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めまい・耳鳴りに対する鍼灸治療の有効性。適切な病院へのかかり方。

めまいや耳鳴りは、日常生活に大きな支障をきたす症状です。仕事や家庭での活動が制限され、精神的にも疲れてしまうことがあります。病院での薬物治療がうまくいかず、改善が見込めない場合、鍼灸治療が有効な選択肢となることがあります。病院(耳鼻科・脳神経内科等)での治療や薬ではめまいや耳鳴りの症状が解決しない理由はいくつかあります。

原因の多様性: めまいや耳鳴りは、さまざまな原因によって引き起こされます。例えば、内耳の問題(メニエール病や前庭神経炎)、血圧や循環の問題、ストレスや精神的な問題、耳の感染症、さらには耳の中の物理的な障害などが原因となる場合があります。薬は一部の原因には効果がありますが、原因が異なると薬だけでは十分に改善しないことがあります。

症状の慢性化: もしめまいや耳鳴りが慢性的になっている場合、薬物治療だけでは効果が限定的なことが多いです。薬は一時的な症状の緩和に役立つことがあっても、根本的な原因の解決には時間がかかることもあります。

効果が個人差に依存: 薬が全ての人に効果的であるとは限りません。薬の効果は個人の体質や病状に依存するため、ある人には効いても、別の人には効かないことがあります。

診断が不確かな場合: めまいや耳鳴りの症状が複数の原因が絡んでいることも多く、適切な診断がつかないと、最も効果的な治療が行われない可能性があります。例えば、耳の問題だけでなく、脳や神経系、心身のストレスなど他の要因も考慮する必要がある場合があります。

非薬物療法の重要性: めまいや耳鳴りには、薬物治療だけでなく、理学療法、ストレス管理、生活習慣の改善など非薬物的なアプローチが有効な場合もあります。薬だけでは解決しにくい場合には、総合的な治療が必要になることもあります。

このような理由で、耳鼻科で処方される薬が必ずしもめまいや耳鳴りを解決しないことがあります。しかし病院の薬が悪い、効果がないという意味ではありません。専門医による精密な診断に加え、必要に応じた複合的な治療が重要だということです。本記事では、めまいや耳鳴りに対する鍼灸治療の有効性と、それを選択するための根拠、さらには病院との適切な連携方法について詳しく解説します。

1. めまい・耳鳴りの症状と原因

1.1 めまい・耳鳴りの種類と特徴

めまいや耳鳴りは、非常に多くの原因に起因する症状です。めまいには、回転性のめまいや、立ち上がった時に感じるふらつき、視界が揺れるような感覚が含まれます。耳鳴りは、耳の中に響く音の種類が人によって異なり、例えば、ピーピー、ザーザー、ワーという高音や低音、さらには鼓動のような音がすることもあります。

1.2 めまい・耳鳴りの原因

これらの症状が発生する原因は、内耳の異常、神経系の問題、血液の循環不良、あるいは精神的なストレスなど様々です。例えば、内耳の障害によるメニエール病や突発性難聴、神経系の異常が原因となることがあります。また、血圧の低下や過労、ストレスが影響することも少なくありません。

1.3 生活に与える影響

めまいや耳鳴りが長期間続くと、日常生活に深刻な影響を及ぼします。仕事や家事ができなくなったり、外出することが困難になったりすることが多いため、生活の質が著しく低下します。さらに、精神的な不安やストレスも高まり、症状が悪化することもあります。

2. 鍼灸治療の基本的な考え方

2.1 中医学の理論と鍼灸治療

鍼灸治療は中医学に基づく治療法であり、体内の「気」「血」「津液」のバランスを整えることを目的としています。中医学では、健康はこれらのバランスが適切に保たれているときに維持されると考えられています。鍼灸は、体の特定のツボを刺激することで、このバランスを整え、身体の自然治癒力を引き出す役割を果たします。

2.2 鍼灸の効果:気・血・津液のバランス

鍼灸治療は、気の流れを整えることによって、体全体のエネルギーを調整します。血液循環や気の流れを改善することで、めまいや耳鳴りの症状を軽減することができます。また、体の冷えやストレスなどの影響を緩和し、内耳や聴覚神経への血流を改善する効果も期待できます。

2.3 鍼灸治療の方法

鍼灸治療は、患者さんの症状に合わせて、身体の特定のツボを刺激することで、体のバランスを調整します。鍼の刺激を通じて、血行を促進し、気の滞りを解消することで、症状の緩和を図ります。

3. 鍼灸治療が有効である根拠

3.1 研究論文に基づく鍼灸の効果

近年では、鍼灸治療に関する多くの研究が行われ、その効果が証明されています。例えば、突発性難聴やメニエール病に対する鍼灸治療が、聴力回復や耳鳴りの症状改善に有効であることが示された臨床試験があります。これらの研究は、鍼灸治療が単なるプラセボ効果に留まらないことを裏付けています。

3.2 鍼灸の臨床試験と実績

実際の臨床試験では、鍼灸治療を受けた患者が、症状の改善を実感したという報告が多くあります。特に、慢性の耳鳴りやめまいに対しては、症状の軽減や改善が見られることが確認されています。以下に一例を挙げます。

・ Efficacy of Acupuncture as a Treatment for Tinnitus A Systematic Review

・ The effects of acupuncture on the inner ear originated tinnitus

・ Effects of acupuncture, cervical manipulation and NSAID therapy on dizziness and impaired head repositioning of suspected cervical origin: a pilot study

3.3 鍼灸治療が有効なケース

鍼灸治療は、血行不良や自律神経の乱れ、精神的なストレスが原因である場合に特に効果を発揮します。例えば、肝鬱(かんうつ)や血虚(けっきょ)など、中医学的な診断に基づいて治療を行うことが有効です。

