鍼灸勉強会用CONSORT2025 ザックリ解説
BMJの記事、CONSORT 2025 explanation and elaboration: updated guideline for reporting randomised trials doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2024-081124 (Published 14 April 2025)をGPT-4を使ってざっくり要約してCONSORT2025について解説します。鍼灸勉強会用なんでザックリ解説です。詳しく知りたい方は必ず原著を当たってください。
はじめに
CONSORT2025とは一言で言えば「RCTの報告を正確・透明にするための国際ガイドライン」です。
🎯 なぜCONSORTが必要?
ランダム化比較試験(RCT)は、医療介入の効果を判断するための最も信頼性の高い方法。
でも、それがきちんと報告されていないと意味がない。読者は「何が行われたか」を推測せずに済むよう、正確な記載が必要。
📚 CONSORTの歴史と役割
CONSORT(試験報告の統合基準)は1996年に初版、その後2001年、2010年、そして今回2025年に改訂。
「報告書に最低限含めるべき項目(チェックリスト)」と「フローチャート(参加者の流れ)」から構成されている。
著者のためだけでなく、読者・査読者・編集者・ガイドライン作成者も利用可能。
🛠 今回のアップデート(2025年)の背景
報告の質がいまだに不十分なこと、報告の透明性が求められていることが理由。
CONSORTと姉妹ガイドラインのSPIRIT(試験プロトコルの報告ガイドライン)との整合性を重視。
オープンサイエンス、AI活用、患者・市民の関与といった新たな視点を反映。
🔄 更新のプロセス
文献レビュー → デルファイ調査 → 国際会議 → チェックリスト案の作成と修正
EQUATORネットワークの手法に従い、300人超が関与した国際的プロセスで開発
🆕 主な変更点(さわりだけ)
データ共有、患者参加、AIの使用、有害事象、欠測値、資金・COIなどが項目として新設・再編。
SPIRIT 2025との表現統一も実施。チェックリストは30項目に。
チェックリスト30項目
✅ 項目1a:ランダム化試験としての識別
🔍 一言でいうと:タイトルに「ランダム化」を入れよう
📝 内容ポイント
論文がRCTであることが明確にわかるタイトルにする。
たとえば “randomized trial” を明示しておくと、文献検索や索引付け時に正しく分類されやすくなる。
「どんな群にどうランダムに分けたか」がタイトルから伝わると◎。
✅ 項目1b:構造化された抄録(abstract)の記載
🔍 一言でいうと:抄録は簡潔・構造的に。本文とズレないように
📝 内容ポイント
抄録は「その研究、読む価値あるか?」を判断する最初のフィルター。
結果を誇張したり、「スピン(都合よく表現)」を入れるのはNG。
統計的に有意だった副次アウトカムだけを書くのもNG。
抄録には、目的・方法・結果・限界などを構造的に記載。
CONSORTでは「Abstractのチェックリスト(CONSORT for Abstracts)」も整備されている。
一部のジャーナル形式に合わせつつも、読者に誤解を与えない中立的記述が求められる。
オープンサイエンス(該当:項目2〜5に統合)
オープンサイエンスとは「誰でもアクセス・再利用・検証できる科学のあり方」。
今回から「オープンサイエンス」関連の項目(試験登録、プロトコル開示、データ共有、COIなど)をまとめて強調。
新たに「個人レベルの匿名化データや統計コードの共有」も項目に追加(項目4)。
AIの関与(AI執筆補助など)も明記推奨されている。
✅ 項目2:試験登録(登録機関名・番号・URL・登録日)
🔍 一言でいうと:「この試験、ちゃんと登録されています」と明示しよう
📝 内容ポイント
試験の透明性を高めるため、試験開始前に登録することが国際的に求められている。
登録情報には以下を明記:
登録機関名(例:ClinicalTrials.gov)
試験ID(例:NCT12345678)
登録日
URL(読者が見られるように)
登録はバイアス防止・不正防止に必須。
WHOやICMJEも「倫理的責任」として登録を推奨・一部義務化。
登録だけでなく、「登録簿に結果が載っているか?」も示すことが望ましい。
✅ 項目3:プロトコルと統計解析計画のアクセス情報
🔍 一言でいうと:「この研究、計画通りやったんですよ」を証明しよう
📝 内容ポイント
