BMJ(海外の医学ジャーナル)にレター投稿してみてわかったこと。どんな記事だと通らないのか?

BMJ(海外の医学ジャーナル)にレター投稿してみてわかったこと。どんな記事だと通らないのか?

最近私は田無北口鍼灸院で得た知見を基にフリーランス研究者として活動しています。2025年4月はプレプリント(査読前の論文)を2本、BMJ(海外の有名医学ジャーナル)に4本レター投稿、そのうち3本採用。Nature誌に1本レター投稿(4/28日現在掲載可否の返事待ち)といった活動をしました。まあまあ良いペースで活動できました。私が書いたプレプリントやレターを読んでみたい方はこちらORCIDという国際研究者アカウントにまとめてあります。随時更新しているのでよかったらご覧ください。すべて英語での記事になります。

私が投稿して採用された記事は以下のような内容です。1本目EBM(エビデンスに基づく医学)の批判、2本目AI時代の医療、3本目トランプ大統領への批判・メタモダン思想です。通らなかった記事はどんなことが書いてあるのか?ここに公開したいと思います。ニュースはこの記事(マラリアはアフリカの「25年間で最悪の時期」に壊滅的な再来の危機に瀕している)に関してでした。

Dear Editor
In resource-limited settings, culturally rooted embodied practices offer critical alternatives for health education and promotion. A randomized trial from Uganda demonstrated that adjunctive moxibustion improved tuberculosis outcomes without major adverse events【1】. Physical, hands-on interventions like moxibustion go beyond cognitive teaching: they activate relational, embodied communication essential for health behavior change, especially in underserved communities. As Whitehead【2】noted, effective health promotion must engage people socially and politically—not just inform them. Benner and Wrubel’s phenomenological analysis【3】further suggests that care emerges through embodied concern, not mere instruction. Moxibustion exemplifies how traditional embodied practices can address modern health challenges. Integrating culturally meaningful, body-based interventions could reshape global health education—making it not only effective, but profoundly human.
Kenjiro Shiraishi
301 Nozaki Bldg, 2-9-6 Tanashicho, Nishitokyo-shi, Tokyo, Japan ORCID: 0009-0003-2550-7385
References
1. Ibanda HA, Mubiru F, Musiba R, et al. Adjunctive moxibustion treatment for tuberculosis: A randomized clinical trial investigating potential efficacy and comparative safety. Complement Ther Med. 2020;52:102518.
2. Whitehead D. Health promotion and health education: advancing the concepts. J Adv Nurs. 2004;47(3):311-320.
3. Benner P, Wrubel J. The Primacy of Caring: Stress and Coping in Health and Illness. Addison-Wesley; 1989.

 

こちらのレターを見て頂けるとわかりますが、一見特に問題はないように思います。では、なぜ採用されなかったのでしょう?あくまで予想にすぎませんが私の主張が「感染症予防にお灸を使うのはどうか?」というあまりにもニッチな話題で、また私自身が鍼灸師であるために「鍼灸の効果を過剰見てバイアスがある」と判断されたのかもしれません。はっきりとはわかりませんが今の話題はEBM再考、AIと医療、トランプ大統領のようなホットトピックの方がいいように思われます。BMJにしろNatureにしろ世界中の医療者が見ていることを考えると、やはりトレンドを読む必要があるかもしれないということです。またレター投稿にしろ論文投稿にしろ、基本は専門知よりもリベラルアーツ的ないわゆる教養が重要視されるでしょう。この2点(トレンドと教養)がないと欧米のトップジャーナルは相手にしてくれないかもしれません。これからもチャレンジしながら学んでいきたいと思います。

それから日本ではBMJはとても敷居が高い学術ジャーナルというイメージをお持ちの医療従事者も多いのですが半分正解で半分は間違いです。たしかにBMJのインパクトファクターは107で世界最高峰の学術ジャーナルであることは間違いないのですが同時にかなり広い間口で読者の意見を取り入れています。私のような人文社会学に興味ある鍼灸師の投稿を受け入れてくれたりもします。決して医学や薬だけの研究を載せているわけではありません。例えばWhat Your Patient Is Thinkingという患者さんが体験談を投稿するコーナーまで用意されています。こちらは査読論文ではありませんが医療現場の声を拾いあげ、より良い医療を世界に発信しようとしている懐が深いジャーナルなのです。

またBMJはプレプリントの発信を昔から推奨しておりジャーナル自身もプレプリントサーバ運営に関わっています。このようにオープンサイエンスの時代をリードしまた新規研究者へのサポートも手厚いです。ここには

  • どうやってレター送るか

  • どうやってAnalysis書くか

  • プリプリント出してもいいよ

  • 著作権の扱いはこうだよ

  • リジェクトされてもめげないで

  • 編集者がどう考えてるか

などが親切丁寧に書かれています。なぜBMJはこのようなスタンスなのでしょうか?それはBMJが世界中から現場の声を集めたいからにほかなりません。上記のリンクを見るとわかりますが

  • 「論文なんか誰でも出していいよ」

  • 「一発アクセプトなんか滅多にないよ。普通はリバイスして採択されるよ」

  • 「いいアイデアなら立派な施設に属してなくてもOKだよ」

  • 「プリプリントも推奨してるよ」

  • 「失敗を恐れるな!」

みたいなことが、明言されてるのです。こんな医学ジャーナル、は世界でもBMJだけかもしれません。間口が広くまた専門的で深い要素があるのは本当に素晴らしいジャーナルであると感じます。

ということで今後の私の動きは1,BMJNatureを毎日チェック。2,どうやってレターを送るか?考えながら読み世界のトレンドを読む力をつけつつ、3,NEJM AIを定期購読チェックして最新のAI医療研究を探ることに重点を置きます。こうすることで毎日が修行のようになるため力がつくでしょう。またプレプリントで出している研究も先へ進めます。一つは来月中にBMJ Analysisへ査読付き論文として提出する予定です。