネックは医学的な根拠がある。(そのためJAMAなどにも取り上げられる。)

・レントゲン所見から説明しやすい。「頸椎がまっすぐだから痛みが出ている。」→ 説明としてわかりやすいため患者の理解や納得も得られやすい。それだけが原因でないことは医師も分かっているがわかりやすく説明している。

上記のような理由からではないでしょうか?実際にJAMAの論文(参考1)でも2006年から2018年に男女ともにストレートネックとスワンネックの割合が増加している。ストレートネックに関しては12年で10%程度割合が増加している。その原因はパソコンやスマホのやり過ぎなど生活習慣の変化が疑われる。などが指摘されています。つまり、ストレートネックだから、という理由は説明しやすいのです。しかし一つの疑問が浮かびます。

ストレートネックだから痛み・不調が出るとは限らない

ストレートネックやスワンネックだったとしても不調が出るとは限りません。ヘルニアや脊柱管狭窄症も同じです。筋肉が柔らかい状態で可動域が正常であるならば不調は出ないケースも多く、それらが原因で症状が出るかどうかは、よくわからないのです。実際、厚生労働省も85%の腰痛は原因不明だと明言しています。(参考2)私自身も腰部MRIを撮影したところヘルニアの可能性を医師から指摘されたことがあります。それらがあれば将来的な腰痛や不調につながる可能性がありますが、すぐに痛みなどの症状が出ることはないです。普通に生活できています。ヘルニアがあっても腰痛が出ない人はいます。同じようにストレートネックやスワンネックでも首の不調が出ない人はたくさんいます。しかし皆さんお医者さんにストレートネックだと指摘されるとずいぶんと気にしてしまう方もいるようです。症状が出ていなければそこまで心配しなくても大丈夫なのですが。

ストレートネックを改善するために何をすべきか?

まずは必ず医師や専門家に相談し、個別のアドバイスを受けるようにしましょう。そのうえで以下の方法が役立つかもしれません。

1:適切な姿勢の維持: 頭が前に出たり、肩が丸まったりしないように、正しい姿勢を保つことが重要です。デスクワークをする際には、モニターの高さや椅子の高さを調整し、背中をしっかりと支えるクッションを使うことが役立ちます。

2:ストレッチとエクササイズ  首と肩の筋肉を強化し、柔軟性を改善するために、医師や理学療法士が勧めるストレッチとエクササイズを行いましょう。特に、首、肩、背中の筋肉を鍛えることが大切です。首そのものをどうにかするよりも首に負担をかけない方法例えば、ぶら下がり健康法や水泳などをお勧めします。

3:リラクセーション法: ストレスがストレートネックの原因になることがあるため、リラクセーション法を実践することが重要です。瞑想、深呼吸、ヨガ、プログレッシブ・マッスル・リラクセーション、鍼治療などが役立つでしょう。

4:体重管理 過体重は首の負担を増加させる要因となります。健康的な体重を維持し、適切な運動を行うことがストレートネックの予防と治療に役立ちます。

5:ポストラルトレーニング: 専門家が指導するポストラルトレーニングプログラムを受けることで、正しい姿勢を維持しやすくなります。(参考3)

6:痛み管理 ストレートネックが痛みを伴う場合、医師の指導の下で適切な痛み管理方法を採用することが大切です。場合によっては薬物療法もありうるでしょう。痛みが軽減されると、運動やストレッチが行いやすくなります。

7:医師の診断とアドバイス ストレートネックの症状が慢性的で重度の場合、医師の診察と治療を受けることが不可欠です。医師は適切な治療法や必要な検査を指示し、症状を管理します。

 

田無北口鍼灸院でも緊張の改善や痛みの管理、運動指導などを通してストレートネックの改善をお手伝いできます。仕事や生活習慣などを細かくお聞きし適切なアドバイスも行います。お困りの方は一度ご相談ください。

 

参考1:Temporal Trends in Cervical Spine Curvature of South Korean Adults Assessed by Deep Learning System Segmentation, 2006-2018

参考2:厚生労働省 腰痛対策

What Can the History and Physical Examination Tell Us About Low Back Pain?

参考3:ポストラルトレーニングは、姿勢を改善するために行われるトレーニングや運動のことを指します。

前庭神経炎・メニエール病・突発性難聴他。めまいと鍼灸治療について。

例えば、めまい症状を訴える病名の一つに「前庭神経炎」(ぜんていしんけいえん)というものがあります。症状としてはめまいが突発的に発症し強い回転性のめまい感が数時間から数日続きます。耳鳴りなどの耳の症状が伴わないことが特徴になっています。原因としては前庭神経の炎症ですがなぜ炎症が起こるのかはあまりよくわかっておらずウィルス感染なども考えられています。