試験プロトコルは、どんな設計で何をどう評価するかの事前宣言書。
統計解析計画(SAP)も、どの統計手法で分析するかを記した重要資料。
これらは「バイアスの温床になりやすい事後変更」を防ぐ。
アクセス可能な形で公開(URL、補足資料、OSFなど)することが推奨。
SPIRIT 2025ガイドラインに基づいて、詳細かつ変更履歴も明記。
プロトコルやSAPの最新版がどこで見られるかを、本文または脚注に明示。
✅ 項目4:匿名化データ・統計コード・資料の共有場所
🔍 一言でいうと:「データとコードも見せますよ」な姿勢が信頼を生む
📝 内容ポイント
研究データや統計コードの共有は再現性・信頼性の確保に不可欠。
特に:
個別参加者データ(IPD)
データ辞書(変数の定義表)
統計解析コード
共有形式はさまざま(リポジトリ、著者連絡、DMPに沿った管理など)
NIHやゲイツ財団、主要ジャーナルもデータ共有を義務化または強く推奨。
共有できない理由があるなら、その正当性を明記すべき。
機密性を要しない資料(例:マニュアル、ビデオ等)は優先的に共有しよう。
✅ 項目5a:資金源と提供者の関与の明示
🔍 一言でいうと:「誰が金出して、どこまで口出したか」を書こう
📝 内容ポイント
すべての資金提供元を明記(企業・政府・財団など)
金銭的支援だけでなく、薬剤提供・統計解析支援・メディカルライターの提供なども含む
「デザイン・実施・解析・報告」それぞれにおいて資金提供者が関与したかを明記
例:「資金提供者は一切関与していない」or「報告の執筆に参加した」
資金提供者が最終決定権を持っていたかどうかや、バイアス回避の仕組みも書くとなお良し
背景:企業資金試験では好ましい結論が出やすい傾向があるため、読者がバイアスを評価するために重要
💡 ポイント:関与がゼロでも「関与していない」と書くのが大事。沈黙は不信を生む。
✅ 項目5b:著者の金銭的・非金銭的な利益相反(COI)
🔍 一言でいうと:「著者の利害関係、全部書こう。怪しまれないように」
📝 内容ポイント
すべての著者のCOI(Conflict of Interest)を明記
金銭的 COI:助成金、コンサル料、講演料、株式など
非金銭的 COI:個人的・宗教的信念、組織との関係、学術的競争など
関与がなければ「ありません」と明記(“declare no competing interests”)
背景:研究結果とCOIの存在には統計的に有意な相関があるという研究もあり
申告漏れが多い(公的データベースとの照合で約半数が未申告だったという報告も)
COIは不正を意味しないが、信頼性を担保するために必要な透明性指標
🧠 非金銭的COIの方が見逃されがち:宗教・政治・所属学会の立場なども明記するのが望ましい。
概要(該当:項目6〜7)
試験の背景と目的は、「なぜやるのか、何を知りたいのか」を明確にする最初の土台です。
この部分が曖昧だと、読者に「その研究、やる意味あった?」と思われてしまいます。
項目6:背景と根拠
→ 過去のエビデンスと現場の課題をふまえ、「この試験の必要性」を正当化項目7:具体的な目的
→ 何をどう比べるか(PICOやEstimand)を中立的に明示。ベネフィットとハームの両方を意識
✅ 項目6:科学的背景と根拠
🔍 一言でいうと:「なぜこの試験が必要だったのか」をちゃんと説明しよう
📝 内容ポイント
試験の導入部分では、既存のエビデンスの限界と疑問点を示すことが重要。
根拠には:
説明的(mechanistic)な理由:薬理作用の仕組みなど
実用的(pragmatic)な理由:実臨床でどっちが有効かを知りたい などがある
介入がどう効くと考えられるのか(メカニズムや理論)を説明する。
比較対象(プラセボや通常治療など)をなぜ選んだのかを明示。
理想は、システマティックレビューを引用して根拠を整理すること。
背景説明が不十分だと、「もう答え出てたのに、なぜやったの?」という不信を招く。
📌 覚えておきたい:「この試験、やる必要あった?」に答えるのが項目6。
✅ 項目7:目的(利益と害に関連する具体的な研究課題)
🔍 一言でいうと:「何をどう比べて、何を知りたいのか」をはっきり書こう
📝 内容ポイント
目的は、試験が答えるべき問い。
PICOまたはPICOTS(患者・介入・比較・アウトカム・期間・設定)で整理するとよい。
利益(ベネフィット)だけでなく、害(ハーム)もきちんと意識すること。
中立的な言い方を使う(例:「AとBの効果を比較する」→「AがBより優れるか」ではなく)
優越性試験、非劣性試験、同等性試験かを明確に。
試験の性格(パイロット試験、実行可能性試験など)も明示。
