タグ: MRI

    病院でできること、鍼灸院でできること。役割の違いについて。

    たまに質問されるのでこちらにもまとめておきます。また弊所のスタンスとして現代医学をむやみに否定することはしません。病院を上手に利用し、鍼灸院も上手に利用し、最速で改善されますよう様々な提案をします。緊急性や病気が疑われる場合はこちらから病院に紹介状を書くこともあります。病院と田無北口鍼灸院は協力関係にあります。遠慮なくご相談ください。

    病院(クリニック)でできること、特徴

    ・ 医学的検査:レントゲン・MRIなどの画像診断血液検査、聴力検査など→病気が原因ではないか?客観的な検査を行います。もちろん検査をしてもわからないこともあります。

    ・ 投薬・注射:薬物療法は医師の指示の元に行うことができます。痛み止めの注射などは痛みが強い場合に有効です。

    ・ 街の病院(クリニック)の役割の一つとして「正確な診断」を下すことというのがあります。緊急性がある疾患ではないか?判断することです。たくさんの方が訪れるため医師が一人の患者さんにさける時間はどうしても少なくなってしまいがちなこともあります。「検査はしてくれるが治療はしてくれない」という印象を持つ方がいるようですが、上記のような理由からそう感じてしまうのかもしれません。

    ・ 費用はほとんどの場合で保険診療でできますので安価で済むことが多いです。

    鍼灸院でできること、特徴

    ・ 東洋医学的検査:全身を触ります。脈やお腹や舌等の状態を見ます。検査といっても数値で見る検査ではなく硬さや色を見る主観的な検査です。施術後、ツボの柔らかさや脈の速さなどがどう変化したか?の評価も行います。

    ・ 鍼灸:即効性があることも多いですが徐々に効いてくるものもあります。

    ・ 一人一人に時間をかけられます。お話をゆっくり聞きます。そのため「なぜ調子が悪くなったのか?」という原因究明に時間をかけられたりします。ストレスや緊張から来る不調など病院の治療やお薬ではなかなか解決しない問題に対して強いです。

    ・ 自費で行うことが多く、お一人ずつゆっくりお話を伺うことが出来ます。

    法的な観点からの考察

    医師は血圧の状態やレントゲン画像の状態などの検査を経て病名を決定します。すなわち診断をすることができるのです。法律上、病名を決定する診断やその為の診察は医師しかできないことになっています。(医師法17条)

    鍼灸院で鍼灸師がやっていることは法律的には施術に当たり「診断・診察はできない」という扱いになります。

    つまり法的に考えると「病院(クリニック)では他覚的所見をもとに医師が治療をする。鍼灸院ではクライアントの自覚症状を改善するため鍼灸師が施術をする。」となります。(ただし、自覚症状の改善に注目してくれる医師も当然います。また鍼灸師の施術目的は自覚症状改善だけでもありません。分かりやすく説明するためにこのような書き方をしています。)他覚的所見と自覚症状の違いも重要なため、以下に説明しておきます。

    他覚的所見(医学的他覚所見)とは?

    病院(クリニック)での検査や医師による触診・視診などの診察、画像検査(レントゲン・MRIなど)や医学的検査(血液検査・神経伝導検査など)により、客観的に捉えることができる症状のこと。

    自覚症状とは?

    痛み・体温・疲労感などから自分で感じることのできる症状のこと。病気には風邪や痛みのように自覚症状のはっきり出るものもあるが、生活習慣病のように初期は自覚症状がないものもある。

    人類学的な観点からの考察

    人類学では癒しと治療を相対化することで説明されることがあります。治療とは近代医療により説明可能なものであり、癒しとは本人や家族の苦悩も含まれる主観的なものです。

    重複する領域もありますが図式化すると以下のようになります。鍼灸院では「癒し」を担当することが多いですが、治療も医師と協力しながら行うことができます。

    他にはキュアとケアという考え方も出来ます。

    キュア(cure)は生物医学的な疾患を医学的な治療によって治すことを目的とするものでおもに医師が担当します。

    ケア(care)は病いに悩む患者に対し、全人的なアプローチをするもので看護師やメディカルスタッフが担当します。鍼灸師の行う施術もキュアというよりはケアに該当するものが多いと言えます。

    まとめ

    図にすると上記のような特徴があります。身体に不調を感じた場合は、まず病院で診察を受けるのが良いでしょう。器質的な異常がないか?病気が原因ではないか?調べてみてください。痛みが強い場合など病院に行かず、原因を確認せずに鍼灸だけで何とかしようとすることはそもそも無理があります。

    そして病院の投薬治療やリハビリではいまいちよくならないと感じている方、症状が軽くあまり不安でない方などは機能的な問題や自覚症状の問題である可能性が高いため鍼灸院を利用するのが良いでしょう。・・・わからない方は一度ご相談下さい。こちらから病院や医師をご紹介し協力しながら施術にあたることもできます。

    以下、動画もご覧になってみてください。

    中高年の方のしびれ症状ご相談

    田無北口鍼灸院では「手や足にしびれが続いている。鍼灸をやれば治るか?」という相談も多いです。結論から言いますと絞扼障害・神経根圧迫などは鍼灸治療で改善することが多いです。ただ一口にしびれ(痺れ)といってもいろいろな原因で起こりますし緊急性がある場合もありえますので細かく解説してまいります。お困りの方の参考になれば幸いです。

    (1)末梢神経が原因で起こるしびれか?中枢神経が原因で起こるしびれか?