・・・

めまい症状で鍼灸院へ相談にいらっしゃる方は数多くいらっしゃいます。上記のように「耳鳴りなどを伴わないめまい」をお持ちの方が来所された場合まずは耳鼻咽頭科で検査を受けることをオススメしています。診断基準があるのでまずは医師による診察を受けるのが良いでしょう。何が原因でめまいが起こっているのか?早期に把握することは非常に大切です。ストレス性・筋緊張が原因なのか?前庭神経の問題なのか?緊急を要するのか?知っておくことが良いでしょう。

鍼灸の施術により緊張の緩和や血流促進、炎症反応の緩和など期待できますが「前庭神経炎」に対するはっきりとしたエビデンス(論文や根拠)は見当たりません。しかし血流を促進したり周辺筋肉緊張を緩和させることが症状改善の役に立つことは疑いようがありません。ですので鍼灸治療は自信を持ってお勧めできることが多いです。

「どのタイミングで何かを受診すればいいか?」わからない方などは遠慮なくご相談ください。弊所では適切に病院への受診も勧めます。

以下、めまい症状を伴う疾患についてまとめていきます。ご参考までに。

(1)回転性の目まい グルグル・ぐるぐる

自分がぐるぐるしたり周りがぐるぐるするなど感じられます。特徴としては以下のことがあげられます。耳の中の平衡器官に急激な変化が生じた時に起こりやすいといわれ耳鳴りを伴うことが多いです。以下のような疾患があります。

・ 良性発作性頭位めまい症

耳の異常によるめまいの中でもっとも多いといわれます。内耳の前庭にある耳石がはがれ、三半規管に入り込んでしまう病気です。 朝起きるときなど頭を動かしたりすると回転性めまいが起こりますがすぐに楽になって症状が消えます。めまいの持続時間は数秒から数十秒くらい。

・ メニエール病(内リンパ水腫)

内耳を満たしている内リンパ液が増え過ぎ内耳がむくみ、圧迫することでめまいが起こります。この状態を内リンパ水腫と呼び、めまいのほか、難聴・耳鳴り・耳のつまり感など伴うことがあります。発作時のめまいは激しく、嘔吐することもあります。めまいが治まるまで、数時間から1日、ときにはそれ以上かかります。めまいが起こると難聴が悪化し治まると正常に戻るか程度が軽くなります。

・ 外リンパろう

外リンパ瘻(ろう)とは、耳の内耳(ないじ)という部分を満たしているリンパ液が内耳から中耳に漏れることによって、さまざまな症状を起こす病気です。けがや内外から内耳に圧がかかることによって起こることが多いと言われています。めまいのほか難聴や平衡障害など、さまざまな外リンパ瘻の症状が現れます。聞こえが障害されるので、周りの音が聞こえにくくなります。

「水が流れているような音がする」

「水の中にいるような音がする」

という表現をされる方も多いです。

・ 前庭神経炎

突然、回転性の激しいめまいが起こります。2~3日続いた後、徐々に症状は軽くなりますが、立ちあがった時や歩行時のふらつきは、長期間続くことが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。悪心(おしん・気持ち悪い感じのこと)や嘔吐を伴うことがありますが、耳の聞こえには全く異常がないことが特徴です。風邪をひいた後に発症することが多いため、ウイルス血液の循環の障害が原因ではないかと考えられています。

・ 椎骨脳底動脈循環不全症

椎骨脳底動脈の循環が一時的に悪くなり、脳幹部の虚血状態を来たすとめまいや嘔気、嘔吐などの症状が現れます。ひどい場合には意識障害もきたします。この脳幹部の一過性脳虚血状態によりめまい発作を繰り返す状態を椎骨脳底動脈循環不全症(VBI:Vertebrobasilar Insufficiency)と呼びます。回転性めまいが多いですが、浮動性めまい、クラッとするめまいが起こることもあります。視界がぼやける、気が遠くなる、吐いてしまう、手がしびれるなどの症状を伴うことが多いです。難聴や耳鳴りはほとんど見られません。

・ 脳卒中(脳梗塞・脳出血)

緊急性がある疾患です。めまいのほか以下のような症状があります。不安な場合は自己判断せずにすぐに病院等で診察を受け専門家に相談しましょう。ろれつが回らなくなる、言葉が出てこなくなる片側の顔や腕足が突然しびれる、物が二重に見える、突然の激しい頭痛・・・など

・ 突発性難聴

ある日突然、片側の耳の聞こえが悪くなる疾患が突発性難聴です。40代~60代に多く、発症率は約3千人に1人と推定されています。何月何日に発症したとはっきりわかるのが特徴で、難聴が徐々に悪化したり、日によって聞こえの程度が変ったりすることはありません。また約3割にめまいが起こ りますが、一時的なもので、繰り返すこともありません。

 

(2)動揺性(浮動性)めまい フワフワ・グラグラ

自分の体がフラフラ・グラグラ・ゆらゆらするように感じるめまいのことをいいます。原因不明のことや脳の病気で起こることも多いです。

以下のような疾患が代表例です。

・ ひどい中耳炎

中耳炎がひどくなるとフワフワした目眩が出ることがあります。

・ 脳の病気

脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など

 

(3)くらっとするめまい

以下のような場合にくらっとするめまいが出ます。

・ 高血圧

・ 低血圧(起立性低血圧)

いわゆる立ちくらみのような状態です。

・ 不整脈

・ 低血糖症

・ 心因性・その他ストレスなど

(4)まとめ 

めまい症状はさまざまで必ずしも上記のような症状に当てはまるとは限らず病院でもなかなか診断名がつかないこともあります。また上記でもあげましたが脳疾患など重大な疾患が隠れている場合もあるので注意が必要です。

弊所では

・ いつからどんな症状が出てるか?