多群試験では、どの群を比較するのかをはっきりさせる。
プラットフォーム試験などで目的が途中で変わる場合、その変更と理由を記録。
Estimandフレームワークの活用も推奨(まだ必須ではないが推進中)
📦 Estimand フレームワーク(補足)
試験の目的を構造的に定義するツール。
PICOより一歩進んだ精緻な設計手法で、以下の5つの要素で構成:
対象集団(Population)
治療介入群(Treatment)
アウトカム(Endpoint)
要約指標(Summary measure)
中間事象の扱い(Intercurrent events)
→ ICH E9(R1)が公式定義を提示。今後はガイドラインや論文での記載が進むと予想される。
方法(Methods)
(該当:項目8〜21)
研究方法の透明性は、再現性と信頼性のカギ。
「どうやって試験を実施したか」を丁寧に記述することで、読者・査読者・他の研究者がその信頼性を判断できます。
✅ 項目8:試験デザイン(Trial design)
🔍 一言でいうと:「この試験、ざっくりどんな形?」を最初に教えて
📝 内容ポイント
試験の基本構造を明記:「並行群」「クロスオーバー」「群数」「割付比」など
例:2群の並行群ランダム化比較試験、割付比1:1フェーズ(第Ⅱ相など)や実用的試験・プラットフォーム試験かどうかも記述
群が追加されたり、途中で試験設計が変更された場合は、その理由を説明
事前登録されたプロトコルと異なる点があれば正直に報告する
📌ポイントは「読者が頭の中で試験の形をイメージできるか?」
特に多群・適応型・複雑な試験では、ここを曖昧にすると読者がついていけなくなる
✅ 項目9:試験実施場所と時期(Setting)
🔍 一言でいうと:「どこで、いつ行った試験か?」を明確に
📝 内容ポイント
試験の実施国や施設の種類(例:都市部の大学病院、農村のプライマリケア施設など)を記述
参加者がリクルートされた期間と追跡期間(例:2021年1月〜2023年6月)を明記
実施場所や時期によって外的妥当性(一般化可能性)が変わるので、読者にとって重要な情報
可能であれば、試験対象集団の典型性や偏り(例:特定人種、特定保険制度下)も補足すると親切
✅ 項目10:試験プロトコルの変更(Changes to trial after commencement)
🔍 一言でいうと:「プロトコルを途中で変えた?その理由は?」
📝 内容ポイント
登録・開始後に試験の目的、介入、アウトカム、分析方法を変更した場合は、その旨を説明
変更点の内容、変更した時期、その理由(例:中間解析の結果による)を明記
透明性を高めるために、登録時のバージョンと変更後のバージョンを比較可能にするとよい
「予防的登録(pre-registration)」と整合しているか、SPIRITチェックリストとの対応も意識
✅ 項目11:試験登録とプロトコルの入手先(Trial registration and protocol access)
🔍 一言でいうと:「この試験、本当に登録されてる?」
📝 内容ポイント
試験登録番号(例:UMIN、ClinicalTrials.govなど)と登録日を明記
プロトコル全文がオンラインで読める場合は、URLを記載
事前登録の有無は、報告の信頼性を左右する重要ポイント(後出しアウトカムを防ぐため)
プロトコルで明示された内容と論文本文の整合性もチェックされるため、省略せず正確に記載
✅ 項目12:参加者(Eligibility criteria)
🔍 一言でいうと:「どんな人が試験に参加したのか?」を具体的に書こう
📝 内容ポイント
組み入れ基準と除外基準の両方を詳細に記載
例:年齢、性別、診断基準、症状の程度、合併症の有無など判断のための具体的なカットオフ値や評価方法(例:HbA1c 7.0%以上)も明記
倫理的妥当性や再現性の観点から、明確で具体的な基準が必要
現実の臨床との乖離がある場合は、それを説明(例:特殊な施設での厳密な基準など)
📌 ポイントは、「この試験の結果は、誰に当てはまるのか?」を明確にすること。
✅ 項目13:介入(Interventions)
🔍 一言でいうと:「実際にどんな治療(または操作)を行ったのか?」を正確に
📝 内容ポイント
誰が・いつ・どこで・どうやって介入を実施したかを具体的に
例:医師または看護師による、1週間おき、外来での注射など介入群と比較群のどちらについても、同じレベルの詳細さで記述
再現可能性があるように、マニュアルや標準手順があれば明記
鍼灸やCAM(補完代替医療)のような施術型介入では、手技や刺激量、部位、頻度などを丁寧に説明する