4. 鍼灸治療を選ぶメリットと注意点

4.1 鍼灸治療のメリット

鍼灸治療の最大のメリットは、副作用が少ないことです。薬を使用しないため、薬による副作用や薬が増えることで起こる問題が発生しません。また、リラックス効果が得られるため、ストレスの軽減にも効果があります。

4.2 鍼灸治療に対する不安とその解消法

鍼灸治療に対して不安を感じる患者さんも多いかもしれません。しかし、鍼は非常に細く、痛みを感じることはほとんどありません。治療を受ける際には、信頼できる鍼灸師を選び、治療の流れや期待される効果についてしっかりと説明を受けることが大切です。

5. めまいや耳鳴りに対しての鍼灸治療のアプローチ

5.1 鍼灸治療の実際のアプローチ方法

鍼灸治療は、患者さんの症状に合わせた個別の治療が行われます。例えば、肝鬱や血虚が原因の場合は、太衝(たいしょう)や期門(きもん)、三陰交(さんいんこう)など、血行を促進し、気の流れを改善するツボが使われます。

5.2 有効なツボや治療方法

有効なツボとしては、太衝(たいしょう)や内関(ないかん)、百会(ひゃくえ)などが挙げられます。これらのツボを使用することで、めまいや耳鳴りの症状を軽減することができます。

5.3 治療の回数と期待できる効果

鍼灸治療は、数回の治療で効果が現れることもありますが、症状が慢性化している場合は、継続的な治療が必要です。通常、週に1~2回の頻度で治療を行い、数週間から数ヶ月の間に症状の改善が期待できます。

6. 適切な病院へのかかり方と鍼灸治療との併用

6.1 どのような症状が現れた場合に病院へ行くべきか

急激なめまいや耳鳴りが現れた場合、または症状が長期間続く場合は、病院での診察を受けることが重要です。特に、突発的な耳鳴りやめまいは、脳の血流障害や内耳の疾患が原因である可能性もあるため、早期に専門医に相談することをお勧めします。また脳や血管の器質的な問題であった場合には専門病院での治療を優先させた方がいい場合も多いです。例えば頸部の動脈乖離でもめまいが起こることがあります。まずは器質的な問題がないか?緊急性はないか?医師への確認が重要です。

6.2 医師との連携の重要性

鍼灸治療は補完的な治療法であり、病院での診断や治療と並行して行うことが重要です。鍼灸治療を受ける際には、必ず医師と連携し、治療の進行状況を共有するようにしましょう。

6.3 鍼灸治療と医療機関との協力

病院での治療と鍼灸治療を併用することで、より効果的に症状の改善が期待できます。病院での治療が進行していく中で、鍼灸治療は症状の緩和や身体全体のバランスを整える役割を果たします。

6.4 病院での検査と鍼灸治療のタイミング

病院での診断を受けた後、鍼灸治療を併用するタイミングについては、医師のアドバイスを受けることも重要です。症状が軽度であれば、早期に鍼灸治療を取り入れることで、症状の悪化を防ぐことができます。病院・鍼灸院が協力して治療に当たることが理想的です。

7. まとめ

めまいや耳鳴りに悩む方々にとって、鍼灸治療は有効な選択肢となり得ます。病院での診断と治療を受けつつ、鍼灸治療を併用することで、症状の軽減や改善が期待できます。鍼灸治療は自然治癒力を引き出し、身体全体のバランスを整えるため、より快適な生活を取り戻す手助けになります。症状に合った治療を受け、めまいや耳鳴りの改善を目指しましょう。

睡眠と鍼灸治療について

睡眠の質が悪いとは?

睡眠の質が悪いとは、下記のような状態を指します。これは単に睡眠時間が短いだけではなく、睡眠の深さや休息感などが関係します。

不完全な睡眠の例

入眠障害:寝つきが悪く、寝るまでに30分以上かかる。

中途覚醒:夜中に何度も目が覚める。

早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、再び寝れない。

非回復性睡眠:十分な時間寝たはずなのに、疲れが取れていないと感じる。

日中の眠気が激しい:夜間の睡眠不足のせいで、日中に注意力や集中力が低下する。

これらは、長期化すると不完全な睡眠状態、例えば不眠症や睡眠悪化症候群につながることもあります。またこれらの問題は自覚症状と実際の問題に差があるというデータもあります心配な場合まずは医師等に相談するとよいでしょう。検査の結果、不眠症の原因が器質的な問題(例えばパーキンソン病、甲状腺疾患、脳腫瘍など)であることもあります。逆に医学的な問題がないこともありますがそれでも症状が改善しないということもあります。その場合は鍼灸治療が有効なことも多いです。

睡眠の質の評価方法と診断基準

少し専門的ですが以下に睡眠の質と医学的評価方法の診断基準を挙げます。

1. 主観的な評価

ピッツバーグ睡眠品質指数(Pittsburgh Sleep Quality Index; PSQI)

過去1か月の睡眠の質を7つの領域(主観的な睡眠の質、睡眠時間、睡眠効率、睡眠障害、睡眠薬の使用、日中の機能障害など)で評価する指標。
スコアが5点以上で「睡眠の質が悪い」とされます。

2. 客観的な評価

ポリソムノグラフィー(PSG)

脳波、心拍数、筋電図、眼球運動などを測定し、睡眠の構造(浅い眠り、深い眠り、レム睡眠)を評価します。

アクチグラフ

リストバンド型の装置を装着して、睡眠と覚醒のリズムを長期間測定する方法。

3. 国際診断基準

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)

不眠症の診断基準として以下を挙げています。①入眠、維持、早朝覚醒のいずれかの障害。②日中の機能障害(疲労感、集中力の低下、気分障害など)が生じている。③睡眠不足が少なくとも3か月以上、週3回以上続いている。

ICSD-3(国際睡眠障害分類第3版)