だけでなく

・ 病院に行ったか?

・ CT/MRIなど検査は受けたか?

・ どんな診断が出たのか?

・ どんな薬が出ているのか?

なども詳しくお聞きしながら施術を行います。

(5)めまいと鍼灸の施術

東洋医学的な考え方で言いますと目がかすんで目の前が暗くなるのを眩(げん)といいます。ぐるぐるものが回って見えたり揺れ動いて見えるものを暈(うん)といいます。この二つが良く同時に起こることから眩暈(めまい)と呼ばれます。まためまいは「目眩」とも書きますが元々は目がかすんで頭がくらくらすることを目眩(もくげん)といいました。眩暈の原因については中国の医学書古典「内経」にもかかれていて

「みな肝に属す」・「上気不足」・「髄海不足」

などと説明されています。鍼灸にはめまいを直接止める作用はありませんが全身の気血バランスを整える施術を行えば症状が安定してきたり、症状が出ずらくなることも多いです。まずはお話をじっくり聞かせてもらいますのでご相談ください。

めまい(メニエール病等)に対する鍼灸治療と病院(耳鼻科)の検査に関して。

めまいや耳なりの症状で鍼灸院を訪れる方は多いです。それらほとんどの方はすでに病院にいっている場合が多いです。

「病院を受診したがいまいちスッキリしない」

「異常なし、とのことだが症状が残ってる」

「自律神経やストレスの問題といわれた」

「病院での治療を受けているがプラスアルファの治療として鍼灸をしたい」

そんな理由で鍼灸院を選択することが多いようです。まためまいや耳鳴りがあるが

「そもそもどこを受診していいかわからない」

という方も数多くいらっしゃいます。そのような場合は弊所から病院への受診を促すこともあります。めまいや耳なりは緊急性を伴う場合も存在するためです。

鍼灸や東洋医学は大変素晴らしいもので様々な症状に対応できますが決して通常医療(西洋医学・病院での治療)を否定するものではありません。お互いのよいところを補いあいながら(補完関係といいます)最速でよい結果を目指すことをオススメしています。

本日はめまいが出た時に耳鼻科ではどんな検査をするのか?書いていきたいと思います。

耳鼻科での検査・一例

めまい症状出もたくさんの病気が存在します。それぞれ診断基準が存在しますので診断に至るまでには医師が患者さんから細かくお話を聞きとったり(問診)また様々な医学的検査をしたりします。ここではめまい症状で耳鼻科にて行われる医学的な検査の例をあげます。

*病院(耳鼻科)ではどのような検査をしたか?弊所でも細かく聞いていきます。まずはご相談ください。

身体のバランスの検査(平衡感覚)身体がふらふらしている時は歩いている時もバランスが崩れたりするのでその動きを見ていきます。

耳内の検査

耳の中に腫れや炎症など異常がないか調べていきます。

聴力検査

めまいの原因は耳の問題であることも多いために耳のきこえを検査します。高音域の聞こえが悪いか?低音域の聞こえが悪いか?などの判別をしていきます。

眼振検査

目が振り子のようにうごくことを眼振といいますが身体の平衡が乱れる時に眼振の乱れもひどくなります。特殊なメガネをかけて検査していきます。(フレンツェル眼鏡)眼振を電気的にとらえて記録する電気眼振図検査というやり方もあります。

血液検査・血圧検査

糖尿病、強い貧血、梅毒などでめまいが生じることもあるために血液や血圧の状態を検査します。

レントゲン検査

首や耳の骨の状態を確認するためレントゲン検査を行うことがあります。血管や神経などさらに細かい検査が必要な場合はCT、MRIなどの検査をすることもあります。ほかには重心動揺検査、温度刺激検査などもあります。上記にあげたものは一例ですが耳鼻科で診断に至るまでにはこのような検査を行うことが多いのです。

めまいの際病院(耳鼻科)で処方される薬・例

あくまでも一例です。お薬は医師の指示通り服用しましょう。

アデホスコーワ:メニエール病、内耳障害などの際に処方される。

メリスロン:内耳の血流を促進、回転性めまいを和らげる。

プレドニン:ステロイド。抗炎症作用。

メチコバール:末梢神経の修復。

田無北口鍼灸院は難病・持病をお持ちの方も多数来所されています。→痛みや症状を改善します。

田無北口鍼灸院には様々な持病を持った方も来所されます。持病そのものを良くしたい、というパターンもありますし持病そのものもそうだがほかの症状を良くしてほしい(痛みなどを減らし生活の質を上げてほしい)というご要望もあります。:例えば自己免疫疾患の方が腰痛を良くしてほしいというご要望など。

