2024年11月のお休み
2024年11月は10日 日曜日、24日 日曜日お休みします。24日は学会発表を予定しています。よろしくお願いいたします。
2024年11月は10日 日曜日、24日 日曜日お休みします。24日は学会発表を予定しています。よろしくお願いいたします。
生活保護を受けている方は健康問題に悩んでいることも多いです。そのような方に対し鍼灸施術を行うことがなぜ適しているかについても書いていきます。助成券での対応や出張対応も可能です。(鍼灸施術費用は0円で受けられることがほとんどです。)お困りの方はまずはご相談ください。医師や行政などと連携し、また社会保障制度の説明等もしっかりと行っています。
生活保護受給者が健康問題に悩むことが多いのは、経済的制約や医療へのアクセスの困難さ、慢性疾患の存在、精神的ストレス、健康情報へのアクセス不足など、複数の要因が複雑に絡み合っているからです。これらの要因を軽減するためには、医療機関や福祉機関、地域社会が協力して、生活保護受給者の健康問題に包括的に対応する必要があります。以下にその主な理由を説明します。
1. 経済的な制約
生活保護受給者は、限られた収入の中で生活しており、医療や健康維持に十分な資金を割けないことが多いです。たとえば、健康的な食事を購入することが難しい場合や、運動や健康管理のための活動に参加する余裕がない場合があります。これにより、栄養状態の悪化や、運動不足による生活習慣病のリスクが増加します。
2. 慢性的な健康問題
生活保護受給者には、高齢者や障害者が多く含まれており、慢性的な健康問題(糖尿病、高血圧、心疾患など)を抱える割合が一般の人々に比べて高いです。(参考:厚生労働省「生活保護受給者への健康支援実態調査」、「データに基づいた生活保護受給者の健康管理支援について」、)これらの慢性疾患は長期的な管理が必要ですが、経済的な問題や治療へのアクセスの制約により、適切な治療が受けられないことが多いです。また医療扶助にかかる費用は生活保護費全体の約半分を占めており、健康問題が生活保護において大きな課題であることが示されたデータもあります。(参考:厚生労働省「生活保護制度の現状について」)
3. 医療へのアクセスの困難さ
生活保護受給者の中には、医療機関へのアクセスが困難な人もいます。特に、地域によっては交通手段が限られていることや、病院へのアクセスに時間や費用がかかる場合が多いです。また、医療扶助があるものの、医師にかかる手間や、医療サービスの限界を感じていることから、必要な治療を避けることもあります。
4. 精神的ストレスとメンタルヘルスの問題
生活保護受給者は、経済的困難や社会的孤立、将来への不安など、精神的なストレスを抱えることが多いです。このようなストレスが長期的に続くと、うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題が発生しやすくなり、これがさらに身体的な健康問題にもつながることがあります。
5. 健康教育や情報へのアクセス不足
生活保護受給者の多くは、健康に関する知識や情報にアクセスする機会が限られています。例えば、病気の予防方法や適切なセルフケアの方法を学ぶ機会が少なく、不適切な生活習慣(喫煙、飲酒、運動不足など)が続きやすいです。この結果、健康状態が悪化するリスクが高くなります。
6. 社会的サポートの不足
生活保護受給者の多くは、社会的孤立を経験しており、家族や友人からのサポートが少ないことがあります。このような孤立感は、精神的な健康に悪影響を与えるだけでなく、健康問題が発生した際にサポートを受ける機会が少ないため、適切な治療を受けることが遅れることがよくあります。
鍼灸治療は、生活保護受給者に対して、身体的・精神的な健康を改善し、医療費削減や生活の質の向上に貢献する有望な治療法です。特に薬物に頼らない治療法として、副作用のリスクを抑えつつ、受給者の健康改善を図る手段として注目されています。予防的ケアとしても効果が期待されるため、生活保護受給者の健康管理における有効なアプローチの一つとなり得ます。以下に、主なメリットを挙げます。
1. 慢性疼痛の緩和