睡眠障害を詳細に分類(不眠症、過眠症、睡眠呼吸障害、サーカディアンリズム睡眠障害など)。

鍼灸治療が睡眠に与える影響

鍼灸治療は、古くからツボを刺激することで自然治癒力を高める手法です。睡眠に与える主要な影響は下記の通りです。

1. 自律神経の安定作用

鍼灸は自律神経(交感神経・副交感神経)の安定に有効です。自律神経が安定すると、睡眠リズムの正常化につながります。

2. リラックス効果

鍼灸によって、体の精神的なストレスが減少します。これが入眠を容易にし、睡眠の質を向上させる効果があります。

3. 血流改善とパターンの正常化

鍼灸は血流を改善し、睡眠時の身体回復活動を支援します。これにより、必要な深い睡眠が得られます。

4. ホルモンバランスの調整

ストレスホルモンの分泌を抑え、メラトニンやセロトニンの分泌を促進することで、自然な睡眠をサポートします。

鍼灸治療が不眠症に有効だとされた研究の例

国内でも海外でも研究はたくさんありますが鍼灸治療が不眠症に有効とされた研究の例を3つほど紹介します。

1,「不眠症に対する鍼治療の効果:系統的レビューとメタアナリシス」

概要: この研究では、ランダム化比較試験(RCT)を含む複数の研究を分析し、鍼治療が不眠症の改善に有効である可能性が示されました。

出典: Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2009年

2,「不眠症患者に対する鍼治療の効果:ランダム化プラセボ対照試験」

概要: このRCTでは、鍼治療を受けた不眠症患者がプラセボ群と比較して睡眠の質が有意に改善されたことが報告されました。

出典: Sleep Medicine, 2013年

3,「慢性不眠症に対する鍼治療の効果:無作為化対照試験の系統的レビューとメタアナリシス」

概要: この研究では、複数の無作為化対照試験を分析し、鍼治療が慢性不眠症の症状を緩和する効果があることが示されました。

出典: BMC Complementary and Alternative Medicine, 2016年

東洋医学(中医学)での不眠症の捉え方は?

東洋医学(中医学)では、不眠症は身体のエネルギー(気)、血液、陰陽のバランスの乱れによって引き起こされる現象と考えられています。この視点から、不眠症は以下のようなパターンで説明され、治療方針が決定されます。

気血不足

特徴: 気や血が不足して心を養うことができず、不安感や多夢、疲労感が現れる。
原因: 過労や栄養不足など。
治療方針: 気と血を補い、心を安定させる。

肝火上炎(肝火の亢進)

特徴: 怒りっぽく、頭が熱っぽい、目が赤い、寝付きが悪い。
原因: 精神的なストレスや飲酒、不規則な生活習慣。
治療方針: 肝火を鎮め、心を落ち着かせる。

腎陰虚

特徴: 熱感やのぼせ、夜間の頻尿、浅い眠り。
原因: 加齢や慢性的な疲労、睡眠不足。
治療方針: 腎陰を補い、体内のバランスを整える。

脾胃の不調

特徴: 食後に寝付けない、胃の不快感や膨満感がある。
原因: 食べ過ぎや不規則な食事。
治療方針: 脾胃を調え、気血の流れを良くする。

心腎不交

特徴: 心と腎のエネルギーが調和せず、動悸や不安、頻繁な覚醒。
原因: 長期的なストレスや感情の乱れ。
治療方針: 心と腎を調和させる。

不眠症に効果的な主なツボ

神門(しんもん)

位置: 手首の内側、小指側の凹み(手根骨の下)。
効果: 心を落ち着かせ、入眠を助ける。

内関(ないかん)

位置: 前腕の内側、手首の横ジワから指3本分上。
効果: 精神の安定、ストレス緩和、消化器の不調を改善。

百会(ひゃくえ)

位置: 頭頂部、左右の耳を結んだ線と頭の中央を結んだ線の交点。
効果: 気を巡らせ、リラックス効果を高める。

安眠(あんみん)

位置: 耳の後ろの突起の下方、首のくぼみの少し後ろ。
効果: 心を静め、不安や不眠を改善する。

三陰交(さんいんこう)

位置: 内くるぶしから指4本分上の、すねの内側。
効果: 気血を補い、全身のバランスを整える。

足三里(あしさんり)

位置: 膝の外側、膝蓋骨の下端から指4本分下。
効果: 脾胃を強化し、全身のエネルギーを高める。

太谿(たいけい)

位置: 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ。
効果: 腎を補い、陰陽のバランスを調える。

鍼灸治療でのアプローチ

東洋医学(中医学)では、不眠症の治療は個々の体質や症状に応じてツボを選び、鍼や灸を用いてバランスを調整します。また、患者の生活習慣や食事、ストレス管理にもアドバイスを行い、総合的な改善を目指します。不眠症でお悩みの方は、鍼灸を取り入れることで、自然で持続的な改善が期待できます。専門の鍼灸師に相談することで、適切な治療が受けられるでしょう。また睡眠薬が合わない、あまり薬を飲みたくない、薬以外の選択肢を試したい、これ以上薬を増やしたくない等の理由で鍼灸治療を希望する方もいらっしゃいます。その場合にも鍼灸治療が有効なアプローチとなる可能性が高いです。(どこの病院に相談してよいかわからない、などお困りの方はまずは田無北口鍼灸院に相談していただいても結構です。)

鍼灸治療の効果を測定するには

睡眠の質を数値化することは難しいように思えますが、現代の技術を活用することで効果をより明確に把握することができます。

1. スマートデバイスの活用

スマートウォッチやアプリを使って、鍼灸治療前後の睡眠パターンを記録することができます。特に睡眠時間(トータル、深い睡眠)、入眠時間や覚醒時間、夜間の覚醒回数のデータを知ることができますが診断のために利用するものではないため限界はあります。また鍼灸治療だけが睡眠に影響を与えるものではありません。あくまでも目安にとどめ異常を感じたら医師に相談するようにしましょう。