いずれにせよ持病をお持ちの方でも事前によくヒアリングするのでご安心ください。現在どんなことで悩んでいるのか?お話をよく伺い解決策を提案します。

持病をお持ちの方の場合はとくにいきなり揉まれたりするとかえって悪化することもあります。リラクゼーションサロンなどでは病気に対する知識などもないのでそのような対応をされてしまうこともあるでしょう。飲んでいる薬の情報やどのような治療を受けているのかという情報まで聞けないことがほとんどではないでしょうか?弊所では最初に細かくお話をし持病、飲んでいる薬の情報なども詳しく伺いますのでご安心ください。また鍼灸には様々な効果があります。しかしながらツボをつけば何でも治してしまうという意味ではありません。

なぜ効くのか?も含めじっくり説明させていただきます。いつまでに?どうしたいか?も事前によくヒアリングをしますのでじっくりお話ください。

 

<田無北口鍼灸院に来ている方の持病例>

・ 重症筋無力症

・ 線維筋痛症

・ うつ病

・ フィッシャー症候群

・ IgG4関連疾患

・ 抗リン脂質抗体症候群

・ がん

・ パーキンソン病

・ メニエール病

・ クローン病

ほか

めまい・頭痛症状が改善 腰痛も改善 コルセットなしで歩けるようになった 首の痛みが楽になった という感想を頂戴いたしました。

田無北口鍼灸院では症状が改善した方に感想を頂戴する取り組みを行っています。黒板メッセージボードにコメントをいただいています。効果を保証するものではありませんが同じようなことでお悩みの方の参考になれば幸いです。

(1)頭痛・めまい・腰痛改善

山田陽子さま 65歳 女性(仮名)

「肩こりは20歳からひどく頭痛やめまいもしていました。今は治りました。腰はコルセットなしでは歩くことができませんでしたが今ではコルセットなしでしびれもなく歩けます。歩ける幸せを感じています。」

・・・ありがとうございます。鍼や灸で首の緊張が緩和されますとめまい等の自律神経症状や頭痛も改善されることがあります。(もちろん全員ではありませんが)

またコルセットなしでは不安であるけなかったということでしたが腰痛も改善したようでよかったです。コルセットや骨盤ベルトはあくまでも補助的なものですので市内でよいならばその方が良いですしコルセットに関してはしすぎるとかえって筋力低下が起こって腰痛が悪化することもあります。

心配や痛みで不安が大きかった、という感じでしょうか???改善していくとどんどん良い効果が生活にも表れてきます。これからも体を大切にしてください。

 

(2)首の痛みが楽になりました

加藤浩二さま 41歳 男性(仮名)

「痛すぎた首の痛みが取れました。」

・・・夜勤の仕事もありハードで身体に疲れがためやすいため定期的に調整に来てくださいます。疲れがたまっているとやはり寝違え・ぎっくり腰をはじめ痛みを発症しやすかったりします。

今回はすでに首を痛めてしまった状態でしたが鍼の施術で大分良くなったようです。メンテナンスも大切ですがまずはお大事になさってくださいませ。

起立性調整障害(OD)・フクロウ型体質(フクロウ型症候群)と鍼灸治療について

起立性調整障害(OD)とは?

起立性調整障害とはをODと略されますが英語での正式名称はOrthostatic Dysregulationと言います。好発年齢は小学生から中学生で、男児より女児の発症が多い傾向にあります。わかりやすく一言でいえば「思春期の自律神経の不調で朝起きられなくなってしまう病気」という感じでしょうか。

一般社団法人 日本小児心身医学会のホームページには以下のような概要が書かれています。

・ たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴い、思春期に好発する自律神経機能不全の一つです。

・ 過去には思春期の一時的な生理的変化であり身体的、社会的に予後は良いとされていましたが、近年の研究によって重症ODでは自律神経による循環調節(とくに上半身、脳への血流低下)が障害され日常生活が著しく損なわれ、長期に及ぶ不登校状態やひきこもりを起こし、学校生活やその後の社会復帰に大きな支障となることが明らかになりました。

・ 発症の早期から重症度に応じた適切な治療と家庭生活や学校生活における環境調整を行い、適正な対応を行うことが不可欠です。(以上、引用)

フクロウ型体質とは?

漢方医学では夜に活発になり朝起きられない体質のことを「フクロウ型体質」と呼びます。起立性調整障害に似ている部分が多いのです。このような体質の方には漢方薬の苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) が有効な場合がある、と久留米大学医療センター・先進漢方治療センター教授の惠紙英昭先生が第67回日本東洋医学会学術集会で発表しました。あくまでケースバイケースですが補完的な治療として漢方が有効かもしれません。

起立性調整障害(OD)の注意点は?鍼灸治療は有効?