鍼灸は、腰痛、肩こり、関節痛などの慢性疼痛に対する有効な治療法として広く認識されています。生活保護受給者の中には、特に高齢者や身体障害者が多く、慢性的な痛みに悩んでいる人が多いです。鎮痛薬に頼らず、副作用の少ない自然療法としての鍼灸治療は、痛みの軽減に役立つとされています。
メリット: 痛みが軽減されることで、医療機関への頻繁な通院が減少し、医療費の抑制に貢献する可能性があります。
2. 精神的健康の向上
鍼灸は、ストレスや不安、うつ症状の改善にも効果があるとされています。生活保護受給者の多くは、経済的困難や社会的孤立による精神的なストレスを抱えていることが多く、これがメンタルヘルスの悪化につながることがあります。鍼灸は、リラクゼーション効果や神経系の調整を通じて、精神的健康の改善に寄与する可能性があります。
メリット: 精神的な安定が得られ、メンタルヘルスに関連する薬物治療の依存が減少し、医療コストの削減につながる可能性があります。
3. 薬物依存の軽減
慢性的な痛みや精神的な不調に対しては、しばしば薬物療法が行われますが、これには依存性や副作用のリスクが伴います。鍼灸治療は、薬に頼らない治療法として利用できるため、特に鎮痛薬や抗不安薬の使用を減らすことで、薬物依存を軽減するメリットがあります。
メリット: 薬の副作用や依存症のリスクを軽減し、生活の質が向上する可能性があります。
4. 生活の質(QOL)の向上
痛みや不調が軽減されることで、生活保護受給者の生活の質(QOL)が向上することが期待されます。身体的な不調が緩和されると、日常生活での活動が増え、社会参加の機会も広がる可能性があります。また、精神的健康が改善されることで、自己肯定感や社会的なつながりも強化されることが考えられます。
メリット: 身体的・精神的な健康の改善により、社会復帰や就労意欲が高まる可能性があります。
5. 医療費の削減
鍼灸治療は、慢性疾患や痛みに対して薬物療法や外科的治療を補完する形で利用されることが多く、医療費の削減に寄与する可能性があります。特に、慢性疾患の治療にかかる医療費は長期間にわたり高額になるため、鍼灸治療を通じて症状が緩和されれば、頻繁な受診や投薬の必要が減少することが期待されます。(参考:BMJ Cost-effectiveness of acupuncture for persistent low back pain)
メリット: 長期的に医療費が抑えられ、生活保護制度全体に対するコスト削減が見込まれます。
6. 予防的な健康管理
鍼灸は、痛みの緩和や病気の治療だけでなく、予防的な健康管理にも効果を発揮します。体のバランスを整え、免疫力を高めることで、病気の発症や悪化を防ぐ役割を果たします。生活保護受給者の中には、生活習慣病のリスクが高い人も多いため、鍼灸による予防的なケアは病気の進行を防ぎ、健康寿命を延ばす助けとなるでしょう。
メリット: 健康状態が改善されることで、長期的に健康を維持し、生活保護からの脱却がしやすくなる可能性があります。
鍼灸治療を生活保護受給者の方へに提供する際には、患者の健康状態やメンタルヘルスへの配慮、経済的負担や保険適用の確認などに注意することを重視しています。また、医療機関や行政、福祉機関と連携し、適切な治療を提供できるようなサポート体制を整えています。主治医や福祉担当者、精神保健の専門家と協力しながら、患者に最適なケアを提供します。
健康状態と疾患の把握
複数の疾患や合併症: 生活保護受給者の多くは、慢性疾患や精神的問題を抱えている可能性が高いです。高血圧、糖尿病、心疾患などの生活習慣病がある場合、鍼灸治療を行う際のリスクや影響を十分に考慮する必要があります。
薬物治療との併用: 多くの受給者は薬物治療を受けており、特に抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)を服用している場合は、鍼灸の施術による出血リスクが増加します。鍼灸治療を行う前に、服用している薬について確認し、医師に相談することも重要です。
メンタルヘルスへの配慮
精神的ストレスの管理: 生活保護受給者の中には、経済的困難や社会的孤立から精神的に不安定な状態にある人が多いです。鍼灸治療はリラクゼーション効果が期待されますが、深刻な精神疾患(うつ病や不安障害など)を抱えている場合は、専門的なメンタルヘルスケアとの併用が必要です。