    わかりやすく説明するためにカンタンに分類します。ご了承ください

    中枢神経が原因で起こるもの:脳・脳幹・脊髄の障害が原因のものです。

    脳血管障害(脳梗塞,脳出血),脳腫瘍,多発性硬化症(脳,脊髄),脊髄腫瘍,脊髄空洞症,脊髄梗塞など脳や脊髄の障害される多くの疾患により.痺れがおこります。これらは緊急性があるものも多いので注意が必要です。

    末梢神経が原因で起こるもの:手足や大観の神経が原因のものです。

    少し詳しく見ていきましょう。まず神経線維の太さ・機能など。神経線維は以下のように分類されます。

    Gasserの分類
    直径(μm)
    伝導速度(m/S)
    主な機能
    有髄
    12 ~ 21
    70 ~ 100
    運動,筋固有知覚
    6 ~ 12
    40 ~ 70
    触覚,運動覚
    4 ~ 8
    15 ~ 40
    触覚,圧覚,筋紡錘円神経
    1 ~ 6
    5 ~ 15
    触覚,温覚,冷覚,圧覚
    B
    1 ~ 3
    3 ~ 14
    有髄節前,自律神経
    無髄
    C
    0.2 ~ 0.3
    0.2 ~ 2
    痛覚,温冷覚,節後自律
    ・・・

    Aαが運動神経線維,Aβが触覚神経線維,AδとC線維が痛覚神経線維,B線維は自律神経系の節前線維,Aδはチクチクした痛み,C線維はジーンとした痛みに関わり、触覚神経線維であるAβは,痛覚神経線維であるAδとCの活動性を抑制する機能があるといわれています。さらに細かく末梢神経障害を分類します。

    ・ 単神経障害

    手根管症候群(正中神経の障害)肘部管症候群(尺骨神経の障害)橈骨神経麻痺 など

    ・ 多発単神経障害

    血管炎症のニューロパチーが代表的。糖尿病でも見られます。局所の末梢神経栄養血管の血流障害によるもの。

    ・ ポリニューロパチ

    糖尿病性神経障害、自己免疫性の末梢神経障害など

    ・ ★ 神経根症

    椎間板ヘルニアや頚椎症など。鍼灸院でも多く見られる疾患です。

     

    (2)部位別に見た痺れをきたす疾患

    実際に鍼灸院に問い合わせされる方は「手がしびれている」「足がしびれて痛みがある」などという表現をされる方が多いです。

    ・ 片手がしびれるのか?

    ・ 両足がしびれるのか?

    ・ 手足がしびれるのか?

    でも推測される疾患は違います。どのような状態が考えられるか?まとめていきたいと思います。

     

    <1>片側・手のしびれ(一側上肢)

    ・ 手根管症候群

    ・ 肘部管症候群

    ・ 胸郭出口症候群

    ・ 頚椎症

    ・ 脳梗塞

     

    <2>下肢(足)の痺れ

    ・ 腰椎症 :

    椎間板の膨隆、骨棘の形成など。

    椎間板ヘルニアと同様に神経根圧迫によりおこる。

    ・ 絞扼性神経障害:

    腓骨神経麻痺,外側大腿皮神経障害,

    足根管症候群など

    ・ 腰部脊柱管狭窄症

    ・ 下肢閉塞性動脈硬化症

    ・ 脊髄動脈奇形 ほか

     

    <3>四肢(手足)の痺れ

    ・ 自己免疫性ニューロパチー

    ・ 糖尿病性抹消神経障害

    ・ 血管炎症末梢神経障害

    ・ 傍腫瘍性ニューロパチー(がんなど)ほか

     

    <4>鍼灸治療に関して

    緊急性があるものを除き絞扼障害・神経根障害などは鍼灸院で対応可能です。なかなか改善されない痺れが上記のように筋緊張からくる圧迫の場合鍼灸治療がとても有効になります。必要な場合や緊急性がある場合は病院への受診も勧めます。なかなか改善しないしびれでお悩みの方は是非一度ご相談ください。

    ★ 参考 日本内科学会雑誌103号より