(1)まずは自己判断でなく病気かどうかの専門家判断を。

不登校の症状と似ているため精神的な問題なのか?身体の不調なのか?判断がつきづらいです。病気かどうか?判断するには診断基準があります。血液検査や心電図検査などを行いほかの病気の可能性がないか?確認されたうえで医師が診断を行います。岡山県教育委員会は対応マニュアルをまとめていますがまずは専門家や医師に相談するとよいと思います。参考までにチェックリストを紹介します。11項目のうち3つ以上が当てはまれば新起立試験というテストが実施されます。

・ 立ち眩み、あるいはめまいを起こしやすい。

・ 立ってると気持ち悪くなる、ひどくなると倒れる。

・ 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる。

・ 少し動くと動機あるいは息切れがする。

・ 朝なかなか起きられず午前中に調子が悪い。

・ 顔色が青白い。

・ 食欲不振。

・ 臍疝痛を時々訴える。(臍のまわりが時々痛い)

・ 倦怠あるいは疲れやすい。

・ 頭痛がある。

・ 乗り物に酔いやすい。

(2)注意点=代替医療に頼りすぎないこと。が、鍼灸治療は有効ではないか?

起立性調整障害と診断されると医師による生活指導や投薬治療が行われます。しかし特効薬がある訳ではなく、これといった決め手になるような治療法もないためになかなかよくならず困ってしまい代替医療に頼る方も多いのです。そのような背景からインターネット上で過剰に代替医療の効果を喧伝する様子も散見されます。しかしながら起立性調整障害の代替医療に対してはほとんどエビデンスがありません。前述の一般社団法人 日本小児心身医学会のホームページにも整骨や整体、サプリメントなどには明確なエビデンスがないと注意喚起を行っています。

鍼灸治療に関しても改善したという報告はありますがエビデンスと呼べるほどの根拠はありません。ですので期待しすぎることなく、また病院に行くのをやめて「代替医療や鍼灸にすべてをかける」といったスタンスで治療に臨むことはあまりお勧めしません。しかしながら私の実感としては鍼灸施術をやることで体調不良が改善したという声も多くやればよくなるという実感があります。

田無北口鍼灸院では漢方に精通している医師を紹介し連携しながら治療に当たり改善した実績もございます。その際は医師が漢方薬+標準治療の薬を処方し、また小児専門の医療機関を紹介し、田無北口鍼灸院では定期的に鍼灸施術で自律神経のバランスを整えるという形をとりました。最善の方法を提案しますのでお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

(3)施術代(中学生の場合)

初回:7150円 2回目以降:4950円

 

解説YouTube動画

「予測が立たない時代の治りづらい疾患」に鍼灸院が提供できること。

慢性腰痛や、鬱状態、自律神経失調症、コロナ後遺症など原因が複雑で、予測が立ちづらく、治りづらい疾患が増え続けています。鍼灸院ではタッチセラピーで安心感を与え、またその人の個別性にフォーカスし問題を整理したり、問題解決のためのお手伝いが出来ます。そのためどこへ行っても良くならない人を良くする事が出来ます。

不確実性や複雑性を表す言葉、VUCA(ブーカ)とは?

90年代に軍事用語として生まれビジネス領域で広がって、2016年のダポス会議で使われひろくひられるようになった言葉です。以下の4つのキーワードの頭文字をつなげた言葉です。

Volatility(変動制):テクノロジーがかつてないスピードで進化していて急速な変化が社会に生じている状況。便利な一方情報共有におけるリスクのバランスなどが十分にわかっていない。

Uncertainty(不確実性):数か月後や数年後にどうなっているかわからない状況。組織の統廃合が進み、盤石な組織が今後も続くかどうかが分からない。

Complexity(複雑性):問題に対処しようとしても様座な要因がありすぐに解決できない。あるいはこれまでの方法では解決できない。因果関係でシンプルに解決できない問題が多い。

Ambiguity(曖昧性):物事の因果関係がはっきりせず前例がない中で先に進んでいかなければならない状況。これまでは前例があったり正解がはっきりしていたが多様な価値観の中で柔軟に取り組むことが求められている。(参考1)

元々は医療に特化した用語ではないのですが「医療におけるVUCA」も語られるようになってきました。

増え続ける治りづらい疾患、保健医療のパラダイムシフト

不確実性や複雑性、曖昧性が高い疾患は予測が立ちづらいため「治りづらい」といった特徴があります。鍼灸院でよく見かける疾患ですと鬱状態、コロナ後遺症、慢性疼痛(腰痛などの痛み)、老人退行性疾患、慢性疾患などが挙げられます。これらの疾患は体質やストレスも関係するために原因を一つに特定することが困難で「これをやれば必ず良くなる」とはなかなか言えないことが多いです。こうした疾患は現在でも多く、時代背景などからこれから考えても増えることはあっても減ることはないはずです。