施術内容の説明と治療計画
治療内容の理解: 生活保護受給者は、鍼灸治療に対する理解が浅い場合が多いかもしれません。治療の目的、効果、必要な回数、期待できる結果について分かりやすく説明し、患者の同意と理解を得ることが重要です。
長期的なケアの計画: 鍼灸治療は一度の施術で劇的な効果を期待できるものではなく、継続的なケアが必要です。患者に対して、治療が長期間になる可能性があることを説明し、無理のない治療計画を立てることが求められます。
経済的負担と保険適用
医療扶助の確認: 生活保護受給者が鍼灸治療を受ける際、医療扶助の対象となるかを確認する必要があります。多くの場合、鍼灸治療は医師の同意書が必要です。治療の実施前に、手続きや費用負担の有無をしっかりと確認し、患者に不必要な負担をかけないようにすることが大切です。
安全と衛生管理
衛生環境の確保: 感染症のリスクを最小限に抑えるため、鍼の使い捨てや施術環境の清潔さを徹底することが必要です。免疫力が低い患者の場合、特に感染予防が重要です。
医療機関(主治医、専門医)
主治医との連携: 生活保護受給者が既に医療機関で治療を受けている場合、鍼灸治療がその治療と矛盾しないかを確認するために、主治医との連携が不可欠です。主治医が鍼灸の導入に同意するかどうか、必要な医師の同意書を取得するためにも、主治医との継続的なコミュニケーションが重要です。
専門医の紹介: 特定の疾患に対して鍼灸治療を行う場合、専門医との連携も必要です。例えば、精神疾患や神経疾患がある場合は、精神科医や神経科医と協力しながら治療を進めることが効果的なこともあります。
福祉事務所・生活保護担当者
生活保護担当者との連絡: 鍼灸治療を受ける際の費用負担や医療扶助に関する手続きについて、福祉事務所の担当者と連絡を取り、必要な書類や手続きがスムーズに進むようにサポートすることが重要です。また、患者の生活状況や健康状況を把握するためにも、福祉担当者との情報共有が役立ちます。
行政機関(市町村役場の福祉課など)
医療扶助の申請と承認: 鍼灸治療が生活保護受給者に対して医療扶助の対象となるためには、行政機関での申請や承認が必要です。市町村役場の福祉課や医療担当部署と連携し、必要な手続きや承認を確実に行うことが求められます。
精神保健福祉センター・カウンセラー
メンタルヘルスケアとの連携: 生活保護受給者の中には、うつ病や不安障害などの精神疾患を抱える人も多いです。鍼灸治療がメンタルヘルスの改善に役立つことが期待されますが、深刻な精神的問題を抱えている場合には、精神保健福祉センターやカウンセラー、精神科医と連携し、総合的なケアを提供することが重要です。
地域包括支援センター
高齢者のケアとの連携: 高齢の生活保護受給者に対しては、地域包括支援センターとの協力が重要です。鍼灸治療を含む健康管理が適切に行われるよう、地域包括ケアシステムの一環として、看護師や介護職員と情報を共有することで、患者の健康維持に役立つサポートが可能です。
生活保護受給者の方は働けないため、複数の疾患を有する割合が高いのです。また精神疾患を有していたり、多剤服用傾向もデータから見て取れます。鍼灸治療を通し痛みの軽減や社会復帰のお手伝いをすることもできますし医療費削減・医療依存のお手伝いにも貢献できるかもしれません。(個人的には生活保護受給者の方への鍼灸治療はどのように貢献できているか?無駄ではないか?などのデータをとって学会などで発表していくべきだと考えています。)
全力でサポートしますのでお困りの方はまずはご相談ください。
人類学、社会学、哲学などの分野を人文科学と呼びます。一見、医療には関係なさそうな話ですが鍼灸臨床を行う上でとても役に立つので私はこの分野が好きで勉強してきました。医療に関する人類学や社会学は「医療人類学」、「医療社会学」などと呼ばれ日本の大学でも研究されています。以下にその特徴や、どのように鍼灸治療に生かすことが出来るのかについて書きます。
医療人類学(いりょうじんるいがく)は、人類学の一分野であり、医療や健康、病気、治療、そしてそれらに関連する文化的・社会的な側面を研究する学問です。この学問では、異なる文化や社会における健康観、病気の理解、治療法、医療システムの成り立ちやその役割を探求します。医療人類学の主要な関心領域は以下の通りです。
