カテゴリー: 痛み系疾患。腰痛や頭痛(片頭痛・偏頭痛・緊張性頭痛・群発性頭痛など)

BIO PSYCHO SOCIAL(BPS)モデルと慢性疼痛について

生物心理社会モデル(bio psychosocial model)は、ジョージ・エンゲル(George Engel, M.D. ,1913–1999)が1977年に提唱したモデルで、生物医学(Biomedical・バイオメディカル)モデルになり代わる、新しい医学観の提唱であります。最もバランスのとれた医療の研究は、人間の存在を「生物・心理・社会性」(Bio-Psycho-Sociality)として統合的に見ようとする立場だという考え方をします。登場した時代の順序もバイオメディカルモデル → のちにバイオサイコソーシャル(BPS)モデルとなります。

人間の身体の成り立ちは、生物医学・心理・社会的な要素がそれぞれ分離しているのではなく、相互に作用し、かつ総合的な性質をもつという考え方をします。したがって人間の不調や病気は、生物・心理・社会の複合的な問題からなり、それぞれの側面における対処を試みるだけでなく総合的に人間をみる必要があるのです。

(1)「心理社会的因子」という視点が重要な疾患(心身症)とその例

検査の結果異常はないものの症状が取れない心療内科的な疾患が多い。一例をあげますと以下です。

慢性疼痛(痛みが取れない)、なんとなく疲れが取れない(自律神経失調症といわれるもの)、胃腸の不調(機能性ディスペプシア・慢性胃炎・過敏性腸症候群)、うつ傾向、パニック障害など・・・

上記は一例ですが鍼灸院でもよく見られる疾患です。心身症という見方もできます。心身症とはストレスが身体症状の発症及び持続の原因となっている病態です。患者の物語である(illness=病い)はあまり考慮されず検査の結果異常(Disease=疾患)なしと言われるもそのギャップが顕在化していると見ることもできます。もちろん、中には病気が隠れている場合もあるので「どのような薬を飲んでいるか」、「どのような検査や診断を受けたか」など把握はとても大事になってきます。鍼灸院は診断する場所ではなく、症状の緩和等を目的とする場所なのですが現在の治療状況や投薬状況などはかならずお薬手帳などの記録から把握させてもらいます。(当たり前ですが減薬指導などはしません)

(2)恐怖-回避モデル(Fear-avoidance model)

慢性疼痛の場合を例に考えてみます。慢性疼痛とは,3カ月間を超えて持続もしくは再発する,または急性組織損傷の回復後1カ月を超えて持続する,または治癒に至らない病変に随伴する疼痛です。原因としては,慢性疾患(例,癌,関節炎,糖尿病),損傷(例,椎間板ヘルニア,靱帯断裂),多くの原発性疼痛疾患(例,神経障害性疼痛,線維筋痛症,慢性頭痛)などがあります。様々な薬剤と心理学的治療が用いられます。(MSDマニュアルより)。一言で慢性疼痛といっても様々な病態が存在します。だから慢性疼痛かどうかよりも「どのような慢性疼痛なのか?」が重要でそれを把握するための身体検査や社会的心理的因子の把握も重要になってきます。身体の状態を生物医学(Biomedical)モデルだけで説明・アプローチするのはどうしても無理があります。医療者からクライアントにどのような質問をすべきか?*BPSモデルのインタビュー、質問はこちらを参考にしてください。恐怖-回避モデル(Fear-avoidance model)はいわば悪循環のような状態になっています。心理的・社会的にストレスがないかも含めた現状の把握が大事になってきます。下の図では青「悲観的解釈」と書いてありますが「破局化」とも呼ばれます。痛み体験が不安や恐怖を引き起こすものと考えるとわかりやすいかもしれません。

(3)慢性疼痛の説明の要点

1、あらゆる痛みは脳で感じる。そのため痛みの部位から脳まであらゆる場所が痛みの原因になりうる。

2、急性疼痛は警告信号の役割があるが慢性疼痛に危険を知らせる役割はない。

3、急性疼痛は痛みが減ればできることが増えるが慢性疼痛はできることが増えると痛みが減っていく。(マインドフルネスにも近い考え方がある)

