胸郭出口症候群と鍼灸治療について
胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome、TOS)は、首から肩にかけての領域で起こる神経や血管の圧迫によって引き起こされる症状を指します。この疾患で悩み鍼灸院を来所される方はすでに病院を訪れ医師から診断されている方が多いのですが、以下に一般的な症状や注意点をまとめます。個人によって症状やその重症度が異なることにも注意してください。
胸郭出口症候群の症状
- 痛み: 肩、首、腕、手にかけての痛みが主な症状です。痛みは鈍痛や鋭い痛みとして現れることがあり、特に腕の上部や指先に放散することがあります。
- しびれ・痺れ: 神経の圧迫によって、腕や手のしびれや痺れが生じることがあります。特に夜間や特定の姿勢で症状が悪化することがあります。
- 力の低下: 腕や手の筋力が低下することがあり、物を持つ、握る、持ち上げるなどの動作が難しくなることがあります。
- 血行障害: 血管の圧迫によって、腕や手の血流が低下し、冷感や皮膚の色が変化することがあります。
- 肩甲骨周囲の症状: 肩甲骨周囲での痛みや緊張感、筋肉のこわばりが現れることがあります。
- 首や肩の症状: 頸部や肩部の筋肉の緊張、痛み、頭痛が現れることがあります。
これらの症状はTOSの一般的な症状であり、患者によってはいくつかの症状が同時に出現することもあります。ただし、これらの症状は他の疾患や問題とも重なる可能性があるため、正確な診断と適切な治療を受けるためには、専門家の判断を聞くことが重要です。
胸郭出口症候群の治療方法
TOSの治療方法は、症状の重症度、原因、患者の健康状態によって異なる場合があります。
以下に一般的な治療アプローチをいくつか説明しますが、診断や最適な治療方法は、医師との相談を通じて決定されるべきでありまずは病院での診察をお勧めします。
- 保存的療法(非手術的治療): 軽度から中等度の症状の場合、次の方法が試されることがあります。
- 物理療法: 専門家の指導のもとで、筋力トレーニング、姿勢改善、ストレッチングなどの方法を用いて、筋肉のバランスと動きを改善することが考えられます。
- 薬物療法: 痛みや炎症を軽減するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋肉弛緩剤が処方されることがあります。
- 手術療法: 重度の症状や保存的療法が効果的でない場合、手術が検討されることがあります。手術の種類は以下の通りです。
- 第1肋骨切除術(First Rib Resection): 神経や血管の圧迫を軽減するために、第1肋骨を切除する手術です。
- 腋窩出口拡大術(Axillary Outlet Decompression): 腋窩部の組織を切除して圧迫を緩和する手術です。
- 血管再建手術: 血管の狭窄や閉塞を改善するための手術です。
症状の状態や原因によって適切な治療方法が異なるため、医師等に相談して専門的なアドバイスを受けることが重要です。また、病状の進行を早期に察知し、適切な治療を受けることが合併症を避ける上で重要です。
胸郭出口症候群と診断されたらどんなことに注意して生活すればよい?
適切な治療とともに生活や過ごし方にも注意が必要です。以下にいくつかのポイントを挙げてみましょう。
- 医師の指導に従う: まず、診断を受けた医師の指導に従って治療計画を進めることが大切です。医師のアドバイスを受けつつ、症状の軽減や緩和に向けた努力を行いましょう。
- 姿勢の改善: 良い姿勢を保つことは重要です。特に長時間同じ姿勢で作業する場合は、適切な椅子やデスクを使用し、頭・首・肩の位置を適切に保つよう心がけましょう。
- 適切なエクササイズ: 物理療法士や専門家の指導のもとで、筋力トレーニングやストレッチングを行うことで、筋肉のバランスを整えることができます。
- 運動と活動: 運動は血流や筋肉の健康に役立ちますが、患部に過度な負担をかけないように注意しましょう。医師と相談して適切な運動や活動レベルを設定しましょう。
- ストレス管理: ストレスは筋肉の緊張を増加させることがあります。リラクゼーション法や深呼吸などのストレス管理技術を取り入れることで、症状の軽減に役立つかもしれません。
- 作業環境の見直し: もし仕事や日常生活で特定の姿勢や動作が症状を悪化させる場合、できるだけ改善を図るよう努力しましょう。必要であれば職場の調整を検討することも重要です。
- 予防と注意: 重い荷物を持つ際は、適切な姿勢で持ち、肩や首に余計な圧力がかからないように注意しましょう。キャリーバックを持つなど余計な負担をかけないこともよいかもしれません。また、冷えや血行不良を避けるために適切に服装することも大切です。
- 定期的なフォローアップ: 医師との定期的なフォローアップを行い、治療の進行状況や調子の良し悪しを報告し、適切な調整を行うことが重要です。
自身の状態に合わせて、生活習慣や過ごし方を調整することで、症状の軽減や予防に役立つでしょう。専門家のアドバイスを常に受けながら、最適なケアを行ってください。
胸郭出口症候群に鍼灸治療は有効か?
胸郭出口症候群に対する鍼灸治療の効果については、研究結果が一様ではありません。改善したという報告は多数あり一部の患者にとっては鍼灸が症状の緩和に役立つ可能性がありますが、効果は個人差が大きく、確実な治療法とは言えません。以下に、鍼灸治療に関するいくつかのポイントをまとめてみましょう。
- 個人差がある: 鍼灸治療の効果は個人差が大きいです。同じ症状でも、患者の体質や病状によって反応が異なる可能性があります。
- 症状の緩和: 一部の患者は、鍼灸によって筋肉の緊張が緩和され、血流が改善されることにより、症状の軽減を感じることがあるかもしれません。
- 科学的なエビデンスの限界: 現時点では、鍼灸治療の胸郭出口症候群への具体的な効果に関する科学的なエビデンスは限られています。より確実な結果を得るためには、大規模かつ厳密な臨床試験が必要です。
- 総合的な治療アプローチ: 鍼灸治療が有効であるかどうかを判断する前に、他の保存的な治療法や手術療法との組み合わせを検討することが重要です。医師との協議を通じて、最適な治療計画を立てることが大切です。
最終的な判断は、鍼灸師や医師との詳細な相談に基づいて行うべきです。鍼灸治療を検討する場合は、専門家のアドバイスを受けながら進めることがおすすめです。
田無北口鍼灸院・白石の意見・見解
・筋緊張を改善するとしびれや痛みに効果的なので鍼灸治療は有効である。
・しかしまずは整形外科等医師の診断を受け標準的な治療からするのが費用の面から見ても望ましいのではないか?(できれば鍼灸治療と並行しながら行うことが理想)
YouTube動画:手のしびれ、首の痛みで悩む方へ。「胸郭出口症候群と鍼灸治療について解説」
参考
明治鍼灸大学「胸郭出口症候群の鍼灸治療」