病気や健康の文化的理解: 病気や健康に対する認識は文化によって異なります。ある社会では病気がスピリチュアルな問題と考えられることもあれば、別の社会では生物学的な問題として捉えられます。医療人類学では、これらの違いを分析し、それが医療行為や治療にどのように影響を与えるかを探ります。
伝統的治療法と現代医療: 多くの社会では、伝統的な治療法と西洋医学が共存しており、それぞれに異なる信頼や価値が置かれています。医療人類学では、現代医学と伝統的治療法の相互関係や、患者がどの治療法を選ぶのか、その理由を探求します。
医療システムと社会的構造: 医療システムは社会の中で特定の役割を果たしており、その構造は政治、経済、ジェンダー、階級などの社会的要因に大きく影響されます。医療人類学では、医療アクセスの不平等や、貧困層やマイノリティが直面する医療の障壁なども研究対象とします。
医療のグローバル化: グローバル化に伴い、医療技術や知識、医療サービスの提供が国際的に広がっています。これにより、医療資源の流れや、国際的な医療援助の影響についても分析されます。
医療人類学は、生物学的な観点だけでなく、文化的・社会的な視点から医療を理解することで、現代の医療が直面する複雑な問題をより総合的に解明しようとする学問です。
医療社会学(いりょうしゃかいがく)は、社会学の一分野で、医療や健康、病気、医療制度、そしてそれらに関連する社会的側面を研究する学問です。医療社会学は、医療を個人や社会の枠組みの中で分析し、健康や医療における不平等、制度の役割、医療従事者と患者の関係など、さまざまな社会的要因が医療にどのような影響を与えるかを探求します。医療人類学と重なるテーマもあるのですが主要なテーマは以下の通りです。
健康と病気の社会的要因: 健康や病気は、個人のライフスタイルだけでなく、社会的要因(経済的地位、教育水準、居住地域、環境など)によっても影響されます。医療社会学では、社会的・経済的な背景が健康状態にどのように関与しているかを分析します。
医療制度と政策の分析: 医療制度や政策は、社会全体にどのような影響を与えているかが重要な研究対象です。特に、医療アクセスの不平等や、医療費の負担、医療保険制度の運営とその効果、医療制度の変化が健康格差に与える影響などが探究されます。
医療従事者と患者の関係: 医療現場における医療従事者(医師、看護師、薬剤師など)と患者の関係は、権力の不均衡、コミュニケーションの質、患者の権利、インフォームド・コンセント(説明と同意)など、多くの社会的な要素に影響されます。医療社会学では、こうした関係性が治療の効果や患者の満足度にどう影響するかを研究します。
医療技術の社会的影響: 医療技術の進歩は、診断・治療の改善をもたらす一方で、倫理的問題や社会的格差を生むこともあります。たとえば、人工授精や遺伝子治療、移植医療などの技術は、新しい社会的・倫理的な課題を提起します。これらの技術の使用や普及に対する社会の反応も分析の対象です。
健康行動とライフスタイル: 健康的な生活を送るための行動(運動、食事、禁煙など)は、個人の価値観や社会的圧力、環境に左右されます。医療社会学では、なぜ人々が特定の健康行動を取るのか、どのような社会的要因が健康的な行動を促進または妨げるのかを探ります。
健康と医療におけるジェンダーや人種、階級の役割: 医療の提供や健康状態におけるジェンダー、人種、階級の影響も重要なテーマです。たとえば、女性が経験する特有の健康問題や、マイノリティが医療システムで直面する不平等についても研究します。
医療社会学は、医療が単なる科学や技術の問題ではなく、社会の中でどのように運営され、どのように影響を受け、変化していくかを理解するための社会学的なアプローチを提供します。これにより、医療の不平等や健康の格差といった現代社会の問題を総合的に解明し、解決策を模索することができます。
