徒手検査法について ~ジャクソンテスト・スパーリングテスト・SLRテスト他

徒手検査法について ~ジャクソンテスト・スパーリングテスト・SLRテスト他

(1)脊柱部(頸椎部)

鍼灸院での施術を行う際「頚椎に違和感があり、人指し指が痺れる」と訴える方がいます。頚椎の皮膚分節領域でみると、以下のような徒手検査を行うことになります。

①Spurlingテスト(椎間孔圧迫検査)

目的…頚椎部神経根圧迫症状有無の鑑別

意義…頚椎の椎間孔圧迫試験で、腰部のKempテストと同様の手技である

実施法…患者を椅子に座らせ、頸部を患側に側屈させ、

検査は両手を頭頂部に置き、圧迫を加える。健常者には疼痛は誘発されませんが、

頚椎部に神経根圧迫が存在する際には、患側上肢に疼痛が誘発、増強またはしびれ感が放散します。

 

②ジャクソンjacksonテスト

a  Head Compressionテスト

目的…頚椎部神経根刺激症状有無の鑑別

意義…Spurlingテストと同様な椎間孔圧迫追試験で、

安静時に疼痛を訴えている患者や麻痺のある患者は手技により症状悪化の危険があるため慎重に行います。

実施法 検者は座位の患者の背後に立ち、患者の頸部を側屈または後屈させて頭頂部

に圧迫を加える。健常者には疼痛が誘発しないが、

神経根刺激症状が存在する患者には上肢に放散痛が誘発されたり、疼痛が増強します。

 

b Shoulder depression テスト

意義  Eatonテストや腰椎のSLRテストと同様のnerve stretchテスト

実施法 検者はHead Compressionテストと同様な位置で、

一方の手で頚椎を健側に側屈させ、他方の手を肩の上に置き、その肩を引き下げます。

神経根刺激症状が存在する患者では上肢への放射痛が誘発したり、疼痛が増強します。

 

(腰椎部)

代表的な検査法にSLR(Straight Leg raising)テスト=神経伸長検査があります。

 

目的…腰部椎間板ヘルニアの鑑別

意義…腰仙部神経根に対する代表的な神経伸長検査であり、

腰部椎間板ヘルニアのもっとも重要な疼痛誘発試験です。

実施法…患者は仰向けになり、膝を伸展位のまま、術者はゆっくりと患者の足を挙上させる。

患者が痛みを訴えたところで止め、ベットとの角度を測定します。

0度から70度までの間で足の後面に電撃痛が走れば真の陽性。

加えて坐骨神経に沿って痛みが現れれば陽性と判断します。

 

SLRで陽性の場合に行う検査法にWLR(Well leg raising)=神経伸長検査=があります。

目的…腰部椎間板ヘルニアの鑑別

意義…患側(ヘルニアのある方)にSLRの反応が出て、

しかも健側(ヘルニアのない方)の足にWLRテストを行った際、

反対側の足に坐骨神経痛症状が再現されたら、椎間板ヘルニアの可能性がきわめて高いと判断します。

実施法…健側(ヘルニアのない方)の足に疼痛が誘発されます。

 

SLRで陽性の場合に行う検査法にBow Stringテストがあります。

目的…神経根緊張状態有無の鑑別

意義…神経伸長検査の一種で、SLRテストの偽陽性を除外する手段としてBragard signなどとともに重要。

実施法…SLRが陽性のときに行います。痛みが再現された足の角度は変えずに、

術者は検査側の膝をゆっくりと痛みが消える角度まで屈曲させる。

患者の足を抱え込むようにして肩に乗せる。次に左右の親指を膝窩の中央に置き、やや強めに押します。

大腿後面から殿部にかけて疼痛が発生するなど症状が再現されたら陽性、膝窩だけの痛みは陰性です。

 

 Bragard signテスト

目的…神経根緊張状態有無の鑑別

意義…SLRテストが陽性か偽陽性で、神経伸長検査陽性と判定してよいかどうか

疑問のある場合に有効。

SLRテストとBragard signテストがともに陽性であれば神経根緊張状態の存在を証明することができます。

 

実施法…SLRテストで疼痛が誘発された挙上角度を少し減らし、

足関節の伸展(屈曲)を強制すると、再び疼痛が誘発されます。症状が重度であれば、

挙上しなくても足関節の伸展だけで陽性と判定できます。

 

FNS(femoral nerve stretch)テスト=神経伸長検査

目的…上位腰椎椎間板ヘルニアの鑑別

意義…上位腰椎椎間板ヘルニアのほか腸腰筋、大腿直筋に障害があっても

陽性となるため他の神経学的、脊柱所見にも留意が必要

実施法…患者はうつ伏せで、患側膝関節を90度屈曲し、

検者は一方の手で屈曲した足を握り、他方の手で殿部に手を当てます。

屈曲した足を引き上げて股関節を過伸長すると、大腿前面に疼痛が誘発されます。

 

Kempテスト

目的…椎間孔圧迫試験

意義…腰椎部での椎間孔圧迫試験の一つで、椎間板ヘルニアに対する疼痛誘発手技です。

実施法…検者は立位の患者の背後に立ち、患者に膝関節伸展位を保持させながら

体幹を回旋したまま背屈させて、坐骨神経の走行に沿った疼痛が誘発されるかをみる。

後部椎間関節の異常に対して敏感です。

 

ニュートン(Newton)テスト

目的…仙腸関節疼痛誘発試験

意義…3法のうち2法に陽性がでれば仙腸関節の病変が疑われます。

実施法…

①第1手技:患者背臥位、検者は両手を患者の上前腸骨棘にかけて

前内方へ圧を加えます

②第2手技:患者背臥位、検者は両手の母指を上前腸骨棘、

他の4指と手掌を腸骨翼に当て両側から後内側に圧を加える

③第3手技:患者腹臥位、検者は両手を重ねて仙骨部を後面から圧迫。

徐々に力を加えて最終的に全体重をかけます。

 

(胸部・上肢部)

アドソンAdsonテスト

目的:胸郭出口症候群の鑑別

意義:頚椎を後屈して患側へ回旋すると、

前斜角筋は引き伸ばされて第1肋骨と前・中斜角筋でつくる斜角筋三角が狭くなり、

その中を通る鎖骨下動脈や腕神経叢が圧迫しやすくなります。

この状態で深呼吸を加えると、胸郭は上昇して肋鎖間隙も狭くなるために、

神経、血管はさらに圧迫されやすくなります。

実施法:患者を椅子に腰掛けさせ、その両手を膝の上に置きます。

頚椎を後屈し、右または左へ回旋して息を深く吸わせて息を止めさせ、

その際に橈骨動脈の拍動が消失するかを見ます。

 

ライトWrightテスト

目的:胸郭出口症候群の鑑別

意義:上肢を過外転していくと鎖骨は後方へ回転し、

肩甲帯は後方にひかれて第1肋骨と鎖骨の間隙および烏口突起下で小胸筋と胸壁の間が狭くなり、

腕神経叢や鎖骨下動脈が圧迫されやすくなります。

実施法:患者座位で肩関節90°外転、90°外旋位で橈骨動脈の拍動が消失するかどうかみます。

拍動消失は過外転症候群陽性を意味します。