4、慢性疼痛は痛みだけでなくそれに影響される考え方や感情、行動、生活の障害もほかの症状が改善することで痛みが強くなったとしても回病気は改善していくことがある。

5、治る順序はまず考えや行動。次に感情や生活、最後に痛み。初期は痛みの強弱で治療効果を測ってはいけない。

6、運動やヨガ・鍼灸には痛みを軽減させる効果がある(アナンダミドの活性化)

現代医学のガイドラインに掲載されている鍼治療(線維筋痛症・腰痛・がんの痛み・片頭痛・偏頭痛など)

鍼灸治療は様々なことに効果があり、

様々な疾患に対応できるのですが

現代医学的な「診療ガイドライン」でも

推奨されているものがあります。

 

診療ガイドラインとは

「医療者と患者が特定の臨床状況で

適切な決断を下せるよう支援する目的で

体系的な方法に即して作成された文章」

のことで

エビデンスレベルと推奨度を

記載したものが一般的です。

 

鍼灸も様々な研究が多数行われており

論文も多数存在するために

国内の診療ガイドラインにも

いくつか記載があります。

 

もちろんこれに記載されたものが

正しく、記載されていない疾患は

効果がないというわけではありません。

 

しかしながら現代医学的な

ガイドラインに掲載されているということは

鍼灸の効果を証明する一つの根拠

になるのです。

 

ざっとですが以下のようなものがあります。

 

・腰痛診療ガイドライン2012:

科学的根拠があり行うよう勧められる

 

・線維筋痛症ガイドライン2011:

科学的根拠があり行うよう勧められる

 

・慢性頭痛診療ガイドライン(片頭痛):

強い科学的根拠があり行うよう強く勧められる

 

・・・ほか変形性膝関節症や

がんの疼痛なども強く推奨されています。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

他にも科学的根拠がある、

エビデンスがある疾患は多数存在します。

まずはご相談くださいませ。

頭痛と頸部痛の心理的・社会的な危険因子に関して

頭痛や頸部痛を悪化させてしまう

危険因子についてまとめていきます。

 

慢性的な頭痛や頸部痛に悩まされている方は

これらのことを避けられるのであれば

避けた方が良いでしょう。

 

<心理的・社会的危険因子>

1、ストレス

生活面の負担や時間的制約などの

プレッシャーは症状の悪化を招きます。

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2、苦悩・不安感

無力感や不安感はほとんどの場合で

「疼痛閾値を下げる」

=痛みを感じやすくする

と言われています。呼吸のパターン変化や

筋緊張なども伴います。

 

3、鬱状態

深刻な不幸感や無意味感が

認知の歪みを引き起こし痛みの悪化を招きます。

 

4、仕事や家庭への不満

仕事や職場、家庭などは

日常的に接する時間が長いため不満がある状態だと

不快感や疼痛が増します。

 

・・・

慢性的な頸部痛や頭痛に悩まされている方は

こうした状況を避けられるのであれば避けて

生活されるのが良いかと思います。

 

マッサージやはり灸を行っただけでは

改善されない場合もあるため

生活パターンや状況なども考慮し

施術に当たっていきます。

 

何か不安なことやご質問などあればお気軽に

お尋ねください。

片頭痛(偏頭痛)について  ~西東京で偏頭痛でお悩みの方へ・田無北口鍼灸院の解説

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◎片頭痛

 

片頭痛のことで相談される患者さんが増えていますので、ご説明します。慢性頭痛の1つであり、原因は頭の中の血管が強く拡張するためと考えられています。痛みの強さは日常生活に支障が出るほど激しいものです。国内患者数は約840万人と推定されています。

片頭痛の人は脳梗塞になりやすく、(倦怠感が出てくれば要注意)、2親等以内に頭痛持ちの人がいることが多いとされ、子供の時に喘息だった人も要注意です。

 