医療哲学(いりょうてつがく)は、医療に関連する倫理的・哲学的な問題を探求する学問分野です。医療の現場で生じる価値観や判断、倫理的な課題を哲学的に考察し、医療行為や医療制度が持つ意味や目的について深く理解しようとするものです。医療哲学は、生命、健康、病気、死、苦しみといった根本的な人間の存在にかかわる問題を扱いながら、医療の実践に関する倫理的な指針や理論的枠組みを提供します。医療哲学の主なテーマは以下の通りです。
生命と死の定義: 「生命とは何か」「死とは何か」という問いは、医療哲学の中心的な問題です。特に、脳死や植物状態といった状態における生命の定義、延命治療の限界など、生命の終わりに関する哲学的議論は重要なテーマとなっています。
医療倫理: 医療哲学の中でも、医療倫理は大きな位置を占めています。例えば、医師と患者の間でのインフォームド・コンセント(説明と同意)、患者の自己決定権、医療の正義(公平な医療資源の分配)、そして医療従事者の倫理的義務といったテーマが議論されます。臓器移植や遺伝子操作、終末期医療、安楽死といったトピックにおいて、医療倫理の問題は特に顕著です。
患者の権利と自己決定: 患者の尊厳と権利をどのように尊重するかは、医療哲学の重要な議論の一つです。患者が自身の治療に関してどこまで自己決定権を持つべきか、またその権利をどのように守るべきかについての議論が深められます。特に、意識のない患者や判断能力のない患者の場合、誰がどのように意思決定を行うべきかという問題が提起されます。
公正と公平の問題: 医療資源の分配やアクセスに関する倫理的問題も医療哲学の重要なテーマです。たとえば、限られた医療資源をどのように配分するべきか、どのようにして全ての人々に公正で平等な医療サービスを提供するかという問題があります。この分野では、医療の不平等や格差の問題、貧困層やマイノリティへの医療アクセスの不平等が扱われます。
医療技術の倫理的影響: 医療技術の進歩に伴う倫理的課題も医療哲学の重要な研究分野です。例えば、人工知能(AI)や遺伝子編集、クローン技術、生命維持装置、人工授精など、新しい技術がもたらす倫理的問題についての議論が行われます。これらの技術が医療にどのような影響を与え、どのような倫理的ガイドラインが必要かが考察されます。
苦しみとケア: 病気や痛み、苦しみに対する人間の体験をどのように理解し、それに対してどのように対応するべきかも医療哲学の関心事項です。治療の目的は単に病気を治すことだけでなく、苦しみを緩和し、患者の全人的なケアを行うことだという視点から、ケアの倫理について議論されます。
健康の概念: 「健康とは何か」という問いに対して、単なる病気の不在ではなく、身体的、精神的、社会的な福祉の状態を含めた広い概念として健康を定義し直す試みが行われています。医療哲学では、こうした健康の概念について哲学的な分析を行います。
医療哲学は、医療従事者が日々直面する倫理的問題に対する理論的な枠組みや指針を提供し、医療現場における意思決定をより深く理解し、支える役割を果たします。また、医療の実践における人間の尊厳や正義、公正さを守るための理論的基盤を形成します。哲学は医療の実践に直接関与しながらも、医療行為の背後にある倫理的・哲学的な問題を深く掘り下げ、医療のあり方やその目的についての洞察を提供する学問です。
鍼灸治療の現場で、医療人類学、医療社会学、医療哲学の知見を活かす方法は多様で、患者の健康や治療に対するアプローチをより深く、総合的に理解し、患者に寄り添った治療を提供することができます。それぞれの分野の知見をどのように生かすかを見ていきましょう。
医療人類学は、文化的な背景や社会的な文脈の中で健康や病気を捉える視点を提供します。鍼灸治療は、伝統的な医療として多くの文化で用いられ、その価値観や実践方法も文化によって異なります。この知見を生かすことで、患者の背景や信念を尊重した治療が可能になります。
患者の文化的背景の理解: 鍼灸は伝統的に中国や日本などで用いられていますが、患者がどの文化的背景から来たのかによって、鍼灸に対する期待や信念が異なることがあります。例えば、ある文化では鍼灸が病気のスピリチュアルな側面と深く結びついているかもしれませんし、別の文化では西洋医学との補完的な治療法として捉えられているかもしれません。患者の信念や期待を理解することで、治療の提供方法を柔軟に調整することができます。