厚生労働省は保健医療2035という提言書でこれからの社会と経済の変化に対応するために医療分野でも以下のような変化が必要であることを訴えています。(以下・写真参照)特に「患者の価値中心」や「キュア(治すこと)中心からケア(身体を労わること)中心」という考え方は重要です。今までの保険医療の考え方やバイオメディカルモデル(原因を特定して対処する医療のこと)では対応できないことが増えるからです。

鍼灸院だから出来ること

現在でも疾病構造の変化により治りづらい疾患は増え続けているため「病院にいったけど痛みが良くならなかった」、「病院では問題解決できなかった」という相談が鍼灸院にも数多く寄せられます。しかしこれは病院の先生や医療スタッフが悪いというよりも、今までのような保険医療制度や薬物療法だけでは解決できなかったというパターンが非常に多いのです。鍼灸院ではそのような方の不満や不安を解消し、通常医療の補完をすることが出来ます。

また現在においても「まずは病院へ」というのがオーソドックスな医療のかかり方でしょうがインターネットで病気や症状を検索する事で余計に迷ってしまいどうしたら良いか?誰に相談すれば良いか?わからない方は少なくないはずです。その方の個別性にフォーカスし、鍼灸治療をしながら鍼灸師とお話し、時間をかけてじっくり問題整理をすることも可能です。

医学的な診断がつかないのに不調が取れない場合(自律神経失調症や不定愁訴のような状態など)や、痛みや精神疾患など薬物療法ではあまり改善しない場合にも鍼灸治療がお役に立てることは多いのです。医学的な検査をした方がいいと判断される場合は病院に行くようアドバイスしたりもできます。

鍼灸治療はタッチセラピーであり、触れることで安心感を与えたりできます。また薬でないため相互作用を及ぼさない、薬が増えないなどのメリットがあるため補完医療としても優れています。ほとんどの場合で病院の治療やセルフケアなどとも併用出来ますので、何かあればお気軽にご相談ください。

参考

1:これからの倫理と看護(日本看護協会出版)

コロナ後遺症(ポストコロナ症候群)を訴えやすい人の特徴や慢性疲労症候群(CFS)との類似点

2023年3/27日現在コロナ後遺症を訴える方が増え、たくさんの相談をいただいてます。「実際にコロナウィルスに感染し、病院で診断され症状も重かった」方や「実際にはコロナウィルスに感染していないものの症状が類似しているため自分はコロナ後遺症ではないかと考えている」方などパターンは様々です。どこからどこまでがコロナ後遺症に該当するのか?はっきりしないことも多いのでまずは詳しい医師からも診察してもらうよう勧めますが、鍼灸治療に期待し相談に来る方はすでに自分でいろいろな治療法を試していて病院へ行って医師の診察を受けていることも多いです。(EAT・上咽頭擦過療法を行ってくれる耳鼻科や漢方に詳しい内科など。)最近ではコロナ後遺症のことを「ポストコロナ症候群(Post-COVID Syndrome)」といういい方がなされることも多いようです。どのような症状なのか?どのような方がなりやすいのか?まとめていきます。

コロナ後遺症(ポストコロナ症候群)の症状に関して

原因や機序など詳しくはまだわからないことが多いのですが厚生労働省は症状として「疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下」などを挙げています。*上画像参照(厚生労働省HPより

どのような方が多いのか?

上記のように症状は様々ですが不定愁訴、自律神経失調症などと呼ばれるような症状に似た訴えをする人が多いです。また私自身の個人的な感想ですがそのような症状で過去にも悩んだ経験がある方が多いのではないか、という印象があります。「自律神経系の不調で苦しんだことがある。」、「子供のころ過敏性腸症候群のような症状に悩まされていた。」といった声をいただくことが多いのです。精神的なストレスに敏感で自律神経症状を感じやすい方がコロナ後遺症を訴える傾向にあり、又長引く傾向にあることを指摘している医師もいますしかし、それらに関してはまだエビデンスと呼べるほどのデータはそろっていません。

新型コロナ感染の後遺症リスクが高い人の特徴はBMJという医学誌に掲載されました。それによると新型コロナウイルス感染症の急性期後(回復期・慢性期)の後遺症発症リスクを調べた結果「50歳以上で」「既往症があり」「新型コロナで入院した」に該当する患者が最も後遺症を発症するリスクが高くなったのです。一方で、年齢や既往歴の有無に関係なくメンタルヘルスを発症する患者が増加することも示唆されました。どちらが先で、どちらが結果なのかはまだよくわからないのですがメンタルヘルス(心身症)が影響していることはあるようです。

慢性疲労症候群との類似性

また慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)という病気とコロナ後遺症(ポストコロナ症候群)の類似性が多いという現場の声も多いです。米マウント・サイナイ医科大学教授のDonna Mancini氏らが実施した研究では対象者のほぼ半数(46%)がCFSの基準を満たしていたことが明らかになりました。またこの研究論文では対象者の88%に呼吸機能不全が生じていることが判明しました。呼吸訓練を行えば回復も期待できる可能性もあります。