片頭痛の正体はセロトニン

頭の片側がズキンズキンと痛む片頭痛は、肩こりがひどくない時にも起きます。片頭痛を起こしている人の脳の血流を調べると、痛みが起きている部分の血液量が増えており、その血液には、『セロトニン』という物質が大量に含まれています。

セロトニンは、傷口から出る血液を凝固させる物質ですが、何らかの原因で血管に紛れ込むと血管を収縮させた後、必要以上に膨張させてしまうため、三叉神経が引っ張られて痛むのです。

片頭痛が脈を打つのと同じリズムで「ズキズキ」と痛むのは、送られてくる血液で血管がさらに太くなるからだと考えられます。女性ホルモンの変動や疲労なども、セロトニンの異常放出の引き金です。

 

片頭痛の特徴

片頭痛は発作の前に前兆がしばしば見られます。主に視覚や感覚の障害で、最も良く知られているのが、閃輝暗点と呼ばれる神経症状です。本や新聞を読んでいるときに視野の中心がぽつんと急に明るくなったと思ったら、それが三日月状になって広がりだし、逆に視野の中心部が暗くなって文字が見えにくくなる、そうこうするうちに、輝きの部分の周りが稲妻のようにギザギザ状になってチカチカする。このチカが消えたと思ったら、30分~2時間後に頭痛に襲われるというのです。ただこうした前兆がすべての患者に見られるわけではありません。

 

30代の女性に多い

片頭痛は緊張(ストレス)から開放された時に起きるケースが多いのです

 

痛みの特徴

●.痛みが発作的に生じる

●.多くは頭の片側で(両側の場合もある)、

(ズキズキ)(ズキンズキン)(ドクドク)(ガンガン)などと痛む

●.数時間~3日間ほど続いたあと自然に治まる

 

痛みのほかの症状

1脱力感 2.無気力 3.焦燥感 4.悪心5.嘔吐6.便秘か下痢を伴う7.羞明を伴うことが多い(光過敏症)

<注意>

①低血糖糖になると発作が起きる(10時・午後3時のティータイムを取るが有効です)

②体を温めるのは逆効果です。

●血流を良くしてはいけない

●サウナなどは良くない

●片頭痛は脳の血管が拡張しすぎて発作が起き、小さな梗塞を引き起こしていることも多いのです

 

赤ワインは片頭痛が起きるので要注意

●白ワインでは問題が無いことがあります。

●チーズやスナック類、ワイン、ビールなどが原因になる場合もある。

 

子供の自家中毒(周期性嘔吐症)も片頭痛とされる。

●子供は頭より腹痛で感じます。

●朝食を食べないで学校に行くと、昼食前になると腹痛を訴えます。

●片頭痛の子供は[乗り物酔い]になりやすい。

 

セロトニン説)と(三叉神経説)

脳の血管の収縮・拡張を促す神経伝達物質であるセロトニンと、脳幹につながっている三叉神経が関わっていると考える説。

ストレスを感じる状況から解放される→セロトニン量が急に変動する

血管が拡張し→三叉神経を圧迫する

炎症物質(発痛物質)が放出される→血管のまわりの神経に炎症が起きる

痛み以外に、ニオイに過敏、吐き気などが同時に起きる。

 

【片頭痛の対処】

●頭を冷やすと痛みを忘れる

●カフェインの入った飲み物をとる

●頭を手ぬぐいで締め付ける

 

片頭痛の原因はまだハッキリしていません。しかし、頭の血管が過度に拡張しその周囲に炎症が起きていることは分かっています。血管の拡張と炎症には頭の血管の周りを走っている三叉神経が深く関与している事も知られてきました。ストレスなどが原因になって三叉神経の末端から血管を拡張する物質が放出され、血管の拡張・炎症が生じて頭痛発作を引き起こす説が有力視されています。

一方、多くの医師は頭痛日記をつけることを勧めています。①いつ頃、どんな症状を伴って頭痛が起きたのか?②頭痛がどれくらい続いたのか?③頭のどの辺りが痛いのか?―などを記録します。ほぼ定期的に繰り返し起きるようなら片頭痛を疑ってもよいとされます。

 