伝統医療と現代医療の橋渡し: 鍼灸が伝統的な治療法である一方で、現代医学とも共存する場面が増えています。医療人類学の知見を生かして、患者がどのような治療法を選んでいるのか、現代医療と伝統医療をどのように組み合わせているのかを理解し、個々の患者に合わせた統合的な治療計画を立てることができます。
医療社会学は、医療の提供や健康における社会的な不平等や構造を分析する学問です。鍼灸治療でも、社会的な要因が患者の治療の選択や健康状態に影響を与えるため、これらの要因を理解し対応することが重要です。
社会的・経済的格差への配慮: 経済的な状況、教育水準、居住地などによって、患者が鍼灸治療を受けられる機会が制限されることがあります。医療社会学の知見を生かして、こうした格差を考慮し、経済的に困難な患者にもアクセス可能な治療プランを提供することや、必要に応じてコミュニティでのケアや保険適用の機会を拡大するための政策的提言を行うことが考えられます。
患者と治療者の関係性の構築: 鍼灸治療では、治療者と患者の信頼関係が治療効果に大きな影響を与えます。医療社会学の知見を活かし、患者がどのような期待や不安を抱えているか、また治療者とのコミュニケーションがどのように治療成果に影響するかを理解することで、より良い関係性を築き、治療の質を向上させることができます。
医療哲学は、医療行為における倫理的・哲学的な問いを探求し、治療の目的や価値について考える学問です。鍼灸治療においても、患者の権利や自己決定、治療の意義を哲学的に考えることで、より倫理的で意義のある治療を提供できます。
インフォームド・コンセントと自己決定: 鍼灸治療においても、患者が自身の治療に関して十分な説明を受け、自ら意思決定できることが重要です。医療哲学の視点を取り入れることで、鍼灸の治療内容やリスク、期待される効果について、患者が理解した上で意思決定できるようサポートし、患者の自己決定権を尊重する治療を行うことができます。
治療の目的と全人的ケア: 医療哲学の知見を生かすことで、鍼灸治療が単に病気の治療だけでなく、患者の生活の質や全人的なケアにどのように貢献できるかを考えることができます。痛みや不調を和らげることだけでなく、患者の精神的、社会的な幸福も重視する「ホリスティックなケア」を提供するための哲学的な基盤が得られます。
終末期医療や緩和ケアにおける鍼灸: 終末期医療や緩和ケアの場面で、鍼灸治療が痛みや苦しみを和らげ、患者の尊厳を保つために役立つことがあります。医療哲学の視点から、こうした状況で鍼灸がどのように倫理的に利用されるべきか、またどのように患者の尊厳を守るかを考慮することができます。また終末期医療だけではなく慢性疾患や障害を持つ方へのアプローチにもその知見が役に立つでしょう。
鍼灸治療の現場で、医療人類学、医療社会学、医療哲学の知見を統合的に活用することで、患者個人の文化的背景や社会的状況、倫理的な視点を考慮しつつ、より包括的で人間中心のケアを提供できます。
たとえば、ある患者がある治療に強い信念を持っている場合(ワクチンが怖い、鍼や漢方は素晴らしいなど)、その文化的背景(医療人類学的視点)を尊重しながら、社会的な状況やアクセスの問題(医療社会学的視点)を配慮し、患者の自己決定権と治療の倫理性(医療哲学的視点)を守りつつ治療を提供することができます。このようなアプローチによって、鍼灸治療は単なる技術的な医療行為にとどまらず、患者の全体的な幸福を支える重要な役割を果たすことができます。
脳血管障害の後遺症には鍼灸治療が有効です。それらについてまとめていきます。
脳血管障害とは、脳の血管に関連する疾患全般を指す言葉であり、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)もその一部です。これらの障害は、脳に酸素や栄養が届かなくなり、脳機能に大きな影響を与えるため、早期の予防と対応が極めて重要です。脳血管障害にはいくつかの主要なタイプがあります。それぞれの障害は、脳にどのように影響を与えるかによって異なります。
脳梗塞(のうこうそく):脳梗塞は、脳の血管が詰まり、血流が途絶えてしまう状態です。このため、その部分の脳組織に酸素や栄養が届かなくなり、脳細胞が死んでしまいます。主な原因は、動脈硬化や血栓(血の塊)が血管を塞ぐことが多いです。