2. 主観的データとの組み合わせ

睡眠の質は主観的な感覚も重要です。治療後に感じる疲労感の軽減や、目覚めたときの爽快感も一緒に記録しましょう。

3. 専門医やデータの活用

必要に応じて、睡眠日誌や睡眠品質指数(PSQI)を活用することで、より詳細な分析が可能です。

鍼灸治療を取り入れるメリット

鍼灸治療は、睡眠改善の他にも多くの健康効果をもたらします。ストレス緩和や肩こり解消、血行促進など、全体的な体調改善に寄与します。自然な方法で体のバランスを整えるので、副作用もほとんどありません。薬が増えないこともメリットの一つと言えます。

最後に

睡眠の質が悪いと感じている方にとって、鍼灸治療は有効な選択肢です。科学的なデータや実際の体感をもとに、自分に合った改善方法を見つけてみましょう。当院では、睡眠改善を目的とした鍼灸治療も行っています。お気軽にご相談ください。健康的な睡眠と心地よい毎日をサポートするために、私たちは全力でお手伝いいたします。お気軽にお問い合わせください。*この記事を見て問い合わせをした方には以下のような小冊子(販売価格550円)も無料でプレゼントしています。ご希望の方は来所時にお申し出ください。

論考まとめ:気と水のコスモロジー~中国古代の身体観と医学観

年末年始にかけて学習した堀池信夫先生の論考が素晴らしかったのでここにまとめようと思います。道教の生命観と身体観という本からの引用で「気と水のコスモロジー~中国古代の身体観と医学観」というタイトルです。以下、章ごとに要約をまとめます。

1,医療と文化的多様性

医療とは人類が病気というものに出会って以来の集積としての文化行動である。大きく分け3つの形があり狩猟採集生活の中で誰かが薬となるものを偶然に発見した、呪術的感性のもとに何らかのアナロジー的発想からの療法を発見した、頭痛の時に頭を押さえるような反射的あるいは習慣的行動の中から療法を発見した、に分けられる。

医療行為は、その社会の文化的経験の集積で地域的特色も明確化してゆくことになる。そのプロセスではマクロ的にはその社会の持つ世界観、ミクロ的には身体観というものが多かれ少なかれ影響していたと思われる。だがその場合にそうした世界観や身体観が一つの社会につき一つしかなかったとみるのはおそらく幻想である。実際には相当の多様性があったのではないかと思われる。中国の世界観や身体観、ひいては医学観もそうした多様性を内包しているものと思われる。

2,気の身体観

中国の伝統的世界観ではこの世界はすべて気によって形成されるという考えである。人間も同様に気で形成される。精神も身体も気によって形成されたと考えられていた。そのため心身二元論では考えないのである。これを証するものとしてよく荘子・知北遊(ちほくゆう・道のあり方が説かれている古典)が引用される。

生は死の徒なり。生は死の始なり。だれかその紀を知らん。人の生は気の聚りなり。聚まれば則ち生と為り、散ずれば則ち死となる。若し死と生と徒なれば、吾れ又何かを患えんや。故に万物は一なり。

この文章は万物は一体で死生は一如であるということを言っている。そして気の聚である高密度状態が生、発散し希薄になれば死になり人間の身体は気において成り立つという考えが示されている。

そして後漢書の趙咨伝(ちょうしでん)には気は身体の構成要素であるというより身体の構成要素をげんにある身体という形態に統括している機能(あるいは機能を持つ何者か)として書かれている。つまり気以外が身体で気がそれを統括しているということになる。

夫れ含気の倫、生あるものは必ず終わる。蓋し天地の常期、自然の至数なり。・・・夫れ亡するとは、元気の体を去るなり。貞魂遊散するなり。素に反り、始に復り、無端に帰るなり。(身体は)すでに消失し還りて糞土に合す。

2025年3/1~3/25当ビルエレベーター停止、2月お休み日程のお知らせ

2025年3/1~3/25の8:30~19:00までの間、工事のためエレベーターが停止となります。(階段は使えます。)エレベーター停止期間中は以下のように対応します。

・付き添いが必要な方は、ご連絡くださればお迎えに上がります。

・ビル入り口、弊所立て看板のところ(↑写真)に杖を設置して使えるようにします。階段で必要な方は使ってください。使用後は元の場所にお戻し下さい。

・車椅子等で来所される方は夜間に対応させていただきます。

以上ご迷惑をおかけしますがよろしくお願い申し上げます。

 

2025年2月は11日(火曜日祝日)、23日(日曜日)、24日(月曜祝日)お休みいただきます。

第42回東方医学会「東方医学の精神文化と身体観」の感想 ~前向きな感情が芽生えた大会

去る2024年11月24日に行われた東方医学会学術大会に参加しました。私自身も学術発表の場をいただき発表しましたが他の先生方の発表も大変すばらしく非常に学びのある時間でした。大会は漢方医や鍼灸師だけでなく宗教家、日本舞踊の先生も参加され通常とは少し違った形でした。慈愛に満ちた素晴らしい学術大会であったと思います。以下私の感想を述べます。

近代化と伝統医学の問題

会頭講演でも「近代化に関する混乱とその問題」が挙げられていました。日本には明治維新の前まではなかった「概念」が入ってきたことで混乱が起きた事例が沢山あります。それが今も続いているものもあります。例えば、「個人」や「社会」という言葉は、明治時代以前は日本にありませんでした。(参考1)個人や社会という言葉を訳し、広めたのは福沢諭吉であると言われます。(諸説あり)これらの概念は江戸時代以前にはなかった、もしあったとしても現代人の我々が考えているものと違っていた可能性が高いことを意味します。日本人が人権や法の理解に弱いのはこれらの新しい概念を咀嚼できていないからではないかと指摘する法学者もいます。(参考2)