介入の遵守(adherence)や逸脱(deviation)への対応も記載するとよい
📌 特に鍼灸のような介入では、報告の質(透明性と再現性)が信頼性に直結します。
✅ 項目14:アウトカム(Outcomes)
🔍 一言でいうと:「何を測って効果や害を判断したのか」を明確に
📝 内容ポイント
主要アウトカムと副次アウトカムを分けて明記(例:主要=疼痛スコア、副次=生活の質)
アウトカムの定義・評価タイミング・評価者を具体的に書く
例:10段階NRSによる自己申告痛スコアを、4週・8週・12週後に評価害(有害事象)も正確に記述:ベネフィットだけでなくハームも対等に扱う
患者報告アウトカム(PRO)を使う場合は、その測定方法や妥当性も明記
事前登録(プロトコル)と異なる報告をした場合は、その理由を説明
📌「何を効果と見なすか」をあいまいにせず、読者や査読者に納得感を与える設計に。
✅ 項目15:アウトカムの測定とデータ収集方法(Outcome measurement and data collection)
🔍 一言でいうと:「どうやってアウトカムを測定したか」を正確に記述
📝 内容ポイント
誰が、いつ、どのようにアウトカムを評価したかを具体的に記載
例:第三者評価者が対面で疼痛スコアを評価使用した機器やツールの妥当性・信頼性も言及(例:バリデートされた日本語版SF-36を使用)
測定の標準化手順(例:トレーニング、マニュアル)があれば明示
盲検化されていたかどうか(測定バイアス対策)も記載
データ収集方法(紙・電子・患者記録など)とその管理体制を簡潔に記述
📌 測定方法が不明確だと、結果の信頼性が一気に下がります。再現性と透明性を意識!
✅ 項目16:サンプルサイズ(Sample size)
🔍 一言でいうと:「何人集めればよいと判断したか、その根拠は?」
📝 内容ポイント
必要な参加者数の計算根拠(例:効果量、有意水準、検出力、ドロップアウト率)を明記
主要アウトカムに基づいて算出されたことを明示
群ごとの目標人数、計算に用いた仮定や文献の引用も書くと説得力UP
非劣性・同等性試験の場合はマージンの設定理由も記載
📌「どうしてその人数なの?」に答える設計根拠の提示は、信頼性を担保するカギ。
✅ 項目17:ランダム化の方法(Randomization: Sequence generation)
🔍 一言でいうと:「どうやってランダムに割り振ったか?」
📝 内容ポイント
割付の生成方法を明記(例:コンピューターによる無作為数列生成)
単純・層別・ブロックランダム化などの方法を記述
層別化した場合は何を基準にしたかを書く(例:年齢、性別)
ブロックサイズが固定/可変か、および隠されていたかを明記
📌 ランダム化の質が、研究のバイアスリスクを大きく左右します。
✅ 項目18:割付の隠蔽化(Allocation concealment mechanism)
🔍 一言でいうと:「ランダム化の順番が事前にバレないように、どう工夫した?」
📝 内容ポイント
ランダム割付の順番が事前に知られないようにした方法を明記
例:中央割付、封筒、Web登録システムなど封筒方式なら「不透明・順番通り・封印済み」かを記載
事前に割付が予測されてしまうと、選択バイアスの温床になる
実際の割付とその隠蔽手法が誰にもれなく実行されたかどうかも報告
📌 ランダム化そのものよりも、“事前に読まれない工夫”が現場では超重要。
✅ 項目19:誰が何をやったか(Implementation)
🔍 一言でいうと:「ランダム化を誰がやって、誰が参加者を割り振って、誰が介入した?」
📝 内容ポイント
ランダム割付の手順を誰が行ったかを具体的に明記:
1. 割付順の作成(例:統計担当者)
2. 登録と割付(例:研究看護師)
3. 介入の実施(例:主治医や理学療法士)実際のオペレーションがどの職種の誰によって行われたかの透明性が重要
実務と設計が一致していなければ実験の信頼性が損なわれる
📌 誰がどこで関与したかは、バイアスや利害関係の確認にもつながります。
✅ 項目20:盲検化(Blinding)
🔍 一言でいうと:「誰が何を知らないようにしてた?」
📝 内容ポイント
試験で誰がどの情報を知らされなかったかを明記:
例:参加者、介入実施者、評価者など盲検の種類(二重盲検、三重盲検など)を具体的に書くのではなく、
「誰がどの情報を知らなかったか(具体的な説明)」で記載治療効果の評価に関与する者(主観的アウトカムの場合は特に)に盲検がかかっているかが重要
非盲検(オープンラベル)であっても正直に書くこと!