脳出血(のうしゅっけつ):脳出血は、脳内の血管が破れて出血する状態です。出血によって脳組織が圧迫され、脳機能に障害をきたします。主な原因は高血圧で、特に脳の細い血管が破れることが多いです。糖尿病などの病気も大きなリスクになります。
くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ):くも膜下出血は、脳の表面を覆っている「くも膜」という膜の下に出血が起こる状態です。通常、脳動脈瘤(血管の一部が膨らむ)が破裂することが原因です。このタイプの出血は、突然の激しい頭痛を伴い、重篤な結果を引き起こすことが多いです。
一過性脳虚血発作(TIA: Transient Ischemic Attack):TIAは、一時的に脳の血流が低下し、短時間だけ脳卒中に似た症状が現れる状態です。通常、症状は24時間以内に回復しますが、脳卒中の前兆として見られることが多く、早期の対応が重要です。
脳血管障害の症状は、障害される脳の部位や範囲によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
片側の手足や顔の麻痺やしびれ:片麻痺として片側の手足が動かしにくくなります。
言語障害:言葉が出にくくなったり、言葉を理解するのが難しくなる(失語症)。
視覚障害:視野の一部が見えなくなる、物が二重に見えるなど。
バランスの喪失や歩行困難:立ち上がれない、歩くのが難しくなる。
突然の激しい頭痛:特にくも膜下出血では、急な強い頭痛が特徴的です。
意識障害:意識が混濁したり、昏睡状態に陥ることがあります。
高血圧の管理や糖尿病の治療、コレステロール値のコントロールが重要です。定期的な運動や健康的な食生活、禁煙も予防に役立ちます。発症した場合、早期の診断と治療が重要です。脳梗塞の場合、血栓を溶かす薬や、血流を回復させる手術が行われることがあります。リハビリテーションも、後遺症の回復に大きな役割を果たします。以下のリスク要因が脳血管障害の発症に大きく関与しています。
高血圧:血管にかかる圧力が強くなることで、血管が損傷しやすくなります。
糖尿病:血管を傷つけやすく、脳梗塞のリスクを高めます。
高コレステロール:血管内に脂肪がたまり、動脈硬化を引き起こします。
喫煙:血管にダメージを与え、動脈硬化や血栓形成のリスクを高めます。
不整脈や心臓病:特に心房細動は、血栓ができやすく、これが脳に到達すると脳梗塞を引き起こすことがあります。
その他:運動不足や肥満、過剰なアルコール摂取などの生活習慣もリスク要因となります。
脳卒中後のリハビリテーションは、発症から180日間(6ヶ月間)が保険適用で行える標準的な期間です。入院リハビリ、外来リハビリともに、この期間が保険適用の基準となります。6ヶ月以降は、介護保険を活用したリハビリが主になりますが、患者の状態に応じてリハビリを続けることができます。(医療保険や自費での鍼灸治療も加えることをご検討ください。)
鍼灸は、伝統的な東洋医学の一部であり、経絡やツボを刺激することで、体の自然な治癒力を高める効果が期待されています。脳血管障害による後遺症は、運動機能や感覚機能、言語機能などの幅広い領域に影響を与えるため、リハビリテーションと併用して鍼灸を行うことで、症状の改善やQOL(生活の質)の向上が期待されます。比較的安全な治療法とされていますが、医師や鍼灸師との連携が重要です。脳血管障害後の状態や他の治療との相互作用を考慮し、鍼灸治療が適しているかどうかを専門家と相談して進めることが大切です。
(1)筋緊張の緩和
脳卒中後の後遺症として、片麻痺や筋肉のこわばり(痙縮)がよく見られます。鍼灸は、筋肉の緊張を和らげ、リラックスさせる効果があります。特に、麻痺が残っている手足の硬直や痛みを軽減することができ、リハビリテーションでの動作の改善をサポートします。
(2)血流の改善
鍼を刺すことで、局所的に血流が改善され、患部の酸素や栄養の供給が促進されます。これは、脳血管障害によるダメージを受けた脳や神経の修復過程をサポートする効果が期待されます。また、血液循環が改善されることで、疲労感やだるさを軽減することができます。