宗教に関しても同様です。私たちは宗教というとキリスト教や仏教等を思い浮かべますがその概念も当時の僧侶、島地黙雷が近代化に合わせて整理し生まれたものです。(参考3)医学分野でも1874年に制定された医制により、西洋医学に基づく医療体制が定着しました。この反動のような形で「東洋医学」という言葉が生まれたのですがそもそも言葉の定義や立ち位置が不明な上、西洋医学の反動という皮肉な宿命を背負っているのです。(参考4)この事が、現在漢方医学や鍼灸医学を学ぶ私たちの置かれている状況をややこしくしているといっても過言ではないでしょう。そもそも東洋医学という言葉は意味不明で、中国の人には意味が通じません。(参考5)ここに一つの矛盾があります。

それは東洋的な思想なのか?という疑問

また私は鍼灸を学んでいて「それは本当に東洋的な思想なのか?」と疑問に思うことが多々ありました。思想・哲学と現実的な医学の実践は乖離してしまうこともあるので仕方ない面もありますし、だからダメだと言いたいわけではなく腑に落ちないことが多かったのです。

例えば東洋哲学や禅の思想の根幹でもある「一如」や「不二」という概念は決して分けられるものではないことを意味します。(参考6)陰陽も完全に分かれることはありませんし太極図でもそれが表現されています。陰が極まれば陽になるだけです。しかしいまだに「西洋医学で解決できなかったものが東洋医学で解決できるのではないか?」、と考える方は一定数います。そのような二元論的発想や方法論に終始すること自体が東洋的でないと考えています。また中医学はさらに東洋的な発想ではない部分があると感じます。例えば中医学では弁証に基づいて患者の症状を把握し、陰陽、虚実、気血水、寒熱、表裏、五臓、六病位などの基本概念を適用して「証」を確定します。弁証論治は明確な答えを導きやすい強みがありガイドラインのようなもの、として考えればとても優れています。しかしこのシステマチックな思考法自体が東洋的な発想ではないように思うのです。学校教育で鍼灸師を養成し東洋医学概論を教えることも同様です。漢方製剤処方することも同様でしょう。効率的で優れた面が沢山ありますが、このような例は枚挙に暇がありません。

その上で、前向きな目標がもてた事

伝統医学をめぐる問題や矛盾はありますが、私はそれらを否定したいとは全く思いません。先人たちが築き上げてきた理論体系があるおかげで今、私たちは伝統医学に関わることが出来ています。そのことへ感謝する気持ちも強くなりました。もしもこのまま、伝統医学をめぐる状況が変わらず専門家や専門性が没落したとしても、社会から必要とされる鍼灸師でありたいと強く思うようになりました。もっと中医学を学んでみたい気持ちも強くなりました。今大会は自分にそのような前向きな感情が芽生えるきっかけになりました。

一方で矛盾や問題点は自覚すべきでしょう。それらを踏まえ現代において伝統医学に関わる我々は何をなすべきでしょうか?過去には鍼灸や漢方の科学化や共通言語化なども叫ばれましたが、私は「東洋医学という言葉をはじめとする、伝統医学の意味や定義の整理」が急務であると感じています。それらがないことには自分たちの持つ世界観や価値観をどのように共有していけばよいかも迷うことが多くなってしいます。中国や韓国のように国家主導で、それらが決まることは本邦においては難しいとも感じていますが個人、民間レベルでもできる事はたくさんあります。

そして多様化する価値観を持つ方が多い現代社会で、伝統医学の知見や手法を生かすには思想や手法を超えた超自我によるコミュニケーション・ケアの実践が必要ではないか?(参考7)と感じています。押しつけでなく、どのような世界観や価値観の人にも対応できるような「一如」であり「超自我」的な姿勢が治療者側に求められていると思います。その際に東洋的な思想や哲学は大いに役立つでしょう。以上のように様々なことを考えさせられ、自分の成長につながる学術大会でした。今後も日々の臨床に学習に励んでいきたいと感じます。日本東方医学会関係者のありがとうございました。心より感謝申し上げます。

参考

1,安部謹也「日本社会で生きるということ」朝日新聞社

2,川島武宜「日本人の法意識」岩波書店

3,山口輝臣 島地黙雷 「「政教分離」をもたらした僧侶」山川出版社

4,真柳誠「西洋医学と東洋医学」『しにか』8巻11号12-19、 83-85頁、1997年11月

5,東邦大学医療センター 大森病院 東洋医学科 三浦於菟 漢方医学と東洋医学はどう違うの -東洋医学の歴史-

6,鈴木大拙「東洋的な見方」角川ソフィア文庫

7,小西達也 「異宗教間ケア」の原理と方法論-「一/多」の人間観の観点から-

脳血管障害(脳梗塞・脳出血等)の後遺症と鍼灸治療

脳血管障害の後遺症には鍼灸治療が有効です。それらについてまとめていきます。

脳血管障害とは?