慢性疲労症候群の診断基準については厚生労働省のホームページより引用し以下紹介しますが、この疾患は「除外診断」といってほかの病気が否定された場合に初めて診断することが出来るのです。診断までに時間もかかるので安易に自己判断はしないようにし、専門の医師の指示を仰ぐのが良いでしょう。以下はあくまでも参考程度にとどめてください。

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慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)は原因不明の慢性的な疲労の病因・病態の解明を目的に1988年にCDCにより提唱された比較的新しい疾患概念であり、これまで確定診断に結びつくような検査異常(バイオマーカー)は同定されていない。したがって、その診断には臨床症状を中心とした診断法が用いられており、日本でのCFS診断には厚生労働省(旧厚生省)の研究班がHolmes診断基準1)を基に1991年に作成した厚生省CFS診断基準2)(表1)が用いられている。

この基準によると、CFSと診断されるには、大クライテリアに記載されている、①生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返すことと、②慢性疲労の原因と考えられるような疾病を除外すること、の2項目を満たすことが必須であり、小クライテリアとして症状クライテリアの8項目を満たすか、症状クライテリア6項目と身体所見クライテリア2項目を満たす必要がある(表1)。

また、大クライテリアで意味する“強い疲労”の程度をより明確にするために、表2に示すperformance status(PS)が定められており、CFSと診断されるためにはPS 3“全身倦怠感の為、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である”以上の疲労程度であることが求められている。

表1:厚生省CFS診断基準試案(平成7年3月、一部改変)

A.大クライテリア(大基準)
1生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
2病歴、身体所見.検査所見で表2に挙げられている疾患を除外する。

B.小クライテリア(小基準)
ア)症状クライテリア(症状基準)
(以下の症状が6カ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)

1微熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒

2咽頭痛

3頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張

4原因不明の筋力低下

5筋肉痛ないし不快感

6軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感

7頭痛

8腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛

9精神神経症状(いずれか1つ以上)羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ

10睡眠障害(過眠、不眠)

11症時、主たる症状が数時間から数日の間に発現

イ)身体所見クライテリア(身体所見基準)(2回以上、医師が確認)
1微熱

2. 非浸出性咽頭炎

3リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)


◎大基準2項目に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たすと「CFS」と診断する。
◎大基準2項目に該当するが、小基準で診断基準を満たさない例は「CFS(疑診)」とする。
◎上記基準で診断されたCFS(疑診は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例は「感染後CFS」と呼ぶ。

表2  PS(performance status)による疲労・倦怠の程度

(旧厚生省 慢性疲労症候群診断基準(試案)より抜粋)3)


0:倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。

1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 倦怠感を感ずるときがしばしばある。

2:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。

3:全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。

4:全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。

5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である。

6:調子のよい日は軽作業は可能であるが、 週のうち50%以上は自宅にて休息している。

7:身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、 通常の社会生活や軽作業は不可能である。

8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、 日中の50%以上は就床している。

9:身の回りのことはできず、常に介助がいり、 終日就床を必要としている。

(以上、引用)

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鍼灸治療を行うメリット

慢性疲労症候群に対する鍼治療の有効性の研究はたくさんあります。症状改善に役立つことが示唆されています。症状改善という意味では鍼治療がお手伝いできることも多いと思います。また呼吸リハ、ヨガなどと組み合わせて行うことでの症状改善も期待できます。ケースバイケースではありますがまずはご相談いただければ詳しくお話いたします。

だるい、気分が落ち込む、痛みが取れない、耳鳴りやめまいがする、骨盤周辺の違和感がある、ほか・・・不定愁訴とは何か?

こんな症状を訴える方が増えています・・・

☑ なんとなくだるい

☑ いらいらする

☑ 頭が重い

☑ 疲労感が取れない

☑ 朝起きられない

☑ 気分が落ち込む

☑ 痛みが取れない

☑ 骨盤周辺の違和感や排尿時痛がある

☑ 憂鬱な気分が続いている・・・・

これらは「不定愁訴」(ふていしゅうそ)と呼ばれ何となく体調が悪いという自覚症状を訴える方からの相談が多いです。不定愁訴とは医学的に説明できない・原因を特定できない状態のことでMedically Unexplained Symptoms(MUS)と呼ばれます。1)

訴え(主訴)は強いが主観的で多岐にわたり、客観的所見に乏しいのが特徴です。また正式な病名ではないものの自律神経失調症と病院等で言われることも多いです。原因が特定されずらく、症状が安定しないため治療も難しいとされています。

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ストレスや生活習慣病が大きな原因??