📌 「盲検できないから書かない」ではなく、「盲検できないならどう補ったか?」までが誠実な報告。
✅ 項目21:盲検ができなかった場合の対策(Blinding after assignment)
🔍 一言でいうと:「盲検できないなら、せめて影響をどう抑えたか?」
📝 内容ポイント
盲検化が実施不可能だった場合でも、バイアスを減らす工夫を報告
例:評価者だけは盲検、解析を事前登録通りに限定、主観的な評価を避けるなど盲検ができなかった理由と、それによるリスク(観察バイアスなど)を評価
可能であればアウトカムアセスメントのみでも盲検化を試みる
「盲検できなかったから信頼できない」ではなく、信頼性を補う方法の報告がカギ
📌 盲検化が難しいケース(例:鍼治療や理学療法)こそ、この項目が特に重要。
結果(該当:項目22〜27)
試験の結果セクションは、「何が起きたのか」を正確かつ透明に伝える場です。
この部分が不明瞭だったり、都合の良い解釈だけが強調されていると、
読者や臨床家は「で、結局この研究、信頼できるの?」と疑問を抱くことになります。
✅ 項目22:参加者のフロー(流れと脱落)
🔍 一言でいうと:「誰がどこで脱落したか」を図で見せよう
📊 内容ポイント:
登録・割付・フォローアップ・解析まで、参加者の流れを明確に図示(フローチャート推奨)
各ステップで何人が除外・脱落したか、理由も明記
ITT(割付け通り解析)やper-protocol解析の対象人数も報告
CONSORT図は透明性の象徴であり、読者の信頼を得る鍵
✅ 項目23:募集期間とフォローアップ期間
🔍 一言でいうと:「いつからいつまで試験したの?」
📅 内容ポイント:
参加者の募集開始日と終了日を明示
最後のフォローアップ終了日まで記載
時間軸の明確化は、研究の妥当性や再現性の判断材料になる
パンデミック等、時期に特有の要因がある場合は特に重要
✅ 項目24:登録された主要アウトカムの結果
🔍 一言でいうと:「いちばん大事な結果はどうだった?」
📈 内容ポイント:
事前登録された主要アウトカムの各群の結果を記載
統計的な推定値(差・比など)と95%信頼区間(CI)を必ず提示
p値は補助的情報と考え、効果の大きさと臨床的意義を重視
結果に「スピン(誇張)」を加えず、ありのままを正確に記述する
✅ 項目25:副次アウトカムの結果(Secondary outcomes)
🔍 一言でいうと:「主要アウトカム以外の重要な結果も、ちゃんと報告しよう」
📝 内容ポイント:
副次アウトカムは「サブ」だけど軽視していいわけではない。
➤ QOL、バイオマーカー、費用対効果など、臨床的に重要な情報が含まれる。結果は主要アウトカムと同じレベルで:
➤ 群ごとの推定値、差(または比)、95%信頼区間を明示。解析方法も記載する:
➤ 事前に登録・プロトコルに書かれていた副次アウトカムなのか、それとも事後的かで解釈の信頼度が変わる。複数ある場合は表や図で整理してもOK(情報の可読性アップ)。
報告しないと「都合の悪い結果を隠したのでは?」と思われかねない。
✅ 項目26:サブグループ分析・補助分析(Subgroup and Other Analyses)
🔍 一言でいうと:「追加の分析は、事前登録されたものか、事後探索的かを区別して報告」
📝 内容ポイント:
サブグループ分析(例:男女別、年齢別など)は、効果のばらつきを探る手段。
➤ でも、バイアスの温床にもなりやすいので慎重に扱う。補助分析(sensitivity analyses)は、主要解析の前提が崩れた場合でも妥当性が保たれるかを検証するためのもの。
事前に登録されていたもの(pre-specified)か、試験後に追加したもの(post hoc)かを必ず明示。
推定値や信頼区間も、主要解析と同様にしっかり記載。
Exploratoryな結果は「あくまで仮説生成的」であることを示して過剰解釈を避ける。