脳血管障害とは、脳の血管に関連する疾患全般を指す言葉であり、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)もその一部です。これらの障害は、脳に酸素や栄養が届かなくなり、脳機能に大きな影響を与えるため、早期の予防と対応が極めて重要です。脳血管障害にはいくつかの主要なタイプがあります。それぞれの障害は、脳にどのように影響を与えるかによって異なります。

脳梗塞(のうこうそく):脳梗塞は、脳の血管が詰まり、血流が途絶えてしまう状態です。このため、その部分の脳組織に酸素や栄養が届かなくなり、脳細胞が死んでしまいます。主な原因は、動脈硬化や血栓(血の塊)が血管を塞ぐことが多いです。

脳出血(のうしゅっけつ):脳出血は、脳内の血管が破れて出血する状態です。出血によって脳組織が圧迫され、脳機能に障害をきたします。主な原因は高血圧で、特に脳の細い血管が破れることが多いです。糖尿病などの病気も大きなリスクになります。

くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ):くも膜下出血は、脳の表面を覆っている「くも膜」という膜の下に出血が起こる状態です。通常、脳動脈瘤(血管の一部が膨らむ)が破裂することが原因です。このタイプの出血は、突然の激しい頭痛を伴い、重篤な結果を引き起こすことが多いです。

一過性脳虚血発作(TIA: Transient Ischemic Attack):TIAは、一時的に脳の血流が低下し、短時間だけ脳卒中に似た症状が現れる状態です。通常、症状は24時間以内に回復しますが、脳卒中の前兆として見られることが多く、早期の対応が重要です。

脳血管障害の症状

脳血管障害の症状は、障害される脳の部位や範囲によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。

片側の手足や顔の麻痺やしびれ:片麻痺として片側の手足が動かしにくくなります。

言語障害:言葉が出にくくなったり、言葉を理解するのが難しくなる(失語症)。

視覚障害:視野の一部が見えなくなる、物が二重に見えるなど。

バランスの喪失や歩行困難:立ち上がれない、歩くのが難しくなる。

突然の激しい頭痛:特にくも膜下出血では、急な強い頭痛が特徴的です。

意識障害:意識が混濁したり、昏睡状態に陥ることがあります。

脳血管障害のリスク要因

高血圧の管理や糖尿病の治療、コレステロール値のコントロールが重要です。定期的な運動や健康的な食生活、禁煙も予防に役立ちます。発症した場合、早期の診断と治療が重要です。脳梗塞の場合、血栓を溶かす薬や、血流を回復させる手術が行われることがあります。リハビリテーションも、後遺症の回復に大きな役割を果たします。以下のリスク要因が脳血管障害の発症に大きく関与しています。

高血圧:血管にかかる圧力が強くなることで、血管が損傷しやすくなります。

糖尿病:血管を傷つけやすく、脳梗塞のリスクを高めます。

高コレステロール:血管内に脂肪がたまり、動脈硬化を引き起こします。

喫煙:血管にダメージを与え、動脈硬化や血栓形成のリスクを高めます。

不整脈や心臓病:特に心房細動は、血栓ができやすく、これが脳に到達すると脳梗塞を引き起こすことがあります。

その他:運動不足や肥満、過剰なアルコール摂取などの生活習慣もリスク要因となります。

発症後、保険でできるリハビリ期間について

脳卒中後のリハビリテーションは、発症から180日間(6ヶ月間)が保険適用で行える標準的な期間です。入院リハビリ、外来リハビリともに、この期間が保険適用の基準となります。6ヶ月以降は、介護保険を活用したリハビリが主になりますが、患者の状態に応じてリハビリを続けることができます。(医療保険や自費での鍼灸治療も加えることをご検討ください。)

鍼灸治療のメリット

鍼灸は、伝統的な東洋医学の一部であり、経絡やツボを刺激することで、体の自然な治癒力を高める効果が期待されています。脳血管障害による後遺症は、運動機能や感覚機能、言語機能などの幅広い領域に影響を与えるため、リハビリテーションと併用して鍼灸を行うことで、症状の改善やQOL(生活の質)の向上が期待されます。比較的安全な治療法とされていますが、医師や鍼灸師との連携が重要です。脳血管障害後の状態や他の治療との相互作用を考慮し、鍼灸治療が適しているかどうかを専門家と相談して進めることが大切です。

(1)筋緊張の緩和

脳卒中後の後遺症として、片麻痺や筋肉のこわばり(痙縮)がよく見られます。鍼灸は、筋肉の緊張を和らげ、リラックスさせる効果があります。特に、麻痺が残っている手足の硬直や痛みを軽減することができ、リハビリテーションでの動作の改善をサポートします。

(2)血流の改善

鍼を刺すことで、局所的に血流が改善され、患部の酸素や栄養の供給が促進されます。これは、脳血管障害によるダメージを受けた脳や神経の修復過程をサポートする効果が期待されます。また、血液循環が改善されることで、疲労感やだるさを軽減することができます。

3)痛みの軽減

脳血管障害後に、肩や関節に痛みを感じることがあります。鍼灸治療は、鎮痛作用があり、痛みを緩和する効果が期待されます。特に、片麻痺の側で感じる肩の痛みや腰痛などの改善に役立ちます。

(4)感覚機能の改善

脳血管障害後に感覚麻痺(しびれや感覚の鈍さ)が残る場合があります。鍼灸は、神経伝達を活性化させ、感覚の回復を助ける効果があるとされています。特に、触覚や痛覚の回復を促すことが期待されます。

(5)自律神経の調整

脳血管障害後、体内の自律神経のバランスが乱れることがあります。これにより、ストレス、睡眠障害、消化不良、血圧の変動などが発生することがあります。鍼灸は、自律神経のバランスを整え、全身の調和を促進する作用があります。これにより、心身の安定やリラックス効果が得られることが期待されます。

(6)精神的なリラクゼーション

鍼灸治療は、身体だけでなく、精神的なストレスや不安を軽減する効果もあります。脳血管障害後の不安感や抑うつ状態を改善するために、鍼灸が心のバランスを整えるサポートになることが報告されています。

(7)生活の質(QOL)の向上

脳血管障害後の後遺症によって日常生活が制限されると、患者の生活の質が低下することがあります。鍼灸治療によって、運動機能や痛み、疲労感が軽減されると、日常生活の活動がよりスムーズに行えるようになり、生活の質が向上することが期待できます。

治療的自己と鍼灸治療について

治療的自己とは?