以下の項目に1つでも当てはまることがある方は注意が必要です。上記のような症状が出やすい状態であるといえます。

☑ 仕事が忙しい。

☑ いつも時間に追われている。

☑ 子育てをしていて疲れがたまっている。

☑ なかなか休めない。休日もメールの返信に追われている。

☑ 人間関係の悩みがある。

☑ いっつもコンビニやファーストフードで食事を済ませてしまう。

☑ 一日中パソコンのモニターを見ている。ほか

病院に行って検査をしても何も異常はなく「ストレスが原因ですね。」と言われて特に解決方法もなくどうしていいかわからず途方に暮れてしまった・・・そんなお話も、よく聞きます。確かにストレスが原因の一つですし、生活習慣が原因だということはなんとなくわかるのでしょうがどうやってそれを改善すればいいのかわからず途方に暮れてしまうことも多くあるようです。ストレスなく楽しく仕事や生活をし、十分な運動ができ、しっかり休めて、ちゃんと栄養のバランスを考えた食事が取れればおそらくこのような症状を訴える患者さんは激減することになると思います。・・・しかしそれらのことを実行するのは、とても困難な方が多いのではないでしょうか??みなさん時間に追われ、また多くのストレスを抱えながら生活しています。本当に大変だと思います。

生活習慣を変えるきっかけを鍼灸で!!

鍼灸を行うことでこれらの不調を解決するお手伝いができます。自律神経安定作用、リラックス作用、疲労回復作用などがあり休んでも取れなかった疲れを急速に回復させることなども可能です。生活習慣を見直すきっかけにも最適でしょうからぜひとも試してみることをオススメいたします。

参考1)不定愁訴のABC(日経BPマーケティングP1より)

慢性骨盤痛症候群と鍼灸治療(骨盤内疼痛症候群、慢性前立腺炎、前立腺肥大の不快感ほか)

男性女性問わず排尿に関わる症状で、小便が出にくい・残尿感がある・排尿時痛がある・頻尿・排尿後おしっこが漏れる、などの症状を訴えるケースがあります。慢性骨盤痛症候群(CPPS)は女性に多く英国では1000人に38人が罹患(りかん)しているとのデータがあります。下腹部または骨盤部の間欠的または持続的な痛みで、少なくとも6か月間続き、月経や成功時のみに出現するのではなく、妊娠とも関連せず機械的障害をもたらしたり日常生活が制限されたりするもの、と定義されています。1)これらの症状を訴える人は子宮内膜症、腰痛や腰痛や坐骨神経痛などの症状を伴っていたり、ほかにも自律神経症状(めまい、耳鳴り、のどの違和感、気分の落ち込みなど)を抱えていたりすることもあります。

診断までに時間がかかる病気です。病院での尿検査では異常がなく、採血をしても炎症反応はみられず、画像検査でもはっきりとした原因がわからず、特効薬もなく、有効な手術もなく、ブロック注射や投薬治療でも効果が不十分で症状のコントロールができない場合も多く、困って鍼灸院を受診するというケースがあります。弊所ではできる限り病院の医師と協力しながら症状を改善させていくお手伝いができます。慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)を訴える患者さんはほとんどが泌尿器科で診断を受けて鍼灸院に来所されますがもしも病院にいってない場合は前立腺や膀胱の病気を除外するためにもまずは病院に行くことを勧めます。漢方治療が有効な場合があるためご希望であれば漢方治療に詳しいクリニックの医師を紹介することも可能です。

鍼灸治療も有効という報告があります。高いエビデンスがある訳ではないのですが腰部周辺、骨盤周辺の緊張を緩和させると症状が緩和するという実感があります。以下に弊所に来所されたこの疾患を疑った方の事例を紹介します。(医師による診断名は未確定だったため詳細は不明)

お名前 

田中真紀子さま(仮名)

年齢

38歳(施術当時)

主な訴え 

左の臀部から腰が違和感、頸のつらさ、耳鳴り、残尿感ほか

施術開始時期

平成28年6月5日

改善時期

平成28年7月30日

(週に1度程度。全10回の施術。)

経過・状況など

平成28年5月末より症状が気になり始める。泌尿器科で診察を受けたが特に異常はなしの診断。念のため内視鏡の検査もしようか迷っている。

(1)思い当たる原因

平成27年11月1日ころ帯状疱疹、その後腰痛や股関節の痛みが気になり始める。子供が2人。上が中学2年生、下が小学4年生。子育てで多忙、ストレスが多い。

(2)弊所での施術・見解

頚周辺、左股関節周辺の緊張が気になる。初回の施術時によくお話を伺ったところ漢方治療にも興味があるため弊所から紹介。(診断までに時間がかかる病気の可能性もあるため、泌尿器科の医師とも良好な関係を築き継続して通院するようアドバイス。)漢方内科の医師から漢方薬処方。足のむくみ感や滞りを指摘された。頸部や腰部、股関節周辺の緊張を緩める目的で施術を行う。特に仙骨周辺にパルス(低周波)鍼治療を行った。

(3)経過

週1回5回(平成28年6月24日)の施術で軽快に向かう。7月30日に10回目の施術を行ったところ症状が消失したため施術を終了。

(4)総括

精神的なストレスや体質の問題もあり痛みや症状に過敏になっていた可能性もあるが詳細は不明。鍼灸施術を行うことで緊張が緩和されて、結果的に改善に向かったか。その後の経過も注意深く観察する。

 

参考文献

1)Christpher Burton 不定愁訴のABC 日経BP社 2014