片頭痛の診断

2004年7/21、厚生労働省研究班の調査結果から診療態勢の整備が必要なことが分かりました。「片頭痛」と診断がつくまで平均10年も要しています。 北里大学病院(神奈川県相模原市)の頭痛外来に罹った18~65歳の患者約200人にアンケートした結果、片頭痛と診断されるまでの年数は20年が最も多く、約50人(25%)、40年以上かかった患者も数人いました。診断がつくまでに10カ所以上の病院を転々とした人もいました。

近くの医師らに相談した患者の半数以上が脳の画像診断を受けていましたが、「適切な助言を受けていた」と答えた人は27%にとどまっています。

片頭痛が日常生活に影響し、社会的に不利だと感じている患者は80%に上りますが、職場や学校の理解があると答えた人は28%でした。

 

片頭痛の診断基準(1988年、国際頭痛学会)は次の通りです。

前兆を伴う片頭痛 (migraine with aura)

<1>診断基準

A.次のBを満たす発作が2回以上ある

B.次の4項目のうち3項目を満たす

1.一過性の前兆があり、脳皮質あるいは脳幹の局所神経症状と考えられる

2.前兆は4分以上にわたり進展し、2種類以上の前兆が連続して生じてもよい。

3.前兆は60分以上持続することはない。2種類以上の前兆の組合わさるときは、その分持続時間が延長する

4.頭痛は前兆後60分以内に生ずる

(前兆より以前あるいは同時でもよい)

C.次のうち1項目を満たす

1.臨床的に器質的疾患による頭痛を否定しうる

2.臨床的に器質的疾患が疑われても検査により否定できる

3.器質的疾患が存在していても、経過より片頭痛との関係が否定できる

 

<2>前兆症状:

1.特徴的:閃輝性暗点があること。 「視野がぼんやりとして周辺部に光輝くジグザグ線が見える」

2.羞明や暗転のみ

3.その他: 1.脱力、2.感覚障害、3.構音障害、4.失語、5.めまい、6.耳鳴などが起きることがある

 

<3>前兆は頭痛期になると消失するのが普通。 原則的に、発作間欠期には全く異常がない

前兆なしに突然に出現する片頭痛 (migraine without aure) ・・・普通はこのタイプ

A.次のB~Dを満たす発作が5回以上ある

B.頭痛発作が4~72時間持続する

C.次のうち、少なくとも2項目を満たす

1.片側性頭痛

2.拍動性

3.中等~強度の痛み(日常生活が妨げられる)

4.階段の昇降など日常的な動作により頭痛が増悪する

 

D.発作中、次のうち1項目を満たす

1.悪心あるいは嘔吐

2.光過敏あるいは音過敏

 

E.次のうち1項目を満たす

1.臨床的に器質的疾患による頭痛を否定しうる

2.臨床的に器質的疾患が疑われても検査により否定できる

3.器質的疾患が存在しても、経過より片頭痛との関係が否定できる

 

針灸ツボ

a. [天柱][完骨][和][隠白][頷厭]

b.(偏頭痛)「天柱」「天」「正営」「通天」「百会」「手三里」

漢方薬

1.葛根湯

2.加味逍遙散

3.九味檳榔湯

4.桂枝湯

5.桂枝人参湯(気逆、裏寒、脾虚)

6.桂枝茯苓丸

7.呉茱萸湯(気逆、裏寒、脾虚)

8.五積散

9.五苓散(水滞)

10.柴胡桂枝湯

11.柴胡桂枝乾姜湯

12.三黄瀉心湯

13.四逆散

14.四物湯

15.小建中湯

16.小柴胡湯

17.小青竜湯

18.続命湯

19.川茶調散

20.大柴胡湯

21.大承気湯

22.調胃承気湯

23.釣藤散

24.桃核承気湯

25.当帰四逆加呉茱萸生姜湯(気逆、裏寒、脾虚)

26.当帰芍薬散

27.八味地黄丸

28.半夏白朮天麻湯

29.麻黄細辛附子湯

30.麻黄湯

31.苓桂朮甘湯