モンタナ州大学の心理学教授である J.G. Watkins(John G. Watkins)が提唱した「治療的自己(Therapeutic Self)」の概念は、心理療法におけるセラピストの役割を深く探求したものです。(参考1)Watkinsは、特に 催眠療法 や 人格構造の治療的統合 に関心を持ち、セラピストが治療的な関係の中で自身をどのように効果的に活用できるかを重視しました。以下にWatkinsの治療的自己に関する主要な考え方を説明します。

1. 治療的自己の本質

Watkinsによる「治療的自己」は、セラピストが自分自身の人格、スキル、態度、そして存在を、意図的かつ治療的に患者との関係において活用する能力を指します。これは単なる技術やスキルの使用を超え、セラピスト自身が治療のプロセスの一部となることを意味します。

2. 治療的自己の発展

Watkinsは、治療的自己を発揮するためには以下の点が重要であると述べています。

自己認識: セラピストは、自分自身の感情、価値観、バイアス、人格特性を深く理解し、それが治療関係にどのように影響を与えるかを意識する必要があります。

感情のコントロール: セラピストは、クライアントとの関係において自分の感情を適切に管理し、感情移入しすぎないことが重要です。

クライアントとの共感的関係: セラピストは、クライアントの視点を理解し、その感情や体験に寄り添うことが治療の核心であると考えました。

3. 催眠療法との関連

Watkinsは、催眠療法の分野での先駆者であり、クライアントの無意識にアクセスするプロセスにおいて、セラピストの治療的自己が極めて重要であると考えました。具体的には、セラピストがクライアントに安心感を与え、信頼を築くことで、クライアントが無意識の深い部分に到達しやすくなると提唱しています。

4. 人格の統合と治療的自己

Watkinsは、解離性障害や多重人格の治療にも関与しており、治療的自己が人格の分裂を統合する際に重要な役割を果たすと考えました。セラピストは、クライアントの異なる側面や自己部分を受け入れることで、統合を促進する安全な環境を提供する必要があると述べています。

5. Watkinsの影響

Watkinsの治療的自己に関する考え方は、心理療法全般における「セラピスト自身の役割」の理解を深める上で非常に影響力がありました。彼の理論は、催眠療法や解離性障害の治療だけでなく、他の心理療法の分野でも応用可能な洞察を提供しています。

Watkinsのアプローチは、セラピストが単なる「治療技術の提供者」ではなく、治療的な関係性そのものを作り出す存在であることを強調しています。このような視点は、現代の心理療法やカウンセリングにおいても非常に重要な概念として受け継がれています。

鍼灸治療においてどのように役立つか?

「治療的自己(Therapeutic Self)」の概念は、鍼灸治療のような伝統的医療でも重要な役割を果たします。鍼灸治療は、身体的な症状の軽減に加えて、患者の心理的、感情的な側面に働きかけるホリスティックなアプローチを特徴とするため、治療者自身の態度や治療関係の質が治療効果に大きく影響します。以下に、Watkinsの「治療的自己」が鍼灸治療にどのように役立つかを具体的に説明します。

1. 治療者の「存在感」と治療環境の整備

鍼灸治療では、治療者と患者の間の信頼関係が重要です。Watkinsの「治療的自己」の概念では、治療者の態度や存在そのものが治療的な要素となることを強調しています。

鍼灸における応用: 鍼灸師が穏やかで安心感を与える態度を示し、患者にリラックスできる環境を提供することで、患者の体と心の両方が治療を受け入れやすくなります。たとえば、穏やかな声のトーンや丁寧な説明は、患者の不安を軽減します。

2. 患者の心理的反応を理解する能力

鍼灸治療中には、患者が身体的反応だけでなく、感情的な変化を経験することもあります。Watkinsの治療的自己は、治療者が患者の感情的な反応に共感し、それを治療プロセスに統合するスキルを養うことを奨励します。

具体例: 鍼灸施術中に患者が過去のトラウマやストレスを思い出す場合、鍼灸師は患者の感情を受け入れつつ、過度な干渉をせず、治療を進めるバランス感覚が求められます。

3. 触覚と接触を通じた治療的自己の発揮

鍼灸は身体への直接的な接触を伴う治療法であるため、治療者の手技や接触そのものが患者に治療的な影響を与えます。Watkinsの治療的自己の視点では、治療者の意図やエネルギーが患者に伝わると考えられます。

鍼灸師の技術と態度の融合: 鍼を挿入する際の慎重さや、ツボを押さえる手の優しさが、治療の効果を高めるだけでなく、患者のリラクゼーションや信頼感にも寄与します。

4. 患者の内的プロセスを促進する役割

Watkinsは、治療的自己を通じて患者が自分の内的なプロセスに向き合い、癒しを進められるようにサポートする重要性を述べています。鍼灸治療では、患者が自身の身体感覚やエネルギーの流れに気づき、自己治癒力を引き出すことが目的の一つです。

実践例: 鍼灸師が患者に、自分の身体感覚に意識を向けるよう優しく促すことで、治療効果を深めることができます。「このツボを刺激するとどんな感じがしますか?」といった問いかけを通じて、患者の内的な気づきを引き出すことが可能です。

5. 患者との信頼関係の構築

鍼灸治療の成功には、患者との信頼関係が欠かせません。Watkinsの治療的自己では、治療者が自己認識を持ち、偏見や判断を排除して患者に向き合うことが求められます。

鍼灸治療における応用: 患者の訴えをしっかりと聞き、その人特有の体験を尊重する姿勢は、患者に安心感を与えます。これにより、治療者と患者の間に強固な信頼関係が生まれ、治療効果が向上します。

6. 心理的効果の向上とプラセボ効果の活用

心身医学の視点に基づくと、鍼灸治療では患者の心理的状態が治療結果に影響を与えることがあります。Watkinsの治療的自己を活用することで、患者の心理的安心感や治療への信頼が高まり、プラセボ効果も含めた治療全体の効果が向上します。

応用例: 鍼灸師が治療の目的や効果をポジティブに説明することが、患者の治癒力を引き出す助けとなります。

まとめ

J.G. Watkinsの「治療的自己」の概念は、鍼灸治療において次のように役立ちます。

・ 治療環境の整備によるリラクゼーションの促進

・ 患者の心理的反応への対応による治療の深まり

・ 治療者の触覚や存在感を通じた治療効果の向上

・ 患者の自己治癒力を引き出すサポート

・ 信頼関係の構築を通じた治療効果の最大化

・ 鍼灸治療の効果を最大化するためには、Watkinsが強調したように、治療者自身の意識的な関与が重要です。これにより、患者は心身の癒しを深く体験することができます。

どのような疾患の方に特に有効か?