(3)痛みの軽減
脳血管障害後に、肩や関節に痛みを感じることがあります。鍼灸治療は、鎮痛作用があり、痛みを緩和する効果が期待されます。特に、片麻痺の側で感じる肩の痛みや腰痛などの改善に役立ちます。
(4)感覚機能の改善
脳血管障害後に感覚麻痺(しびれや感覚の鈍さ)が残る場合があります。鍼灸は、神経伝達を活性化させ、感覚の回復を助ける効果があるとされています。特に、触覚や痛覚の回復を促すことが期待されます。
(5)自律神経の調整
脳血管障害後、体内の自律神経のバランスが乱れることがあります。これにより、ストレス、睡眠障害、消化不良、血圧の変動などが発生することがあります。鍼灸は、自律神経のバランスを整え、全身の調和を促進する作用があります。これにより、心身の安定やリラックス効果が得られることが期待されます。
(6)精神的なリラクゼーション
鍼灸治療は、身体だけでなく、精神的なストレスや不安を軽減する効果もあります。脳血管障害後の不安感や抑うつ状態を改善するために、鍼灸が心のバランスを整えるサポートになることが報告されています。
(7)生活の質(QOL)の向上
脳血管障害後の後遺症によって日常生活が制限されると、患者の生活の質が低下することがあります。鍼灸治療によって、運動機能や痛み、疲労感が軽減されると、日常生活の活動がよりスムーズに行えるようになり、生活の質が向上することが期待できます。
田無北口鍼灸院では出歩けない方への出張施術も行っています。
・車いすで生活をしている。
・要介護認定を受けている。
・精神疾患があり出歩けない。
・現在治療中の病気がある。
など
理由は様々ですが、出張により施術を行うことで痛みや自律神経の症状改善が見られ生活の質が上がることがあります。
田無北口鍼灸院では鍼灸施術に加え以下のようなサービスも無料で行いますのでお困りの方は遠慮なくご相談下さい。
第三者から見ても分かる施術記録(カルテ)を残しているのでいつでも報告書を作成することが出来ます。必要があればドクターや看護師さんへ毎月報告書を書きますので遠慮なくご相談ください。
出張による鍼灸を依頼する方はすでに訪問看護や訪問診療(医師の診察)を受けていることがあります。持病のためクリニックに通院していることがあります。「鍼灸治療は東洋医学的な治療体系のため何をやっているかよくわからない」というご意見を他の医療者からも聞くことがありますが、弊所では現代医学的な説明・言葉でも積極的に情報共有や連携を行います。
ケアマネージャーさんを中心としたサービス担当者会議などへも出席可能です。また福祉分野との連携が必要な場合は個人情報に配慮したうえで行政への報告や相談も速やかに行います。
一人暮らしの方や体調不良でメンタルが不調な方への訪問見守りサービスも行います。夜間の訪問はできませんが、依頼があればなるべく早急に駆けつけます。お電話での相談にも応じます。*しかし、緊急時は救急車を呼ぶようにお伝えします。一例を挙げますと一人暮らしの高齢者の方が自宅で転倒し「痛みが強いので今すぐ出張してほしい。」との依頼が過去にありましたが、発生状況や痛みの度合いをお電話で聞いたところ圧迫骨折の疑いがあったためすぐに病院へ行くよう勧めました。
また鍼灸治療が可能かどうか?を見るために血圧計や体温計などを持参しバイタルチェックを行うこともできます。介護施設等ですでに行っている場合は重複するために実施しませんが、ご希望の方は遠慮なくご相談ください。
高齢者や障害がある方は様々な病気で悩んでいます。鍼灸治療をやったほうがいいと思われる持病にはたくさんの疾患が存在しますが、以下にいくつか例を挙げます。他にも様々な疾患に対して有効ですのでお悩みの病気がある方は事前にご相談ください。
1,脳卒中・脳血管障害の後遺症
脳梗塞や脳出血の後遺症は筋緊張などが発生し生活の質(QOL)低下があるため症状を緩和できる鍼灸がおすすめできます。
2,脊髄損傷
程度にもよりますが脊髄損傷になるとむくみや痛み、自律神経障害(寝れない、汗がかけない等)に悩まされるため鍼灸治療が有効です。
3,能瀬麻痺
筋緊張が生じるため緩和目的の施術をすることが有効です。
4,ALS
痛みや自律神経障害だけでなく嚥下障害(機能低下)にも鍼灸治療が有効です。