がん(癌)患者さんへの鍼灸治療について

がん(癌)患者さんへの鍼灸治療について

がんと一口に言っても様々です。ステージやできる場所によっても症状に大きな違いがあります。また基本的に鍼灸治療は「がんそのものへのアプローチ」ではなく症状の緩和になります。もちろん鍼灸治療を行うと腫瘍が小さくなるという研究はあるのですが試験管レベルであったり、あくまでも限定的です。ですから例えば抗がん剤をすべて中止し、鍼治療にすべてをかけるように極端な期待をすることはやめておいた方がいいでしょう。通常医療を利用した上で「補完的に」鍼灸治療を利用するとよいでしょう。場合によってはこちらから主治医に報告のお手紙を書く事も可能です。まずはご相談ください。

以下にがん患者さんが鍼灸治療によって期待できる効果を挙げていきます。

1. 疼痛緩和

鍼灸は疼痛管理に効果があるとされています。特に、癌に関連する痛みや治療の副作用としての痛み(例:手術後の痛み、化学療法による神経障害など)を軽減することが報告されています。

2. 副作用の軽減

鍼灸は、化学療法や放射線治療の副作用(例えば、吐き気、嘔吐、倦怠感、食欲不振、むくみなど)を軽減する助けになることが研究で示されています。これにより、患者の治療の忍容性が向上し、生活の質が改善される可能性があります。

3. 不安やストレスの緩和

癌の診断や治療に伴う心理的なストレスや不安を緩和する効果があると言われています。鍼灸治療は、リラックス効果があり、心身のバランスを整える助けになることがあります。

4. 疲労の軽減

鍼灸は、癌患者が経験する慢性的な疲労やエネルギーの低下を改善するのに役立つ場合があります。これにより、日常生活の活動性が向上する可能性があります。

5. 免疫機能のサポート

一部の研究では、鍼灸が免疫系に良い影響を与える可能性があることが示唆されています。特に、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化を促すことで、免疫力のサポートが期待されています。

6. 自律神経機能の改善

例えば消化不良や便秘など、消化器系の不調や自律神経症状にも鍼灸が効果を示すことがあります。これにより食欲が増したり便秘が改善することがあります。

自律神経症状については以下に具体的な症状の例を挙げます。

(1)不眠症

癌患者は、診断や治療によるストレス、不安、疼痛などの影響で不眠症を経験することが多いです。鍼灸治療は、リラクゼーション効果を通じて副交感神経を活性化し、睡眠の質を改善するのに役立つことが研究で示されています。

(2)ホットフラッシュ(発作的な発汗)

化学療法やホルモン療法を受けている癌患者は、更年期に似たホットフラッシュ(発作的な顔面や体のほてりと発汗)を経験することがあります。鍼灸治療は、体温調節に関与する自律神経のバランスを整えることで、ホットフラッシュの頻度や強度を軽減する効果が期待されています。

(3)消化器系の症状(吐き気、便秘、下痢の症状改善)

自律神経の乱れは、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、腹痛などの消化器系の症状を引き起こすことがあります。鍼灸治療は、胃腸の運動を調整し、消化液の分泌を正常化することで、これらの症状の緩和に効果を示す場合があります。

(4)疲労感

癌治療中や治療後の慢性的な疲労感(癌関連疲労)は、自律神経系のバランスの乱れと関連していることがあります。鍼灸は、エネルギーの流れを整え、疲労の軽減や活力の回復をサポートする効果が期待されています。

(5)不安やストレス

鍼灸は、不安やストレスを緩和する効果があるとされ、自律神経のバランスを整えることで、これらの心理的な症状を軽減する助けになります。不安やストレスの軽減は、癌治療中の患者にとって非常に重要です。

(6)頭痛やめまい

鍼灸治療は、血流を改善し、筋肉の緊張を緩和することで、頭痛やめまいを軽減することができます。これも自律神経のバランスが改善されることにより得られる効果の一つです。

(7)冷え性や末梢の血行障害

自律神経の不調は、手足の冷えや血行不良を引き起こすことがあります。鍼灸は血行を促進し、手足の冷えやしびれを改善する効果が期待されています。