「治療的自己(Therapeutic Self)」の概念を鍼灸治療に活用する場合、治療者の存在そのものや態度、患者との関係性が治療効果を高める要因となります。このアプローチが特に有効だと考えられる患者の症状や状況には、以下のようなものがあります。

1. 心理的ストレスや精神的な不調が関与する症状

心理的な要因が症状の悪化や慢性化に影響している場合、治療者との信頼関係や共感が症状の改善を助けることがあります。

適応症:不安症や抑うつ状態、ストレス関連の頭痛や緊張型頭痛、不眠症、過敏性腸症候群(IBS)や胃腸の不調など

理由: 治療的自己の概念を通じて、患者に「安心感」や「共感されている」という感覚を与えることで、心理的負担を軽減し、自律神経系のバランスを整える効果が期待されます。

2. 慢性疼痛や原因不明の症状

慢性的な痛みや原因が特定されにくい症状を抱える患者では、身体的な治療だけでなく、心理的・感情的なサポートが重要です。

適応症:慢性腰痛や肩こり、繰り返す筋緊張や関節痛、線維筋痛症など

理由: 治療者の共感的な態度と寄り添う姿勢が、患者の痛みに対する認識を変え、症状の軽減につながります。また、鍼灸が神経系やホルモン系に与える効果と、治療者の心理的サポートが相乗効果を発揮します。

3. トラウマや心身症のある患者

過去のトラウマや心理的負担が身体症状として現れている患者では、治療者の態度や環境が回復の重要な鍵となります。

適応症:心因性の痛みや体調不良、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関連した症状、解離性障害に伴う身体症状など

理由: 治療的自己を活用し、非侵襲的で安心感のある治療環境を提供することで、患者が心身の統合を取り戻す手助けができます。

4. 自律神経失調症や全身の不定愁訴

治療者との信頼関係や心理的な安心感が、自律神経の安定化に寄与し、症状の改善を助ける可能性があります。

適応症:疲労感や倦怠感を伴う疾患、めまいや耳鳴り症状、ホルモンバランスの乱れによる更年期症状など

理由: 治療的自己を通じて患者の状態に寄り添いながら、鍼灸の効果(経穴刺激による自律神経調整)を最大化します。

5. 妊娠中・産後のケア

妊娠中や産後の女性は身体的変化とともに心理的負担も大きいため、治療者の態度が大きな影響を及ぼします。

適応症:妊娠中のつわりや腰痛、産後の疲労やうつ症状、授乳トラブルに伴うストレスなど

理由: 妊産婦にとって、安心感のある治療環境と治療者との信頼関係が、心身の回復において非常に重要です。

6. 終末期医療や緩和ケア

治療的自己を用いることで、患者の苦痛を和らげ、安心感や穏やかな心境を提供できます。

適応症:癌の緩和ケア、終末期の疼痛管理や不安軽減など

理由: 鍼灸のリラクゼーション効果に加え、治療者の存在そのものが患者の不安を軽減し、精神的な支えとなる役割を果たします。

治療的自己が特に効果を発揮する理由

患者との信頼関係の構築: 患者が「自分のことを理解してくれている」と感じることで、治療の受容性が高まり、治癒力が促進されます。

心理的安心感の提供: 治療者の態度や雰囲気が患者に安心感を与え、ストレスを軽減します。これは、痛みや不安を感じている患者にとって特に重要です。

統合的アプローチ: 治療的自己を基盤に、身体と心を統合的にケアすることで、鍼灸の効果を最大限に活用できます。

 

参考1:心身医学的治療において治療的自己は重要な役割を果たす。

納得し治療を進めるためのアンケート

弊所では患者さんが施術者の方針に納得・理解し鍼灸治療を受けていただきたいのでヘルスコミュニケーション的な観点から作成したアンケートを実施しています。以下にPDFを公開します。1ページ目は鍼灸治療2回目もしくは3回目、2ページ目は鍼灸治療5回目くらいの慣れてきたタイミングで実施しているものです。

双方向の理解がある鍼灸院を目指しています。アンケート以外でも何かあれば口頭やLINEからお気軽にご質問、ご相談ください。

方針を決めていくためのシート

鍼灸師・あマ指師・医療系学生は割引

初回7150円→6150円

2回目以降6600円→5600円

同業者特別回数券6回分(期限なし・ご本人様のみ利用可能)39600円→30000円:1回あたり5000円

に優待します。身分証などは必要ないです。同業者だと申し出て下さった方は優待しますのでお電話かラインで予約の際お申し出ください。調査や体験的な形で利用していただいても構いませんが、講義ではなくあくまで施術なのでご期待に副えるかはわかりません。純粋に施術を受けたい方がご利用下さい。

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2024年12/11~12/27まで東京都もっと!!暮らしを応援TOKYO元気キャンペーンが始まります。PayPay、D払い、auPay、楽天Payのキャッシュレス決済をすると10パーセントポイント還元になります。実施期間は2024年12月11日から12月27日ですが昨年も予定より早く終了したためご希望の方は早めにご利用ください。詳しくは東京都の特設サイトからご確認ください。