✅項目27:ハーム(有害事象)の報告(Harms)
🔍 一言でいうと:「よかった点だけでなく、悪いことも正直に書こう」
📝 内容ポイント:
有害事象(Adverse events)や深刻な副作用(Serious adverse events)の報告は必須。
ハームに関するデータは、利益(ベネフィット)と同じくらい重要。
割り付け群ごとに、どんな種類のイベントがどれだけ起きたかを報告。
ハームの定義、収集方法、評価基準も記載:
➤ 例:「患者報告」「診察時に発見」「重症度スケールで評価」など。実際の報告方法の参考例としては CONSORT Extension for Harms(有害事象の報告拡張)も活用可能。
結果が「ハームがなかった」とする場合でも、その根拠(調査方法・観察期間など)を明示。
✅ 項目28:参加者の視点(Patient and Public Involvement)
🔍 一言でいうと:「市民や患者の声を、研究の企画段階からどう活かしたかを書く」
📝 内容ポイント:
患者・市民の関与(PPI: Patient and Public Involvement)が近年ますます重視されている。
試験のどの段階で関与したかを明示:
試験の企画(どんな研究にするか)
デザイン(質問票の内容など)
実施(説明資料の作成など)
結果の解釈や共有方法
単なる「協力」ではなく、「共同設計」や「共同実施」に近いものもある。
報告の際には、以下のような点に触れると良い:
関与した人の属性(患者、家族、市民団体など)
どのような方法で関与したか(委員会、ワークショップなど)
研究にどんな影響を与えたか(例えば「質問票の表現が改善された」など)
専用の報告ガイドライン「GRIPP2(Guidance for Reporting Involvement of Patients and the Public)」もある。
日本でも、PPIを導入する研究が少しずつ増加中。今後ますます報告が求められる。
議論(該当:項目29〜30)
議論セクションは、試験結果をどう解釈し、どう社会や臨床に位置づけるかの「まとめ」です。
ただの感想文ではなく、根拠に基づいた冷静な読み解きと限界の整理が求められます。
✅ 項目29:結果と一貫性のある解釈、利益と害のバランス、他研究との比較
🔍 一言でいうと:「結果の意味を誇張せず、他の研究と照らしながら中立的に解釈しよう」
📝 内容ポイント:
結果の要約は簡潔に。そこから介入の利益と害の両方をバランスよく考察。
結果を他のランダム化試験やシステマティックレビューと比較することで、どのくらい信頼できる知見なのか位置づけが可能。
解釈バイアス(スピン)に注意。
例:「P値は有意じゃなかったけど、効果はあるかも」などの希望的観測は避ける。結果の臨床的意義(P値とともに信頼区間の解釈)を忘れずに。
他研究と比較する際は、「結果」だけでなく「参加者の特性」「試験デザイン」なども含めた全体的な文脈で論じる。
✅ 項目30:限界、バイアス、一般化可能性、(あれば)多重解析
🔍 一言でいうと:「試験の弱点も正直に。再現性や外的妥当性も考慮しよう」
📝 内容ポイント:
どこに限界があるかを読者に正直に伝えることが、信頼性の第一歩。
一般的な限界の例:
対象者の偏り(性別・年齢層に偏りがあるなど)
フォローアップ期間が短い
実施施設や方法が特殊すぎて他の現場に応用しづらい
ITT(割り付け通り解析)と実際の治療がズレている
バイアスや不正確さの原因についても記載(例:測定者が盲検でなかった)。
多重解析(多くのアウトカム・サブグループ解析)をしている場合は、その可能性と限界を正直に記載。
外的妥当性(一般化可能性):
この結果は他の患者や医療現場にどこまで当てはまるか?
試験に参加した人と現場の患者像は似ているか?